表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

あなたに逢いたい

作者: 辻 和美

「25日、またこの場所で逢おうな…」

その言葉だけを信じて私は待っている…


私は優菜…中二。

友達はいない。

どうしてかっていうと私は見た目が派手だから。クラスでは浮いた存在になっている。

髪は茶色、ピアスに化粧…

みんなあまり関わりたくないらしい。

それでいいんだ…それで。

友達なんていらない…

家族なんていらない…

信じられるのは自分だけ。

こんな私でも去年までは普通の女の子してた。

友達もいた。

でもその友達…華はとんでもないヤツだった。

確かあの日はそう…

華に連れられて買い物に出かけて…

華にアクセサリーを鞄に入れられて私は万引き犯にさせられた。

私が華が好きだった友樹と付き合い始めたのが気に入らなかったらしい。

私じゃないって何度も先生や両親や友達にも話したけど…

誰も信じてくれなかった。

その日から決めたんだ…

私は誰もいらないって。

あれだけ仲良くしてたって…

14年も一緒に過ごした家族だって…

私を好きだって言ってくれた友樹だって…

結局誰一人、私を信じてくれなかった。

口先だけの友達なんて

家族なんて

彼氏なんているもんか。それから私はどんどん派手になっていった。

前は「優菜が万引きするなんて信じられないね」なんていった子もいたけど今じゃ

「やっぱり優菜はそういう子だったんだ」ってみんなに思われてるようだ。

外見変えただけで私は何にも変わってないんだけど…。

まあそんな感じで退屈な日々を過ごしていた。


12月になるとみんな一斉にクリスマスムード一色になり、ますます私には遠い世界になってきた。

だって…誰も信じられない私がサンタなんて信じられるわけないじゃん。

クリスマスなんてなくなればいい…そう思った。

それからしばらくたったある日私は夢をみた。

とても暖かくて…心地よい夢。

私の隣には知らない男がいて…

泣いてる私をずっと抱きしめてくれている。

私が何故泣いているのかとか、その男が誰なのかとかはよく覚えていないけど、抱きしめられた感触はしばらく残っていた。

その男は一言だけ呟いた。「25日、この場所で待ってるから」

それだけ言い終わると同時に私は夢から覚めた。

そう…これは夢の話。

こんなこと現実にあるわけない。

何を馬鹿なことをっていつもの私なら思うんだけど、夢の中の男はほんとにいるんじゃないか…なんて思った。

自分でも馬鹿だなって思う。

友達も彼氏も信じられなくてましてや家族も信じられない私が夢の話を信じようとしてるなんて。

でも彼の胸の中は本当に温かかった。

安心できた。

できれば彼が実在してほしい…そういう願望があるからかもしれない。


私が私でいれる場所…彼の傍は私の居場所があった。

ほんとにただの夢の話。

私は自分に言い聞かせる。

だからそんなこと現実に起こるはずがない。

そう…そうなんだけど…現実には1%もないかもしれない。

だけど私は信じてみたかった。

誰も信じられなかった私に信じてみたい人が現れた。

だから私はこの場所で待っている。

朝からずっと…ずっとずっと。

頭の中では来るはずないってわかってる…

でも体は待ちたがってる。

あの温かい胸の中に包まれたいって思ってる。

名前も何もわからない彼。

もう一度逢いたい…私は何時まででも待つつもりでいた。

う〜寒い。

昼頃から急に天気が悪くなって来て雪がふり出してきた。

みんな急ぎ足でいくべき場所へ向かっていく。

私にはいく所なんてない。

待ってる人なんていない…

私がどうなっても誰も心配なんてしない。


私は彼にもし会えたらサンタを信じてみようってポケットに小さなツリーを入れて来ていた。

ずっと信じていたサンタ…ポケットからそのツリーを取り出してみた。

やっぱりサンタなんていないんだ…

わかっていたことなんだけど。


雪の舞う公園で私はたった一人…


私を待ってる人もいなければ私が待つ人も現れない…

気がつくと私は泣いていた…

おかしいな…一人でいることなんてもう慣れっこなのに…

涙がとまらない…馬鹿だな…もう帰ろう…

私は持っていたツリーを公園に埋めた。


するとツリーはどんどん大きな木になってゆく。

私が今までみたことないくらい大きなツリー。

私はただただ驚いてそのツリーを眺めていた。

そしてツリーは光り出した…

すると…バタバタバタと誰かが走ってくる音がする…

「あった…ホントにあったツリー…」

私が後ろを振り向くと…彼がたっていた。

私がずっと待っていた人…

まさかほんとにいるなんて…

私は涙が溢れて止まらない…

彼は私を抱きしめた

「ごめんな…こんな寒いのにずっと待っていたのか?」

こくん…私は頷く。

「俺…夢だから誰も待ってるはずないって思って来なかったんだ。でもこの大きなツリーを見つけて…夢と同じだったからもしかしたらって急いできたんだ。」

「そうだったね…夢の中で大きなツリーの下であなたと逢ったんだよね…まさかほんとになるなんて…信じられない。」

私達はぎゅっと抱きしめあった。

互いに相手が消えていきそうな気がして。

力いっぱい抱きしめた。

名前も何も知らない二人だけど…

誰よりお互いを解っている気がした。

「ねえ?これは夢じゃないよね?」

「あぁ、夢じゃない…夢はここで終わっていただろ?」

と彼は私にキスをした…

私は幸せでいっぱいだった…

「やっぱりサンタはいたのかな?」

「サンタが俺達を結び付けてくれたのかも…」

私にも大切な人が見つかった…この愛を大切に育んでいきたい…


HAPPY MERRY CHRISTMAS

あなたにも愛が届きますように… ー END ー


読んでいただいてありがとうございました

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] こんにちは。 作品拝見いたしました。 優しい感じのするファンタジーですね。 主人公が孤独感を抱えたきっかけや、主人公の孤独感はよく伝わってきました。 でも、後半部分がちょっと急ぎ足で気持ちが…
[一言] どうも辻和美さん。 彼女の孤独さがよく出ていて途中まではとてもよかったです。 ですが、最後の盛り上がる所が無理矢理終らせた感じがします。 ここは焦らず落ち着いた書き方をしたら面白かったと思い…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ