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貿易都市ツォルト3

「これが貿易都市『ツォルト』の町並み………」


少女が馬車の窓から町を眺めながら呟いていた。


カルードは誇らしげに町について語りだした


「この通りは商業通り。売り買い専門の通り道です。住宅街と離しているのです。これも、田舎町で人口が少ないお陰ですがね。」


皮肉を忘れず、しっかりと毒を吐くあたり一端(いっぱし)の貴族ではある。



「よく言いますわね。確かに、人口は少ないかもしれませんが、働き手の数でしたら、我が都市以上の比率でしょう。まだ10才にもなっていない子供たちも働き手にしているのは国中探してもここのような最先端の都市ぐらいでしょう。」



しかし、彼女もまた貴族。皮肉は腐るほど聞いてきた。


カルードはひきつらせた笑顔で舌を巻くしかなかった。







屋敷の入り口にはピンと姿勢を伸ばして整列するメイドたちによって道が作られていた。


「あら」


馬車から降りてきた少女は少し驚いた。


その姿を後ろから見てしてやったりと、カルードは少しばかり口角があがった。


「「「「おかえりなさいませ」」」」


総勢14名の多種族からなるメイドたち。

一番目を見張るのは奥のエルフや白狼族と呼ばれる獣人



珍しい種族ではあるが、見かけない程ではない。

一番驚かれたのは貴族としてのあり方だ。



人間と他の種族では、長い間戦争をしていたことがある。だからこそ、未だに溝がある都市も多い。

場所によっては、獣人族を奴隷にしている人間主体の都市もある。逆もしかりだ。

だからこそ、メイドや執事といった貴族の近くで仕事をするものは人間にするのが常識であった。

他種族を雇うことで命を狙われる危険性もあるのだから、保身的な貴族たちは危険を招き入れたりしない。



獣人族や亜人が人間より秀でている部分はあるものの、器用ではなかったり、体力がなかったりとデメリットも多い。

そのためコストパフォーマンスを考えると人間に落ち着いていくのだ。



「珍しいでしょうか?」


カルードは後ろから何でもないように少女に声をかけた。



「いえ、あっちでは見慣れてますので」


そういって興味無さそうにメイドたちの間を進んでいく。

その姿勢は美しく、歩く姿からも気品さが溢れでている。



「そんなことはおいてくとして『ハイ』エルフの方、アルフ様はどちらにいらっしゃいますか?」


今のところ、今日一番の笑顔で、前にいるエルフのメイドへ声をかけた。ハイのところを強調しているのは彼女が隠蔽魔術を使っていることを見破っているという彼女なりのアピールである。



「まだ、幼いので部屋で待っております。」


ハイエルフと呼ばれた彼女は落ち着いた様子で対応していたが、少女の後ろにいたカルードは戦慄していた。

それは隠蔽魔法が得意なエルフ種の中でも高位にあたるハイエルフの隠蔽を破ったからだ。



「そうですか。では、そちらに案内してください。」



少女は何でもないように話をつづけて案内の催促をする。

ハイエルフのノンはお辞儀をして少女を案内した。




カルードは案内されていく二人を入り口で見送りながら、念話で自分の息子の側近であるリールベルへ息子の準備を急ぐように通達する。

すぐに了承の念話が飛ばされてくるのに頷くと、隣に来ていた白虎族のメイドが笑いながら領主であるカルードの肩をパンパンと音が出る強さでたたく。


「ちょ、アテレナ。力加減を考えてくれよ。」


カルードは苦笑いを浮かべながら、講義の声を上げるがアテレナと呼ばれた白虎族の方はニヤリと白虎族の牙を見せながら笑みを浮かべていた。


「あんたがそんなに緊張してるから、ほぐしてやってるんだ。そんなんじゃ、吞まれるぞ」


その言葉にカルードは少し不安な表情を浮かべるも、すぐにそれを腹の内に仕舞い込む。

アテレナに感謝の念話を飛ばし、どうどうとした足取りで屋敷に入った二人の後を追った。

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