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修羅の国九州のブラック戦国大名一門にチート転生したけど、周りが詰み過ぎてて史実どおりに討ち死にすらできないかもしれない 作者:北部九州在住

畿内三好家出会い編 永禄五年(1562年) 春  大規模加筆修正済

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エロいくノ一に男ならば騙される

 三好と反三好の天下分け目の戦い。
 教興寺合戦は双方合わせて十万という大軍がぶつかる大戦である。
 その情報を俺は堺から人を集めてできうる限り把握しようとしていた。

 久米田合戦の敗北により三好家は和泉国・河内国より撤退。
 河内国高屋城に入城した畠山高政の元には紀伊・和泉・河内・大和の反三好勢力が集結し、その数は四万。
 一方の三好軍は三好長慶の居城飯盛山城を決戦場に選び、三好義賢を副将に一万の兵で籠城。
 畿内および四国の三好勢力に檄を飛ばして兵を集めにかかる。
 ここにおいて問題は京だった。
 三好軍の背後をうかがう六角軍二万と三好軍一万四千が対峙していたのだが、三好軍はあっさりと京都を放棄。
 将軍足利義輝には岩成友通を警護につけ石清水八幡宮へ移し、勝竜寺城まで後退。
 山崎と勝竜寺城のラインに防衛線を張る事で、一万近い兵力の抽出に成功する。
 空になった京都は六角軍が占領したが、そこからの足は重たかった。
 三好軍が畠山軍との決戦に負けたら丸儲け、勝っても消耗した三好軍と戦えばいいという下心からである。
 その一方で三好軍の動きは止まらない。
 摂津国鳥飼に陣を敷いた三好家の若き後継者三好義興の下に集った兵は二万五千。
 更に、内藤宗勝が率いる丹波衆七千、安宅冬康率いる淡路・四国勢一万三千が尼崎に上陸。
 信貴山城に戻った松永久秀が畠山軍の連絡線を叩き出すと、畠山軍は動揺しはじめる。
 元が反三好で集まった為に、こういう時に烏合の衆を露呈する。
 とはいえ飯盛山城周辺の城を落として、総攻撃をかけるかどうか。
 久米田合戦からおよそ一月。
 いよいよその合戦の火蓋は切られようとしていたのである。

「お願いでございます!
 何卒!
 何卒お力を……!!」

 屋敷の前で行われているこの声も一月もするともはや日常になる。
 久米田合戦で殿を務めたことが畿内周辺に知れ渡ってのこの有様。
 一応三好側中立という形の認識なのだろうが、中立都市堺にいる事を良い事に畠山側からの誘いも相変わらずやってくる。
 なお、俺の事をよほど警戒しているのか、堺の周囲には畠山軍の物見がちらほらと。

「おはよう。八郎。
 今日は何処の家よ?」

 起きた有明に俺は返事を返す。
 朝からやってくるのでもはや目覚ましである。
 お色も起きてくる。

「信濃国小笠原家。
 武田家に国を奪われて、客将として三好に仕えているそうな。
 彼が率いる浪人衆はそんな訳あり連中の宝庫さ」

「合戦が近いのですね。
 だんだん声に焦りが現れています」

 お色の感想におれも頷く。
 畠山軍の選択肢は三つだ。

 1)飯盛山城強攻。
 2)後詰の三好軍撃破。
 3)転進して信貴山城の松永久秀を落とし、大和との連絡線を確保する。

 今ならばどれも五分五分の博打という所だ。
 烏合の衆とはいえ、四万という兵力はそれを補うだけの力がある。
 城攻めのセオリーならば、抑えの戦力を残して後詰の三好軍を叩くのが一番現実的なプランに見える。
 何よりも、鳥飼に陣を置く三好義興軍と尼崎に上陸した安宅冬康軍が離れているのが大きい。
 丹波よりやってきている内藤宗勝軍もどちらにも合流の報告は届いていない。
 久米田合戦の勝利を覚えているならば、叩こうと考えてもおかしくはない。
 それをしない理由は、川だった。
 畠山軍と三好軍の間には淀川が流れているのだ。
 それは三好軍が渡河に躊躇する理由でもある。
 いかな大軍とはいえ、渡河時の攻撃は大損害を受けることになる。

「おそらくは、安宅殿の軍勢が合流するまでだろうな。
 俺らが参陣を決めた場合、堺から船で尼崎に上がり、合流するから三日はかかる。
 あと一週間もすれば、合戦がはじまるだろうよ」

 俺が朝の青空を眺めながらぼやいていたら、大鶴宗秋と一万田鑑実と多胡辰敬が同時に入ってくる。
 こっちで雇った浪人を管理する大鶴宗秋、豊後から連れてきた連中を率いる一万田鑑実、一族を引き連れてこの地に逃れた多胡辰敬の三者とも背景は違うは今は俺を旗印に同じ臣として働こうという意識なのだそうだ。
 これも久米田合戦で一緒に戦ったのが大きい。
 なお、明智十兵衛がこの席に居ないのは、彼自身が断ったというのもある。
 畿内で己を高く売りたい明智十兵衛は、このままズルズルと俺との関係を続ける気はないと言う訳だ。

「おはようございます。
 御曹司。
 今日もうるさいですな」

 三人を代表して大鶴宗秋が挨拶をする。
 俺も挨拶を返すがその時には有明とお色が皆の食事を持ってくる。
 普通の大名はしないだろうが、こっちは大名ではないので皆で同じ食事を取る事にする。
 根無し草の俺達は仲間割れなんてしたらあっさりと滅びかねないからだ。

「で、どちらに着くので?」
「おとなしくすると言っただろうが」

 これも最近は大鶴宗秋と繰り返している挨拶である。
 それぐらいスカウトが激しく勧誘をしており、双方のスカウトが出会っての喧嘩沙汰が発生。
 堺の町衆もこのスカウト合戦に苦慮していた。

「それ、外の輩に言って納得してもらえるので?」
「まぁ無理だな」

 多胡辰敬のツッコミに俺は苦笑するしかない。
 一万田鑑実はこういう席では極力声は出さないようにしている。
 彼の任務が元々、俺の監視と万一の粛清があるからだ。
 親しき仲にも礼儀あり。
 俺も一万田鑑実もそれを外さないように慎重に距離を測る。

「で、あれどうするの?」

 有明のぼやきに俺は改めて外の声に耳を傾ける。
 正直、毎朝毎朝はうるさいのだ。
 三顧の礼ではないがここまで日参するのならば、せめて顔ぐらいは見ておこうと思って彼を屋敷に入れるように家のものに伝えたのだった。

「で」
「何で」
「こうなっている?」

 有明、お色、俺の三人が入ってきた女に首を傾げる。
 美女ではある。
 美人過ぎるのだ。
 有明が艶、お色は凛みたいにたとえるならば、この女は魔だ。
 危ないなんてものじゃない。
 傾国の女とはこうだと言わんばかりの女が、さも当たり前のように向上を口にした。

「小笠原長時様の使いとして参りました。
 大友鎮成様には是非お味方して頂きたく」

「いやまあ、ちょっと待て。
 散々外で叫んでいた男はどうした?」

 にこりと女が笑う。
 それだけで背筋に何かが走った。

「ああ。
 叫ぶ為だけに雇ったのですよ。
 呼ばれたならばこうして私が出れば、興味を引くという訳で」

 まずい。
 この女のペースに乗ったら何処に連れ去られるか分からない。
 かといって上げてしまって家を名乗られた以上、それ相応の対応をせねばならぬ。

「お色。
 すまないが、白湯を持ってきてくれ」

「かしこまりました」

 緊急時の符号で、大鶴宗秋を呼ばせるためにお色が席を外す。
 この女とサシで会わなくて良かったと心から思う。
 小笠原長時。
 元信濃国守護で信濃林城主。信濃小笠原氏の当主で小笠原流弓馬術礼法などで名を知られている。
 もっとも、武田信玄に敗れてこんな所に流浪していたとは。
 彼は客将の一人として浪人衆を率いてるのだろう。
 浪人衆はぶっちゃけるとあまり戦力にならない。
 腹に一物ある奴ばかりのパートタイマー部隊と言えば、そのブラックぶりを感じてもらえるだろう。
 で、彼が功績として目をつけたのが、俺という訳だ。
 三好長慶・義賢兄弟の礼を受けてもなお好意的中立を崩さない俺を引っ張り込めば、その功績は間違いなく大将首をとったのと同じ扱いに成るだろう。
 あれ?
 これ何処かで聞いたことが……?


「今趙雲と名高き大友鎮成様をお迎えする事ができれば、我が方の勝利は間違いないかと」


「ぶっっっっっっっっっっっっ!!!!!」
「ちょ!
 ちょっと、八郎!
 大丈夫!?」

 吹き出す俺に有明が背中をさするが、大丈夫な訳あるか!
 何だって?
 今趙雲だって?
 そういえば、『三国志演義』はもうこの時期最新の物語としてこの国に入ってきていたな。
 だからって、よりにもよって趙雲に例えられましたよ。おい。
 けどわかったことがある。
 『三国志演義』は入っては来たが、漢字、最先端の明朝体で書かれている。
 それが理解できるか知っている女性というのはものすごく頭が良いか、それを学べる場所に居た可能性が高い。
 俺が有明とお色を侍らせているのは知っているだろうから、そのあたりのチョイスといい、客将をしている小笠原長時に使いこなせる駒ではない。
 更にその後ろにバックがいると見た。

「失礼します。
 白湯をお持ちしました」

 お色の後ろに湯が入った芦屋釜を持った大鶴宗秋が入ってくる。
 湯の入った釜を持つには男手が居る。
 ごく自然に男手を呼ぶ符号である。
 お色は俺達の方には普通の茶碗を。
 女の方にはこの間もらった珠光茶椀に湯を入れて差し出す。
 お色なのか大鶴宗秋の指図なのか知らないが見事な手だ。
 という事は一万田鑑実が屋敷の外を固めているのだろう。
 多胡辰敬と彼の一族は、荷降ろしとその売却で働いており、明智十兵衛には店を任せているからだ。
 女の手が茶碗を見て止まったのを俺は見逃さなかった。
 この女、間違いなくこの茶碗の価値を分かっている。

「さて、腹の探り合いはそろそろおしまいにしよう」

 俺から口火を切る。
 まだ女は妖艶な笑みを崩さない。

「俺を連れてゆくことで小笠原殿への功績にする。
 それは分かった。
 で、それによって何を狙う?」

 刀に手をかけた大鶴宗秋を手で制す。
 この状況で俺を殺すという選択はない。

「流石は今趙雲殿。
 その智謀に間者と見ぬいてまで手を出させない仁者ぶり。
 感服いたしました」

 芝居かかった物言いにはまだ相手の想定内だからこそ。
 舐めるなよ。
 ハッタリならば、こちらも負けん。


「で、信玄公に何を言われたのかな?」


 はっきりと女の顔に驚愕の顔が浮かぶ。
 まあ、小笠原経由で武田を想像していただけだったのだが、当たったらしい。
 という事は、やっぱりこいつはかの有名な武田家の歩き巫女か。
 歩き巫女というのは、全国各地を遍歴し祈祷・託宣・勧進などを行うことによって生計を立てていた遊女や芸者の一派で、甲斐国武田家はそんな彼女たちに諏訪大社の巫女の名を与えて保護すると同時に、間者として使っていたのである。
 そんな彼女たちの芸事や色事はトップレベル。
 つまり、プロのハニトラ要員が目の前の女の正体である。

「今趙雲様でもそこは間違えますのね。
 たしかに私は武田の歩き巫女の出ですが、足抜けした身ですわ」

「足抜けねぇ。
 これだけの技量があるなら、足抜けなど許さぬだろうに」

 俺の誘い水に女は少しだけ過去に目を向ける。
 そこから零れた言葉は、あまりにも有名なあの合戦だった。

「八幡原の合戦が全てを変えてしまいました」

 八幡原の合戦。
 むしろこっちの名前ならばピンと来るだろう。
 第四次川中島合戦。
 武田と上杉がガチの死闘を繰り広げた最も日本で有名な戦いの一つ。

「あの戦いで多くの者が命を落とし、同時に抜擢されました。
 我が家は男手無く断絶し、この身はくノ一の頭領になれる才は自負していたのです。
 それをあの望月の女が御屋形様に愛されたのを良い事に……」

 あの望月の女というのは、歴史にその存在が確認されているくノ一の頭領だった望月千代女の事だろう。
 つまり、頭領の座を争って負けたので粛清を恐れて畿内まで逃げてきたと。

「という事は、糸の先は上杉か」

 肯定の笑みを浮かべた女を見て、俺はため息が出る。
 メジャー戦国大名ともなると、平気で中央でもこうやって糸を張り巡らせるから怖い。
 絵図面の背景はこうだ。
 第四次川中島合戦の後、武田家はその矛先を関東に向ける。
 その進出先は上野国。
 そして、上野国は関東管領である上杉家の出兵ルートで最初に通過する国であり、関東で戦う北条家は武田家の同盟国である。
 この前提の上に話がこの畿内大戦に絡んでくる。
 三好家が擁している足利義輝と上杉輝虎と仲は良く、上杉家は朝廷や幕府に色々便宜を図っていた。
 そのあたりの権威は地方に行けば行くほど無視できるものではない。
 武田側は、上杉家の京での権威付けをひっくり返す為に畠山家や六角家に支援の手をさしのべていて、それを阻止するために上杉家も畿内にて活動をしている訳だ。

「大友鎮成様がお気づきになられたように、小笠原長時殿に功績を立てて戴いて信濃にて乱を起こすのが上杉の狙い。
 さすがに糸の操り主は知りませぬが」

 このあたり、忍者の地位の低さを物語っている。
 直接政治や戦略の意思決定に絡めないから、それらを命じる武将が頭領に命じ、頭領がその配下に……
 だからこそ、彼女みたいなフリーの下請けが存在できるという訳だ。

「この人、間者なの!?
 絶対、私と同じと思っていたのに……」

 名を馳せた遊女だろうと当たりをつけていた有明が唖然とする。
 それに女は遊女の顔で笑ってみせる。

「女手一つで生きるのは大変でしたので。
 諏訪の歩き巫女だけでなくこちらで立川真言流も極めましたのよ」


「ぶっっっっっっっっっっっっ!!!!!」
「ちょ!
 ちょっと、八郎!
 大丈夫!?」 

 また吹き出す俺に一同心配そうな顔をするが、ただ笑顔を見せた女がそれを肯定と伝えていた。
 要するにプロのハニトラどころでないエロのエキスパート。
 良かった。
 一人で会わなくて本当に良かった。

「御曹司。
 で、どうなさいますか?」

 大鶴宗秋が殺気をこめるがさすが元くノ一笑顔を崩さない。
 かといって扱いに困る案件である。
 殺せば上杉にバレるし、上杉と公方様の仲は良い。
 で、公方様こと足利義輝は三好政権の操り人形でいたくないので、この一件を知られて何かされるのも面白く無い。
 放置して武田側に殺されるというのも惜しい。
 いやぶっちゃけるとその躰は魔性だけあって、うん。

「四国勢に武田信虎殿の隠し子がいる。
 知っているか?」

「!?」

 女の顔色が驚愕に変わる。
 お家争いの果てに今川家に追放された武田家前当主武田信虎。
 その隠し子は三好家に仕官して、今は阿波国脇城城主武田信顕として此度の合戦に四国勢の中に参戦しているはずである。

「武田家中にお家争いの種を蒔く格好の種だ。
 もってゆけ」

「よろしいので?」

 ただより高いものはない。
 それを女はよく分かっている。
 だからこそ、一度やって見たかったキザな台詞を言うことにした。

「名乗れ。
 魔性の女だ。
 その名前覚えておいてやる」

 女は俺の言葉に瞬きして、面白そうに笑う。
 魔性の仮面ではない素の笑いを。

「果心。
 お気に召したならば、お呼びくださいな。
 今度は閨でお会いいたしましょう」

「っ!!!」

 果心は珠光茶椀を俺にゆっくりと投げる。
 これ一つで小城が建つその茶器が宙を待って俺の手にすとんと落ちる。
 だが、その瞬間俺を含めた皆の視線は珠光茶椀に集まっており、視線を戻した時には果心の姿は既に消えていた。

「曲者だ!出会えっ!!」

 慌てて大鶴宗秋が声を張り上げて一万田鑑実が伏せていた手の者に探させるが、多分見つからないのだろう。
 珠光茶椀をおいてため息をついたら、両肩に手が乗せられる。

「ところで八郎」
「あの女と閨でお話する為に逃がしたの?」

「……」

 ぽんと手を叩く。
 大鶴宗秋はここまで読んで、逃げ出したんだろうと。

「そんな気起こさないように」
「徹底的に絞ってあ・げ・る」

 有明とお色の笑顔が同じように見える。
 その日の夜、朝日が上がっても二人は許してくれず、今趙雲とて女二人には叶わないと噂を広めようと黄色い太陽を見ながら誓ったのであった。
正体がよくわからんので遠慮無く女体化してエロくノ一に。
歩き巫女+立川真言流+くノ一=薄い本



ルビがずれるので、下においてみるテスト。

足利義輝 あしかが よしてる
岩成友通 いわなり ともみち
内藤宗勝 ないとう むねかつ
三好義興 みよし よしおき
小笠原長時 おがさわら ながとき
武田信玄 たけだ しんげん
望月千代女 もちづき ちよめ
上杉輝虎 うえすぎ てるとら
武田信虎 たけだ のぶとら
武田信顕 たけだ のぶあき


11/30
少し加筆
5/1
歩き巫女の記述追加
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+注意+
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