あるお父さんのお話
次は私ですね……。
えぇ…あの時の恐怖は今でも忘れられません……。
私には二人の娘がいるんですよ……。
親バカと思うかもしれませんが、どちらもできが良くて自慢の娘でした。
下の娘が受験の時でした。
次女は高二の時文系から理系へ志望学科を変えていたのですが、見事高偏差値で有名な名門私大に現役合格したんですよ。
もともと次女の学校は進学校で厳しい授業で知られていて、いつも次女はヘロヘロで窶れていましたから、親類も大層心配してくれていたので、みんな大喜びでした。
もう学校では授業はなかったので、自宅待機か図書館で過ごすのが娘の日課となってました。
私はその頃、職場で大事故があり、大忙しだったんです……。
いえ、言い訳ですね、コレは……。
えぇ、合格発表から1ヶ月後……入学料を振り込みに銀行へ行って書類を確認したら、振り込み期限が一週間過ぎていた事が判明しました……。
次女は滑り止めも合格していましたが、入学手続きは間に合わず浪人が決定しました。
妻と長女からは責められ、次女に泣かれました……。なにせ金銭的なモノ── 通帳関係は私が管理していたので、私が振り込むと家族には言っていましたから。
次女はその後他県の予備校に行き、次の年に志望校に合格するまで事務的な会話以外しませんでした……。
15年以上経った今でも、親類の間ではその事が語り継がれています。
次女はその後大学を無事卒業し、就職先でコツコツと出世して役職に就き、今では笑い事にしてくれてますが、思い出すだけでも泣けてきます。