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ゲーマー4人組  作者: 鬼雨
大和魂は異世界受けする
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安心とリスクは比例する。

明けましておめでとうございます!


前回学んだこと

やっぱり慣れない人助けとかはしないほうがいい。



 

 異世界に来て、1週間も経っていないのに、こんなに目覚めることが嫌なのは何故なんだろう。

 まあ、理由をあげるとすれば……


「リョウタロウさん、朝ですよ」


 扉の前にいる生命体だろうな……

 いや、嬉しいよ?うん。朝、爽やかな美女のエルフが優しく起こしてくれる。

 なんと素晴らしい世界だろうか。

 しかし、理由が、助けてくれたお礼であること、社会勉強のためということなのだ。

 つまりは、言葉は少し悪いかも知れないが、エルフの行商団から、“借りてる”に近いと思っている。

 彼女だって、本心嫌かも知れないし、割と楽しんでるかも知れない。

 そんな分からない状況で、そこに甘えては行けない。

 現世のアニメやら、漫画やら、小説やら、ゲームなんかで、そうやって変な結末を辿った奴をたーくさん見てきた。

 あと、割と陰キャの俺に陽キャはキツい。

 俺は、ひっそりと家でゲームするのが好きなんだ。

 あの整った顔みてると、今にも「お買い物に行きましょう?」とか言ってきそうで……

 あぁ言うのと付き合う(恋愛的な意味ではない)のはバイトとか、仕事上だけがいい。

 あー、4人で大晦日に年越し蕎麦食いながらコタツに入ってガ◯使見てた日々が恋しい。

 厳密に言えば、割と狭い部屋で、4人で身を寄せ合って食ったミカンの味やコタツの温もりが恋しい。

 

 1階で食事を済ませ、フェリクスとクエストに行くために、出発しようとするが、案の定壁が立ち塞がる。


「リョウタロウ、今日は一緒にギルドに行こうではないか!」


「リョウタロウさん、私もご一緒したいです!」


 そう言って厄介者2名が俺の両腕を抱える。

 あと、ディアナさん?サイズ的に当たるから、まあ、エヴリーヌのもそうなんだけどさ。恋人でもない人にそういうのは辞めなさい?はしたないから。


「いいから、1人で行かせてくれよ! てか、なんで付き纏うんだよ!」


 2人の腕を振り解き、聞いてみる。

 

「そりゃあ、一緒にヨームとの戦闘を乗り越えた仲だからな! ほら、友達は多い方がいいだろう?」


「いえ、俺は、少なくても良いので、本当に信頼できる仲間が欲しいです」


「私は、命を救ってくれたリョウタロウさんに、恩返しをしたくて。あ! 私、回復魔法と、風魔法が得意なんですよ!」


 甘い。全体的に考え方が甘すぎる。


「はぁ……いいか?パーティを組むということは、確かにメリットが多い。受けられるクエストの難易度も上がるし、その分報酬も増える。だけどな、それに伴って、“お互いが守らなきゃならない命”も増えるんだ。どこかが崩れれば、そのカバーに行かなきゃならないし、そいつの回復もしなきゃならない。状況によっては撤退しなきゃならないかもしれない。俺は出来るなら、誰かを置いて助かるなんてことはしたくないからな。この世界はな、「私達なら大丈夫」と調子に乗った奴(まあ、厳密に言うとイキった奴)から死んで行くんだ。これは机の上で繰り広げられるゲームじゃないんだよ。本当の命かかってんだ。死んだらやり直しなんて効かないんだよ。少なくとも、俺にはまだお前らの命を預かるだけの力はないし、まだ出会って1週間も経ってない奴に命を預けたくもない。仲間ってのはな、背中預けるものと思ってる奴が大半だが、本当の仲間は命預けられる奴のこと言うんだ。今のお前らには、俺に命を預けられるか? そして、“俺の命預かれるか”?」


 この間、ヨームにぶっ飛ばされて、痛感したことだ。

 この世界はゲームなんかじゃない。小さなミス1つが死につながる。

 少なくとも、フェリクスは、ある程度鍛えられていて、根っこもいい奴なのは昨日一緒にクエストに行って分かったし、引き際を心得ている。

 逃走と撤退の違いを、勇敢と無謀の違いを分かっている。

 俺の長い演説を聞いて、2人は黙り込んでしまった。

 エヴリーヌは、ディアナやフェリクスには内緒にしているが、王女だし、ディアナは、エルフの行商団から出張に近い形で来ている。

 今の俺には、こいつらの命を預かれない。

 まあ、現世の3人がいたら話は別だが、俺1人には限界がある。

 出来るなら殺したくない。


 これはあくまで俺の持論だが、学校に怖い先生っているだろ?普通の生徒は、あんまり好きじゃなくて、近寄らないようにする。その先生が部活の顧問だった場合、その部活の生徒は、怒られないように、大体その先生の前ではしっかりした態度を取る。

 俺は、こういう怖い先生には2種類いると考えていて、片方は、ただ気に入らないことを生徒に八つ当たりすることクソ野郎、そして、考え方が少し常識からズレた奴。

 大事なのはもう片方で、こっちは、“本当に生徒を心配して怒る先生”だ。

 心配しているからこそ、変な人間に育って欲しくないからこそ、厳しく怒る。

 本当の愛のムチってやつだ。

 しかし、生徒の目からは、どちらのタイプも同じに見えることが多い。だって怒られるのは嫌だし、気分が悪いからな。

 だが、俺は、後者の先生には、自分を成長させてくれる何かがあると考えているから、もし、こんな先生がいたら、積極的に仲良くなろうとするし、俺が先生になるとしたら、こういう先生になりたいと思ってる。


 だから、俺がこの2人を突っぱねるのは、ただ厄介と思ってる訳では……いや、2割くらいはあるけど、残りは、下手な考え方持ったままの人であって欲しくないからだ。

 命を簡単に投げ出して欲しくないからだ。

 “残された者がどんな気持ちを抱くか”を知って欲しいからだ。


「2人の言いたいこともわかるし、その気持ちはありがたいけど、今は辞めてくれ」


「……わかった。しばらくは我慢しよう」

 

 分かってくれたか……


「つまり、リョウタロウは、私たちが心配だから、安全なところに居てくれと言うことだな! 優しい奴め!」


 そう言ってエヴリーヌは、俺の横っ腹を肘で突く。

 ……まあ、スゲーぶん殴りたいけど、良しとしておこう。あながち間違いじゃないからな。


「分かりました。ここで帰りを待ってますね(ニコッ」


 いや、その若妻みたいなの辞めて?そういう意味じゃないからな?

 


自分が嫌いな人、自分を嫌っている人にこそ、自分を成長させてくれる何かがあるのかもしれない。

もちろん、単なるバカや、クソ野郎の時もあるけどな。





次回、でっかいわんこ


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