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始まりの始まりはダブル不倫‼

ふっと、思い付いた作品です。

よろしくお願いいたしますm(__)m

「殿下……どちらですか?殿下?」


 又かよ。このバカ王子が……。

 オレは心の中で罵る。

 あ、オレはこの国レーンの王子の妃でエレメンティア。

 王子ってのはサラって女みたいな名前ではあるんだけど、本気で幼馴染みで従姉弟とはいえ一番結婚したくなかった相手。

 でも、だらしない従弟を王太子として矯正してくれと父や叔父に泣きつかれ、妃になったのだが……。


「こっのおー‼ 執務が滞っているって言うのに、一体どこにいきやがった‼ あのアホッタレ‼ 」


と、扇の下で悪態をつきつつ回廊を回ると、女官や衛兵の数人が、ざわざわとしているのが見えた。

 回廊の茂みから奥の庭の休憩スペースをチラチラと覗いている。


「どうしましたか? 」


 オレはお妃ぶりっこの笑顔で問いかけると、一斉にビクッと硬直する。


「どうしましたか? 殿下がいらっしゃるのですか? 」

「あ、あの、お妃さま‼ 」

「殿下がいらっしゃるのなら……」

「ちょ、お待ち下さいませ‼ 」


 止めようとするけれど、


「待っていられないわ‼ 緊急の仕事があるのよ。殿下? 」


 かき分け、硬直する。


「なっ!」


 声をあげるのは、バカ王子。


「キャッ!」


と悲鳴は……オレの親友だった女官のフィーラ。

 ちなみに服は乱れて、お盛ん中。


「……あら? 大切な重鎮達が集まって待っているのですよ? 殿下。国のことについて話す重要な会議よりも、わたくしの友人とお遊びですか……? 王子」


 ニッコリと微笑む。

 ついでに持っていた扇を両手でぶち折った‼


「あぁ、そうですのね。国よりも大切なのですね。では、そのまま後継者作りにお励み下さいな。私は会議に参ります。失礼。皆? もう結構ですよ? サラのご乱行を隠さなくても、私にはとうの昔に解っておりましたもの。逆に本当だったと思っているだけ。気にせず仕事をして頂戴ね? 本当に手を煩わせてご免なさいね」


 一応労うように女官達に微笑むと、ぽいっと扇を投げつけ歩き出したオレに、最も忠心を捧げてくれる女官のミィが近づく。


「妃さま~」

「はい、これ……」


 指輪を引き抜きミィの手に乗せると、次は髪飾りをはずしつつ渡していく。


「妃さま~‼ 」

「あぁ鬱陶しいわ。切っちゃいましょう」


 歩きつつ長く伸ばしていた髪を、ナイフで切り落とし、ドレスも切り裂く。


「姫様~‼ 」

「女は王になれないからって、あいつと結婚するはめになり、これかよ‼ もうオレは女やめる‼ 妃なんてうんざりだ‼ オレが王になる‼ 」


と宣言したのだった。




 そしてこちらは、会議の議場である。

 妃の父である国王と、次期国王になる王子の父である王弟は、穏やかに鷹揚に席につきつつ内心は汗をかいていた。

 次期国王のサラはご乱行を繰り返し、エレメンティアには必死に隠している……エレメンティアは気づいているのだが……のである。


「それにしても、王子のお姿が見えませんな? 」


 大臣の一人が声をあげる。


「お妃さまが探されに行かれましたが、如何されたのだろう」

「そうですな……」


 ざわめくと、急に扉がドーンと開かれ、バサバサの髪と切り刻んだドレス姿のエレメンティアが姿を見せる。


「エレメンティア‼ 」

「王子妃さま‼ どうされました? 」


ざわめくのを無視し、扉を守る衛兵に、


「悪いけれど、次に来た人間は誰もいれないで頂戴? 絶対に‼ 」


と言い聞かせ、扉を閉ざした。


「失礼いたしますわ。陛下、皆様」

「エレメンティア‼ その姿は‼ 髪は⁉ 」


 エレメンティアは父と叔父を見て首を傾げ、悲しげに微笑む。


「実は……先程からサラを探しておりましたら、女官のフィーラと奥の庭で子作りされてましたの……フィーラと言うとオディズ大臣の娘で、カイル史官の奥方でしたわよね……? 」


 チラッと二人を見ると、真っ青を通り越して蒼白になっていた。


「お二人は本当に陛下に忠誠を誓って下さって、私もフィーラと仲良くさせて頂いていたのに……本当にこんな風にお伝えすることになるなんて……それに私は、サラやフィーラに……」


 顔をおおう。


「エレメンティアさま~‼ お可哀想に……」


 ミィは持っていたエレメンティアの装飾をばらまくと、エレメンティアを抱き締め国王を訴える。


「陛下‼ エレメンティアさまは泣くのをこらえながら、こちらまで‼ それに、髪もご自分で‼ 」

「じ、自分で⁉ 」

「さようでございます‼ それほどショックだったのですわ‼ あれほど、あれほど、エレメンティアさまは反対されていらっしゃった。でも、陛下と王弟殿下は聞く耳を持たず、お話を進めてしまわれた。この結果ですわ‼ エレメンティアさまがこんなにも傷つかれてしまうなんて‼ 」

「も、申し訳ございません‼ 私の娘が‼ 娘が‼ 」


 大臣が頭を擦り付けるようにして謝罪する。

 その婿であるカイルは真っ赤な顔で、両手の拳を握りしめている。


「もう嫌です‼ お父様‼ 何で、何でこんな辱しめを? 酷いです‼ 私のことが憎いのですか? 私はあれだけ……‼ 」


 オレはレディ教育によって身に着けた涙を流しながら、父親に訴える。


「憎いのなら、他の国に嫁がせても良いではありませんか……何故です? それにカイル史官だって、何も悪くはありませんのに‼ 」

「エレメンティア‼ 」

「もう嫌ですわ‼ お父様と叔父様、そして大臣や皆様にお伺いいたします‼ お父様がお隠しになられていても殿下は……サラは何度も放蕩の限りをつくし、浮気をしておりました‼ 私は知っておりました‼ 見て見ぬふりをしていろと言われているようで、本当につろうございましたわ。それなのに今日は……フィーラのことを私は親友だと思っておりましたのに‼ 」

「す、済まなかった‼ 可愛い私のエレメンティア。そなたをそんなにも傷つけていたとは‼ どうすれば良い? そなたの泣く姿は、本当に辛いのだ‼ 」


 焦りぎみに国王は問いかける。


「サラとの離婚を‼ そして、サラはフィーラと結婚したいのでしょうから、再婚を認めて差し上げて下さいませ‼ 」

「そ、そなたはどうするのだ‼ サラはこの城に……」

「嫌ですわ、お父様。お忘れですの? 」


 あらっと言いたげに涙で濡れた瞳を丸くする。


「カイル史官は婿養子。フィーラは大臣の一人娘ですもの。婚姻を解消されると言うことは、婿養子が必要ですもの。サラは大臣のお屋敷の婿になれば良いではありませんか‼ 本人が望んでいるのです。望み通りして差し上げてはいかがですか? 」

「私の次はどうするのだ? エレメンティア‼ 」

「私がなりますわ。無能の王より女王の方がいいと思いませんか? お父様? 」

「何をいっておる‼ 女王など、この国には聞いたことが……」


 その言葉に、つかつかと近づき言い切る。


「じゃぁ、オレは男になる‼ ドレスも何も要らない‼ オレは王女じゃなく王子として生きる‼ それなら良いだろう? 覚悟として……」


 裂いたドレスの布に包んでいた髪の毛を、父と叔父に投げつける。


「これで良いだろう? これでもオレは剣も馬術も修めているし、帝王学もだ‼ あのサラに負けるものか‼ これ以上恥をかけと言うのなら……」


 髪を切ったナイフを見せ、自分の喉に突き付ける。


「国王の一人娘が、浮気をする王弟の息子で夫の王子の行為に悲しみ、自害したと……周囲に流れるのを望みますか? お父様? ……おっと、オレに近づくなら、先に突くぜ? 」

「エレメンティア‼ やめよ‼ やめてくれぇぇ‼ 解った‼ お前を、次の王位に就ける‼ 」

「兄上? それでは約束が‼ 」


 王弟の形相が変わる。

 兄に一人娘しかいない。

 自分か、もしくは息子が王位にと野心があったのだ。


「うるさい‼ お前の息子が悪いのだ‼ エレメンティアは私の子‼ 王でも女王でも構わん‼ サラには王位継承権はけして与えん‼ 与えるものか‼ いいか‼ 皆の者‼ 次の王はエレメンティアだ‼ サラではない‼ 」

「と言うことだ」


 にやっと、エレメンティアは笑うと、ミィを見る。


「はい、衛兵の皆様~? 扉を開けて下さいませ。元王太子さまの素敵なお姿をお見せ下さいませ~‼ 」


 扉が開き、服が乱れた元王太子とその愛人を押し出す。


「お、伯父……陛下‼ 何故‼ 」

「何故もくそもあるか‼ お前が一番悪いのだ‼ その娘が良いのなら、すぐにこの王宮から去り、結婚するが良いわ‼ 」

「カ、カイル‼ 」


 唇の紅もとれて、髪も乱れている妻を見て、カイルは冷たい眼差しで、


「何でしょう? オディズ大臣のご令嬢……? 御結婚おめでとうございます。では、オディズ大臣……私は荷物をまとめるつもりですので、今までありがとうございました。陛下……申し訳ございません。これ以上辱しめは……」

「あぁ、カイルよ‼ そなた程の逸材を失うのは惜しい‼ ……そうじゃ‼ このエレメンティアの側近として王宮に残ってくれぬか? 大丈夫だ‼ すぐにそなたの部屋を整えさせる」

「ですが……」

「頼む‼ 私の頼み聞いて貰えぬか? 」


 国王の直々の言葉に、カイルは頭を下げる。


「……ありがたきお言葉でございます」

「では……」

「じゃぁ、カイル史官。来いよ。すぐに部屋を整えさせる。オレの側近ならそれなりの格好を頼む。と言う訳で失礼」


 ちょいちょいっと長身のカイルを呼び、歩き出したエレメンティアは元夫と元親友に微笑み、


「御結婚おめでとう。王太子として式にはお伺いさせて頂く。日付が決まったら教えてくれ、じゃぁな」

「……失礼します」

「あぁ、姫様の髪の毛を、集めておかなくては‼ 誰かお願いね~‼ 」


と言いつつ、エレメンティアとカイル、ミィは去っていったのだった。

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