旅行だからといって浮かれてはいけない。
前回学んだこと
最近の犬はパワフルで、ワンダフル。
突然だが、今俺たち4人とロボル1匹は森にいる。
理由は、旅行だ。
アリスターから北西に進んだところに位置する、ドワーフ達の街になったところに向かっている。
こうなった経緯は、エヴリーヌが問題を持ってきたとか、ディアナが提案したとか、そういう訳ではない。
実は先日、俺のナイフの片方が折れたのだ。
というのも、ロボルをパーティに入れてから、クエストがかなり捗るようになり、毎日クエストを2、3個こなしていて、手入れもそれなりにしていたが、ついに折れてしまった。
そこで、鍛治の得意なドワーフのところで、新しい武器を調達しようということになった。
「「私たちも行く!」」
俺は、ロボルと行くつもりだったが、まあ女子2人が見逃してくれなかった。
ナイフを直しても良いのだが、ロボルの親の牙を使って、新たな武器を作ることで、一種の区切りをつけたいと思ったのだ。
異世界に来て数週間、生活には慣れてきたし、友人もできた。
だから、異世界に突然飛ばされることになって、メソメソしていた自分と別れを告げる意味もある。
小鹿亭を出発して、ほぼ1日、ギリギリ野営をせずに着くことができた。
途中、モンスターに襲われたりしたが、相変わらずロボルが上手く対応してくれたし、エヴリーヌとディアナも蜘蛛の一件で、心構えが変わった。
ドワーフとは、背が低く、力持ちなイメージだったが、その通りだった。
ゲームによっては、横暴な感じに描写されることもあるが、この世界のドワーフは皆、温厚で優しい性格のようだ。
そして、ドワーフの街は、街の真ん中を大きな川が通っており、水車が多く見られる。
水車は何に使われているのかというと、酒の生産のためだ。
そう、ドワーフはお酒が大好きなのだ。
アリスターでも見かけたが、ドワーフ達の作った酒はかなり美味しいらしく、ほかのに比べて比較的高値だった。
そして、あちこちから金槌を振る音が聞こえる。
なんでも、魔王戦線に武器を送ってもいるらしい。
俺たちがついたときはもう夜なので、宿が取れるか心配だったが、意外とすんなり取れた。
それから、4人で外食をした。
「疲れたぁ〜」
「確かにな。結構な長旅だったし。」
「フェリクスは体力あるな。」
「リザードマンの集落は、アリスターから南にあって、結構離れてるんだ。野営が、最低1回は必要になるくらいにな。」
「なるほど。歩き慣れてるって訳だ。」
そんな会話をしながら、俺とフェリクスは食事を進める。
ここでは……というか、この世界では、お酒は16才から飲んでいいらしく、エヴリーヌもディアナも、離れたところで美味しくお酒を飲んでいる。
さらに、ドワーフの街では、普通の飲み物として普通にお酒が出てくる。むしろ、水とかを飲んでる人の方が珍しい。
案の定、俺のところにも酒はきた。
しかし、個人的には、未成年飲酒はやっぱりダメだと思っている。
まあ、スリしたことある奴が何を言っているのかという話なのだが……いや、現世と決別するためにも、ここは思い切って飲んでみよう。
しかし!一気はダメだ。急性アルコール中毒で死にたくは無いからな。
出されたビールを飲んでみた。(というか、ビールってこの時代にもあったんだな。)
んー、苦いし、良さが分からない。
俺はまだまだ子供という訳か……
「飲まないのか?」
フェリクスに不意を突かれて少しビックリした。
「あ、あぁ、あんまり、好きじゃなくてね。」
だが、出てくるおつまみは美味しい。
お酒に合うかはまだわからないが、きっと、これが大人の味という物なのだろう。
俺は、コップ一杯でお酒は満足してしまった。
まあ、初めてだからな。これから慣らしていけばいい。
そういえば、母さんが、
「お酒はねー、飲んで吐いてを繰り返さないと強くなれないだよねー。」
とか言ってたな。
まあ、吐くのは嫌なので、少しずつ、機会が有れば飲むようにしてみよう。
しかし、フェリクスは慣れているのか、ワインを飲んでいた。
俺も少し味見させてもらったが、こっちは少し美味しいと感じた。
まあ、肉焼くときとかに使ったことあるからなのかな?
しかし、やっぱり、日本酒や焼酎は無いか。
日本酒が有れば、料理酒として使って、煮物とか作れそうだったんだがな。
しかし、さっきから店の中が騒がしい。というか、少し頭がぼーっとしている気がする。
流石に酔ったか?あの量で?つくづく怖い物だな。あとで水を……
と思ったときだった。
ロボルの鳴き声ではっとした。
なにかと思って見てみれば、ディアナが酔っ払って、暴れている。
暴れているというか、具体的に言えば、服を脱ぎかけている。
本人は、「あつい〜」など言っているようだ。
ついていたエヴリーヌはというと、すっかり眠ってしまっている。
俺たちは慌ててディアナを取り押さえる。
「おい! バカ! 何やってるんだよ! こんな店のど真ん中で!」
「ふぇ? あぁ〜リョウタロウしゃんじゃらいですかぁ〜。一緒に呑みましょうよ〜美味しいですよ〜?」
「もうお酒はいいから! 早く戻って寝るぞ! フェリクス、エヴリーヌを頼む。」
フェリクスにエヴリーヌを担いでもらい、支払いを済ませてもらう。
「いやぁれす〜。もっと呑みたいんれすからぁ〜」
「あぁ! もう! 無駄にいい体してるだけあって、運びづらいな! こら、じっとしてろ!」
「ねぇ〜リョウタロウしゃ〜ん、キスしましょ〜よ〜。ほらぁ〜チューって〜」
「ベタベタするな! 頭引っ叩くぞ! なんなら川に落としてやろうか!?」
そんな酔い潰れた2人を担ぎながら、宿に戻った。
酒は飲んでも、飲まれるな。
この言葉をここまで痛感したのは生まれて初めてだ。
うちの両親でもこうはならんぞ。
そして、酔っ払いの対応がいかに面倒かが分かった。
世の中の警察官は凄いな。敬意を表するよ。
次回、新たな武器
未成年飲酒と一気飲みはダメですよー!




