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ただのわたし

作者: mana

日々の育児に追われ、目の前の生活をこなすことにいっぱいいっぱいな専業主婦のサオリ。

そんな中、偶然に入れた保育園。

久しぶりに自分だけの時間ができたサオリは近所の河原へ行くことに。

4月3日。


新年度が始まり3日目になった。



サオリは下の子を保育園の慣らし保育に預け、コンビニでアイスコーヒーを買い、

一人で近所の河原で時間を潰すことにした。



朝の河原は空気が澄んでいて、まだひんやりとした冷たさも残っている。


サオリはママチャリを河原沿いの道に停めると、コンクリートの土手を下り、川の近くの芝生に腰を下ろした。



サオリは二児の母で専業主婦だ。

普段は小学生二年生になる長女と、一歳半の次女の育児であっという間に一日が過ぎる。


平日仕事の帰りが遅い夫はほぼ深夜に帰ってくるので、平日は俗に言うワンオペ育児状態だ。


この度ダメ元で申し込んだ保育園に空きが出て、運良く下の子が入園できることになった。



次女を出産してから、サオリは授乳と夜泣きによる慢性的な寝不足と育児疲れで身も心もヘトヘトになっていた。


たまる洗い物と洗濯物、

まわらない家事、

まだ目を通していない長女の学校のプリントも溜まっていく。



この一年、ひたすらに目の前のことにいっぱいいっぱいだった毎日。


もう疲れた。ゆっくりしたい。


何度そう思ったのだろう。





そして今。



河原でぼーっとしている時間。


だんだんと日が高くなってきた。


頬に感じる日差しがじわじわと暑くなってくる。


水辺にはすいすい優雅に泳ぐカモ。



こんなにゆったりした時間はいつぶりだろう。




氷が溶けて味の薄くなったアイスコーヒーを飲みながら、ただただ川の流れを見つめる。



穏やかな風、


草のにおい、


鳥の鳴き声、


魚の跳ねる音。




昔は当たり前にあった感覚が戻ってきた。



ゆっくりとした時間の中、


ぼーっとしながらサオリは思った。





今は、ただのわたし。



妻でも母でもない、



ただのわたし。



本来のわたしは、



何の制限もなく自由。





このゆったりとしたリズムにいる時、


心地よさを感じる時、


普段の私は、ただのわたしだったことを思い出す。






河原に来てから一時間が経っていた。



まだ一時間だというのに、サオリは目の前の世界がさっきよりも明るく感じていた。



そろそろ保育園のお迎えだ。


サオリはママチャリをのスタンドを下ろし、サドルに乗ると、土手を背にして颯爽と坂道を下っていった。





普段育児に追われるママがゆったり自分に戻る時間が少しでも増えればと思い、書きました。

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