ある元ヘルパーのお話
次は私の番ですね。
私は二人目を産む前までは老人ホームでヘルパーをしていたんです。
新人の頃は大変でした。覚える事はいっぱいでしたし、患者さんも気難しい人や気性の激しい人とかいて、毎日泣きそうになったり怒ったりしていました。
一年経ったある日の事 ── カルテの指示に従って点滴をホームのお年寄り達に打っていたんですよ……そしたら先輩が凄い勢いで駆け込んで来て待ったがかかったんです。
……どうやら薬の量が間違えて記載されていたんですね……。
たまたま先輩が別の患者で同じ薬を使った事が最近あって、それでミスに気づいたらしいんですよ。
慌ててそのおじいさんから針を外したんですが、確認したらおじいさんが息をしていない……。
一気に青くなりましたよ。私の呼吸も止まるかと思いましたよ……。
先生呼んだり心肺蘇生法を施そうとしたりと、とにかく必死でした。
そのおじいさん ── 最近寝てばかりだったのですが ── 、寝ていると時々無呼吸になる事がカルテで判明し、特に異常はないという事が診察で解り、控え室でへたり込みました。
申し送りしていたんですが、タイミングがタイミングだったので私がトドメを刺したのかとパニックになっちゃったんですよ………。
医療関係だと特に「間違えた。ごめん」ではすみませんからね。
先輩には本当に感謝してもしきれません。
自身もスキルを上げて役立てようと心に決めた出来事でした。