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本と魔法と恋心(ラビリンス)  作者: 暁紫
嵐の前の序曲(オーヴァチュア)
1/15

【プロローグ(1)】

魔法使いの世界 《アリシア》。

アリシアは主に50億人の魔法使いで作られる世界である。

ここでは魔法使い達が「魔法」を駆使し生活をしている。魔法使いの寿命は長く、200歳でその生涯を終える人間とはまた別の生き物だ。「魔法」というのはある一つの総称で、詳しく分けると「魔術」「魔導」の二つに分けられる。


魔術と呼ばれるものは詠唱と|MP

(マジック・ポイント)

を必要とし、基本的に扱われる技である。それに対し、魔導は魔具

まぐ

と呼ばれる道具を必要とする代わりに詠唱とMPの消費を必要としない簡易版の魔術でありながら場合、もしくは魔具の質によっては魔術を軽く超える性能を持つものもある。更に魔術には幾つか種類があり、主にコレクト、ミディアム、マッドネスに分けられる。コレクトとミディアムの境界線はあやふやではあるが、基本的にはコレクトが人の為に使える魔術、ミディアムが空中浮遊などの基礎となる魔術や、攻撃に関する魔術。マッドネスは呪い、虐待魔術などの魔術として区別される。


…とはいえ、別に魔術使いと魔導使いがハッキリと分かれているわけでもなく、当然、魔術と魔導の両方を使う者が多い。


この国では魔法使いの学校が幾つかあり、10歳になるとその学校に通い、魔法使い達はそこで魔法を習う。どれもが9学年制である。魔法使いの学校はこの国に5つあり、一つが「アリア」と呼ばれ、魔法の基礎を習う場として有名である。他の魔法学校に行くにはまずここに6年通らなければならないだろう。そして二つ目が「ダーク」という学校で、見た目はもはや城と形容するのが正しく、マッドネス魔術を学ぶことができる。三つ目が「ホーリー」で、コレクト魔術を学べる。後の二つは名も薄いために、あまり目立たないが、数少ない貴重な魔法学校とされる。


そして魔法学校でしっかりと勉学を終えた魔法使い達は職に就く。職の種類は主に人間と変わらないが、どれも基本的には魔法を使うことになる。


…が、この国には階級があり、職に就くと「魔法使い」という階級で止まってしまう為、あえて職に就かず上の階級を目指す者も少なからずいる。


階級は1番上から魔術神王、魔術神、魔法操師、魔法使い、そして人間となる。人間は魔法使いにはなれないが、魔法使いは魔法操師になることができる。魔術神王は魔術神の中で最も優れているものから選ばれ、魔術神王になった者は国を管理し、また国の法律

ルール

も魔術神王が決めることが出来るという権利が貰える。魔術神は5千人程度で選ばれ、中から魔術神王の補佐や、法律違反をした人間を除く魔法操師以下の存在を罰する権利を持つ存在である。そして魔法操師は魔法学校の教師の総称であり、逆に魔法使いから魔法学校の教師になった時点で自動的に階級は上がる。また教師だけが魔法操師になる方法ではなく、魔法の腕が通常の桁を超えた時に魔術神から魔法操師直々に任命され、そこからならば教師になろうと更に上の階級を目指そうと自由になる為、教師の仕事をしながら上の階級を目指す魔法教師よりは選択の数が多い。


また、この国は人間の住む世界とは違う世界にあるということはこの国の魔法使い達にとって常識であり、また人間世界に魔法使いが干渉することは重い法律違反となり魔術神に罰される可能性が大きい。しかし人間世界を覗き込める魔具を使い人間を見ることに関しては特にルールは決まっていない。


そして何より、魔法使い達が人間世界に悪事を働くかもしれない。そんな時は魔術神王の許可で人間世界への干渉が特別に許された第四魔法使いの座と呼ばれる魔法使い、魔法操師、魔術神の3つの階級から選ばれる4人が人間世界へ降り人間世界に干渉した魔法使いに罪の判決をした後、罰を下す。


「…うーん…まぁ、難しいけど、わかったよ。」


そして、この少女こそがその第四魔法使いの座を目指すことになるこの話の主人公である。空が夕日で真っ赤に染まりカラスの鳴き声がよく聞こえるような夕方、分厚い本を両手で持つ銀髪女性は同じく銀髪少女にその分厚い本を読み聞かせる体勢で座っている。言葉で理解を示す少女に、女性は言葉を返す。


「ラフィ、適当に聞いてちゃダメよ。貴女はこれから魔法学校に入学するのよ?…私、心配で心配で…」


「大丈夫だよママ、私、ちゃんと出来るから!」


ラフィにそう言われたママと呼ばれた女性は困った顔をし、しばらくすると本をパタン、と閉じる。


「そうね、私のラフィなら大丈夫よね!じゃあ今日のお勉強はここまで!おやつにしましょう?」


そういうとラフィの母であろう女性は何かを一瞬呟く。すると手に持っていた本が彼女達のいる部屋の隣にある本棚の空いた部分にすっぽりとはまる。


「さて、今日のおやつは…リンゴよ!」


「わーい!」


喜ぶラフィを横目に母は台所へ行く。ラフィはワクワクした様子を見せながら椅子を用意し机に座る。


「リンゴっ、リンゴっ」


カラスの鳴き声はラフィの喜悦で掻き消される。しばらくすると母は綺麗に向いたリンゴをお皿に乗せて持ってくる。ラフィはそれに疑問を覚えたのか、母に質問をする。


「魔法を使ってリンゴを剥かないの?」


それに母は優しく微笑み、リンゴを乗せたお皿を机に置くと答える。


「魔法は便利なものだけど、人の温かみは魔法じゃわからないのよ…」


女性はわからない、理解しきれなかったという表情で母の瞳を見つめる。


「ラフィ、貴女もいつかわかるわ、貴女にも大切な仲間達ができて、結婚して…それから…それから…」


そう語りだそうとする母にラフィは目の前のリンゴへの空腹に耐えきれなくなったのか、早く座って、というジェスチャーを送る。


「あぁ、ごめんね、いただきます。」


「いただきまーす!」


リンゴは数も少なく、しばらくするとお皿の底の模様が完全に見える。


「どう?ラフィ、美味しかった?」


「とっても美味しかった!」


それは良かった、と再び優しく微笑む母にラフィは抱きつくと「えへへ」と笑う。


「これが、人の温かさなんだよ?」


そう落ち着いた声音で言う母にラフィは大きく頷くと、正座で座る母の足に顔をうずめる。ラフィは既に10歳で、丁度明日入学なのだ。基本的に魔法学校の入学式は親も来ることが出来ず、また魔法学校では6年の間学校で暮らすという制度の為、1年に3度の長期休みを除けば親と会う機会はこれで最後なのだ。


「…ママ、私ホントにちゃんとやれるかなぁ?」


「何言ってるの、貴女だって既にほうきの魔具を使えば空も飛べるじゃないの」


「魔具使えば誰だって魔法が使えるって言ってたじゃん!」


母は「はあ…」とため息をつきながら、しばらく頭を抱える。しばらくすると間違いを正す。


「誰だって、とは言ってないわよ…ラフィ、いい?魔具っていうのは魔力、いわゆるMPで作られたものなの。ほうきにはあまり魔力は使われてはいないけど、魔力が強いものだと、使用に失敗すると、最悪死に至るほどの危険性だってあるのよ?」


「…でも、ほうきは大丈夫なんでしょ?」


「ほうきで空を飛ぶのって、バランス取るの大人でも中々難しいわよ…」


実際にラフィも魔術は使える。だがそれもオモチャの車に手を触れず少し動かず程度だ。


「…それで、ラフィは学科はどうするの?」


「え?あー…学科?ってなんだっけ?」


首を傾げるラフィに説明を始める。


「えーと…魔法は主に大きくわけで魔術と魔導で分かれる、そして学校では魔術と魔導を教わるわけだけど、メインとして教わる方を選択できる…というか、しなきゃダメね。」


「へぇー…じゃあ私はほうきの魔具を使えるし魔導?」


「…まぁ、悩んで決めなさい、私は夕食の準備、してくるわね…」


母は疲れ切った顔をしているが、恐らくそれは仕事の疲れだろう。ラフィもラフィの母の階級は魔法使いだ。しかし魔法使いが1番職業の選択が多い為、魔法使いの道を生きた者は他の階級の者よりは職にもよるが疲れも大きいのかもしれない。ラフィはそれにも気付かずにまた質問をする。


「ねぇ、人間って、どんな生き物なの?なんで干渉しちゃダメなの?」


「…」


母は答えない。理由がわからない、或いは言えないのかもしれない。


「ママ…?」


少女の疑問は闇へと消えた。


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