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性悪(元)姫と腹黒側近と、微笑み毒を吐く女官

「あー‼ ようやくあのうざってぇなげぇ髪の毛とおもっくるしいドレスともおさらばってことで、酒でも飲むか~‼ 」


 エレメンティアはう~んと腕を伸ばし、首の後ろに回す。

 フーンフーンフフーンっと、鼻唄を歌いながら先を歩く、元王子妃であり王太子(一応女)になったエレメンティアに、後ろから低い声が響く。


「……私に恥をかかせたかったんですか? 王女殿下」

「オレは王女殿下じゃねぇよ。王太子。それに、カイル史官を貶めたり、辱しめを遭わせる為にオレがやったと思う? オレはこれでも史官の元嫁のフィーラと仲良かったし、史官のことも信用してたし、仲良かったじゃん。やったのはあのバカだよ。しかも、親友だと思ってた……」


 エレメンティアは振り返ると、にやっと笑う。


「まぁ、フィーラはオレの友人ってことで周囲に自慢して、良い思いしてたみたいだけどな。父親の大臣も裏金貰ってたんだろ? それをサラに贈ってた。そこまでは突き止めてた。でも、白昼堂々とアレはなぁ? 他の大臣や遠方からのわざわざ来ている辺境伯へんきょうはくとかほっといて、だぜ? オレは、小さい頃からこれでもサラと一緒に帝王学も学んでいたんだ。それに、城の中でも情報は探れるさ。時々男装してお忍びで町も出歩いてりゃな」

「情報と言うのは? 」

「情報は情報だ。オレが手玉として持っておいて、その時までは隠しておくのさ。欲しいなら金だしな」

「金って、王女でしょうが⁉ 」

「ボケか? お前。情報を貰う代わりに払う手間賃にするのと、オレが面倒見てる孤児院の子供たちの服とか、仕事を覚えさせる為に使うんだよ。本当は、あのゴテゴテのドレスなんか作るより、そっちに金を回したいぜ。この国の未来を考えたらな‼ 」


 ハッ! と吐き捨てる。


「父上ものうのうとしているが、このままじゃこの国は成り立たない‼ アホのサラはあの大国の『シェールド』を遠方にある上に、女好きと噂に上ってる国王陛下を侮り、その上同じように遊ぼうと思っている」


 くるっと振り返る。

 エレメンティアは真剣な眼差しで告げる。


「オレは、2回噂の国王に会ってる。一回は公で、一回はお忍びで……。あの国王はサラのように愚かじゃない。愚かな振りをしている。それに、シェールドの王だからあの程度で、もし、この国の王なら一気に国を作り替えるだけの手腕をお持ちだ。それは恐ろしいほど……強い‼ 強引な手段も厭わないだろうよ。それにな? シェールドの次の大国ルーズリアは、リスティル国王陛下があのカリスマ性と統治能力を発揮している。揺らぐことはない。ルーズリアと婚姻関係のある国も、前はざわついていたが、リスティル国王陛下の采配などでそれぞれの国も落ち着いている。この国はどうだ? 町は活気もない。貧富の差が激しく、税の徴収が他国より厳しいのが現状だ。もっと何とかしたい。そう思っても、『妃が口を挟むな』『これで良いのです』どこがだ‼ 」


 悔しげに拳を握る。


「妃なんて望んでなかった‼ オレは一応王女として、国を守りたい、そしてもっと富を貧しい人や孤児達に仕事や勉強を教えることで、将来的に国を栄えさせたいと思っているんだ‼ それなのに……女だ、王女だと……」


 カイルは怒り狂うと言うよりも泣き出しそうなエレメンティアを見つめ、


「ま、そこまでの覚悟があるなら、頑張ってください」


と告げる。


「はぁ? お前‼ オレが宣言してるのに⁉ 」

「え? 私は応援に回りますよ。えぇ」

「ちょっと待て‼ 父上にオレの側近ってことになったじゃねぇか? 側近が手伝うとかねぇのか‼ 」

「手伝ってほしいんですか? いえ、私はこれから引っ越しの準備があるんですよ」


 カイルは申し訳なさそうに告げる。


「あちらの家からでて、こちらに移るので……」

「あ、そうだったか。んじゃぁ、大変だろうが頑張れ。その後で……」

「それも難しいですね……」


 ひょうひょうとした青年の一言にエレメンティアは、怒鳴り付ける。


「あぁ、解ったよ‼ もうお前には頼まない‼ じゃぁな‼ ミィ。行こう」

「あ、はい。エレメンティアさま~? 髪の毛かつらを作っておきましょうか? それとも着け毛? 」

「オレのお忍びで使うからそれ相応に頼む‼ 」

「解りましたわ~‼ エレメンティアさまのために、私達は力を尽くしますので大丈夫ですぅ~‼ この寝とられ男よりも役に立ちますわ~‼ 」


 ニコニコと微笑みながら、物凄い一言を投げつけたミィ。


「……あの? ミィ殿でしたか? 」

「ミィで結構ですわ。好意も何もない相手からの言葉と言うのはゴミ以下ですもの」


 ウフフフ……

 と笑う瞳は冷たい。


「まぁ、そうですね。私のこともカイルと」

「あらぁ、寝とられ男じゃありませんでしたの? 」

「それは即刻、抹殺しましょう。お願いしますね? 」

「まぁ、では裏切られ夫では如何でしょう? それとも……」

「ハハハ……」


 頬がひくひくしているカイルと、おもちゃを見つけて嬉しそうなミィを見てため息をつく。


「ミィ。遊ぶのは後にして。あのバカの部屋を綺麗さっぱり無くして、代わりにカイルの部屋にするから。間の部屋にはミィ。皆によろしくね」

「解りましたわ~‼ エレメンティアさま。この男に何かされましたら、私におっしゃってくださいませね? ……エレメンティアさまに何かをしたら、私達がおりますからね~? よろしくて? 」


 遠ざかる高笑いにも似た、オーホホホと言う笑い声を聞き、エレメンティアは一応、


「ミィには悪気ないから。アレでストレス解消してるみたいだから遊んでやってよ」

「アレが悪気がないんですか‼ 」

「ほんとに悪気ないよ。悪意があったらもっと言ってる。それにそっちだって、そんなにさっきみたいに顔を青ざめたり赤くしたりしてないじゃん? 傷ついてないってことを認めてないんでしょ? 」


 カイルははて? と言いたげに首を傾げ、


「そういえばそうですね。婿養子と言っても、私は身分の低い家柄の人間で、入った先でもねちねち言われて、妻だった女性も自分の身分をひけらかし、うんざりしてました。そう言えばスッキリしましたね」

「それは良かったじゃねぇか。と言うことで、さーて、あぁ、あいつのベッドな。運び出してる。新しいベッドは客間から運ぶようにするから、しばらくオレの部屋に来れば良い。ミィもくるし」


 促し、奥にある自室の一つ、自分用の居間に案内する。

 女性の部屋にと思ったものの、入って唖然とする。

 部屋は書斎か執務室のようになっていて、その隅に小さいソファーセットが置かれていた。


「そっちに座ってくれ。オレは裁断をすることがある」


 席を勧め、自分は机に座り、積み上がった書類に目を通し始めたのだった。

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