貿易都市ツォルト2
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港についた船から一つ一つ、船乗りの手によって荷物が卸されていく。
その荷物一つ一つを手元の紙に書き写しているのは、この都市を統治している貴族の『カルード・キャロノ』である。
彼の敏腕さは、小規模だった村が現在貿易都市となっていることを考えればわかることだ。
彼は現在、海を挟んで反対側にある、南国都市から運んできた物資の確認中である。
「よし、これで積み荷は全部おろした。それぞれ、箱の宛先に届けておいてくれ!」
そう宣言すると、港の入り口で待ってた少年たちが一人一つ、箱を抱えて村の中へ消えていく。
少年たちは盗人などではなく運搬の仕事をしている立派な働き手である。
彼らは運んだ品物を届けることで報酬として1500ルポをもらえるのだ。
この制度を作ったのはカルードであり、貧困の差に子供たちが苦しむことが無いようにうまく経済を回しているのだ。
彼らの背中を眺め、カルードはほっと一息ついたのだった。
そして、貨物船から降りてくる、華美な着物をきた少女を困った顔でみていた。
◇
山の散歩を終えたアルフは屋敷に帰ってくると屋敷の中を駆け回るメイドたちの姿を目を丸くして見ていた。
一緒に散歩に行っていたノンも屋敷に帰りつくとテキパキと仕事をしていく。
「アルフ様!お帰りなさい!」
「「お帰りなさい!」」
「おかえりなさい」
メイドたちの挨拶に気押されたアルフはとぼとぼ歩いて、邪魔にならないように自分の部屋へと向かった。
すれ違うメイドたちはみな一様に焦った表情で掃除を進めている。
ちらりと厨房から除いたコックたちの顔には苦悶が見えていた。
アルフはそんなものにも目もくれず、自室に入り、クローゼットの中から悪趣味とまではいかないが派手な装飾がついた社交界用の服を取りだし、一人で着替えを始める。
着替え始めて数分後であるが、アルフの着替えの難関であるネクタイへと手を伸ばす。
しばしの格闘
「きょうわいいや」
ネクタイを放り出しベットの上に飛び込む。
ふかふかとしたベットはアルフの体を包み込むように沈んでいく。
その心地よさにアルフはそのまま意識を手放した。
……
『トントン』
「……はーい」
アルフは目を擦りながら返事をした。
「お父様が戻られます。お召し物のお着替えの手伝いに参りました。」
ドアをあけ、アルフ専属メイドの一人、人族のリールベルが部屋に入る。
そして、ベットに腰かけている着替え終わったアルフの姿を見て表情を陰らせる。
「きがえたけど、ネクタイがむすべなかったからむすんで!」
アルフはベットの上に放り出したネクタイを指差した。
リールベルはそれを手に取ると空中でネクタイを結び、アルフの前に移動する。
「失礼します」
そういうと、アルフの首にネクタイをかける。
アルフは寝ぼけた眼でリールベルを眺めながら、朝のことを思い出した。
「ねぇ、リールベル。なんでみんないそがしそうなの?」
「アルフ様はおきになさらず大丈夫ですよ。さぁ、結び終わりました。旦那様のお出迎えに参りましょうか」
リールベルはアルフに優しい笑みを浮かべ正面から横へ移動する。
部屋から出ると相も変わらずメイドたちが走り回し何やら作業をしていた。
◇
「カルード。お屋敷はどこにありますの?」
日傘を指し華美なピンクのドレスを着た13程の少女は、この都市の当地者であるカルードを呼び捨てにし、堂々とした佇まいで港を一瞥する。
カルードは少しの頭痛を感じながら、取引用の笑顔を浮かべ少女に答える。
「屋敷は港から少しばかり遠くになりますので、馬車の用意をしてますので、そちらにお乗りください。」
カルードの申し出に少女はふんっと鼻をならして海に視線を向けた。
カルードはそれは待つと言うことだと判断し、念話で従者に馬車を回すように伝えた。
馬車は数分で到着したが、それまで少女は一歩も動かず、絵画のように綺麗な姿で海を眺めていた。