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修羅の国九州のブラック戦国大名一門にチート転生したけど、周りが詰み過ぎてて史実どおりに討ち死にすらできないかもしれない 作者:北部九州在住

八郎立志編 永禄二年(1559年) 秋  大規模加筆修正済

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宗像の祟り姫

「ようこそ来てくださった!御曹司!
 歓迎しますぞ!!」

 岡城主瓜生貞延の歓待ぶりは、こっちが考えるより凄いものだった。
 芦屋に居て途中合流を命じた柳川調信とその一族と共に合流し城に到着したのだが、こちらにも夜盗の情報は来ていたらしく、捕物の結果夜盗達が本来のコースで待ち伏せていた跡が見つかり騒然となったのは言うまでもない。

「色々と迷惑をかける。
 城に帰るついでに寄ったのだが、一度芦屋の街を見ておこうと思ってな」

「お気になさるな。
 まっすぐ城に帰っていたならば夜盗に襲われていたかもしれぬのですからな。
 御曹司は幸運な御方だ」

 考えてみれば、麻生家と宗像家の間に位置してその監視をしていた大友側の家だから、その心労と味方が増えた事による喜びがこの歓待ぶりなのだろう。
 同時に、歓待に出された酒や食べ物に貢物が彼が監視していた芦屋の繁栄ぶりを物語っている。

「夜盗の方は取り逃がしてしまい申し訳ござらぬ」

「仕方ありますまい。瓜生殿。
 我らの守る為に兵を戻したのですから、感謝こそすれどうして責められましょうか?」

 のんびりと話しながら、瓜生家の旗を見る。
 家紋は土岐桔梗。
 他紋衆だが、その扱いには注意をしなければならない。
 大友一族の宿敵である大神一族では無く、大友一族と共に東から流れてきた他紋衆だからだ。
 下り衆として、大友家他紋衆の中で譜代扱いをされるのが彼らである。

「おや。
 そちらは、宗像のお色姫ではござらぬか?」

 瓜生貞延の言葉に警戒の色が入る。
 何しろ監視対象の姫君がこれから取り込もうとする御曹司と共に現れたのだから。
 同じ感情で有明の機嫌もあまり良くはない。

「祟りで行き場を失って、和議の貢物として宗像より差し出されたのよ。
 まあ、身の程は弁えているつもり。
 生娘でもないし」

 祟りを祓うというのは、思った以上に厄介である。
 何しろ祓ったかどうかを最終的には本人しか分からないからだ。
 で、宗像家を襲った祟りの嵐はお色姫に深く刻まれ、その二次被害・三次被害も受けているのだろう。
 ぶっちゃけると性的除霊等だ。
 状態変化として女性においてもっともポピュラーであり、それだからこそ詐欺が無数に生まれて今でも悲喜劇を生み出し続けているあれだ。
 俺が恐る恐る確認をとる。

「本人前にして言うのも何だが、差し出されたというより……」
「ええ。
 追い出されたの。
 祟り憑きだから遊女にすらなれやしない」

 うん。
 この美貌で大名家の姫だから器量も良いだろう。
 だからと言って、筑前国に轟く祟りの当事者を抱くなんて度胸のある人間はそうは居ない。

「……」
「……」
「……」

 いかん。
 場が盛り下がった。
 とりあえず、有明に頼んで宴を盛り上げて、なんとか瓜生貞延の面目を保ったのであった。



 宴の後、岡城の部屋で大鶴宗秋と柳川調信を呼んで悪巧み。
 芦屋をどのように活用するかで意見交換をする。

「まあ、戦がなければ食ってはいけると思いますよ」

 開口一番柳川調信がぶっちゃける。
 実際に芦屋を調べていた彼の言葉だから信頼はできるだろう。

「芦屋ってのは、博多の次の停泊地なんですよ。
 で、ここから北回りに行くか、瀬戸内海に入るかという港の一つな訳で。
 それと、遠賀川の河口にあるから、遠賀川を下る米を始めとした食料が博多に運ばれてゆく。
 馬鹿が何かしないかぎり、儲けは出続けるでしょうな」

 大鶴宗秋が柳川調信が語らなかった部分を付け足す。
 それこそが問題なのだから。

「……戦が起こらない限りにおいてか」

 芦屋は古くから麻生家と宗像家が争っていた港町である。
 遠賀川の東側は麻生家なので、芦屋は安全のために宗像家と麻生家に保護の名目で銭を払っていた。
 その後、大友の勢力拡大に伴い宗像家の銭を瓜生貞延が押さえ、宗像家との因縁になっている。
 猫城に滞在したからこそ俺でも分かる。
 あの城で守るのは無理に近い。
 兵もそんなにいる訳ではないので、毛利との戦が再発した時の為にいろいろ考える必要がある。

「岡城がここ。
 対岸にある筑前山鹿城の麻生元重殿はどう動く?」

「問題はないかと。
 彼とて芦屋を兵火に晒したくはないでしょうからな。
 それに、麻生本家を麻生鎮里殿と麻生隆実が争っている現状で旗幟を鮮明にするとは思えませぬ。
 何よりも、宗像と何度も争っている御仁だ。
 宗像は次も毛利につかざるをえないでしょうから、必然的に大友側に立つかと」

 分家で芦屋の対岸に城を構える麻生元重について俺が尋ねると柳川調信が答える。
 彼の説明を信じるならば、芦屋と遠賀川河口域は大友が抑えることができる訳だ。

「問題は宗像より麻生かと。
 和議によって、麻生鎮里殿にある程度の領地が渡りましたが、本家は麻生隆実のまま。
 麻生隆実がお家争いに勝てば、全ての算段は崩れますぞ」

 大鶴宗秋の指摘に俺も渋い顔をせざるを得ない。
 大友家はあえてこのお家争いに介入しなかった。
 その理由は決まっている。
 俺へのテストに他ならない。

「小野鎮幸とその郎党を使おう。
 麻生鎮里殿が動いたら、その後詰に動くように命じておく。
 そうなると、どれだけ出すかか」

 猫城の兵員の限界はおよそ150人。
 柳川調信の郎党がおよそ70人。
 小野鎮幸の郎党が50人で、あと30人ばかり雇う余地がある。
 芦屋で兵を募ってもいいが、その前に城の守りを固めることにする。

「飛び道具が使える連中はどれぐらいいる?」
「私の郎党は全員使えますよ。
 元々船戦をやっていましたからね。
 という事は、石火矢ですか?
 明の石火矢を30丁抱えていますよ」

 先の門司合戦において大きな効果があった石火矢をはじめとした鉄砲を、大友家は1200丁確保していた。
 それを確保しておくのと無いのでは、戦のしやすさが変わってくる。

「種子島の方は?」

「御曹司。
 あれはたしかにいいものですが、如何せん高すぎます。
 数を揃えるのに猫城では無理でしょうな」

 石火矢の方だが30丁あるという事は、合戦時に組を作っての集中運用が可能という意味である。
 城に篭っての守りについては問題はないだろう。
 そうなれば、使い潰しのきく兵が必要になってくる。

「足軽を雇うか、侍を雇うかだな」

 足軽、要するに雑兵ならば簡単に集まるし、簡単に消耗する。
 そういうものだからだ。
 ただ、30人ぐらいというのは組が作れ、足軽組頭が指揮できる単位でもある。
 ちょっとした侍を雇いその郎党を丸抱えすれば、足軽よりも戦力は強化されるのである。

「八郎殿。
 よろしいか?」

 部屋の外から声がする。
 凛とした声の後障子が開けられると、お色が物怖じせずに入ってくる。

「それならば少しあてがあります。
 先の戦で、宗像は領土を削られた故に、かなりの侍を手放さねばならなくなった。
 良ければ、彼らを八郎殿の下で働かせてやっていただけませぬか?」

 お色の申し出に柳川調信と大鶴宗秋が黙りこむ。
 前まで刀を合わせていた宗像家旧臣ともなると躊躇するのも分からないではない。
 だが、お色はそんな事承知の上と笑ってその理由を話した。

「何も城に入れよとは申しませぬ。
 因縁深き麻生が相手ならば、我らも死力を尽くして戦いましょう」

 そうきたか。
 こっちは使い潰せる戦力が確保でき、向こうはこちらに恩が売れる。
 この姫、祟りを別にして予想外に賢い。

「で、誰を出すのだ?」

 俺の言葉にお色は即答する。
 それは、最初からこれを交渉の札に考えていたからに他ならない。

「許斐氏則。
 八郎殿が落とした許斐岳城の一族よ。
 私の祟りとも絡むけど、この一族はお家争いで没落してね。
 しっかりとしていたら、大友に城は取られなかったでしょうに」

 堂々とそれを言う当たり度胸もあるのだろう。
 俺も苦笑するしか無いが、お色は同じく苦笑しながら続きを話した。

「で、彼の親である許斐氏鏡は私を最後まで見てくれました。
 その恩返しも兼ねているのです。
 没落しているとはいえ、彼は宗像家の家老職に今も留まっています」

 なるほど。
 彼女の傅役だったという訳だ。
 同時に、宗像家とのパイプ役の確保という感じだろうか。
 戦国的思考から見て悪くはない取引ではある。

「御曹司。
 受けたなら、麻生への後詰は百人を越えることができましょうぞ」

 柳川調信が頭で算盤を弾いたらしく、メリットを提示してくれる。
 たかが百人と言うなかれ。
 集まった兵が2000人とかでの百人である。
 恩は十分に売れるし、戦の主導権すら握れる人数なのだ。

「姫。
 失礼ですが、御曹司相手では側室として扱われますぞ。
 それでよろしいので?」

 大鶴宗秋が念を押す。
 この時点で彼もこの提案に賛成というのが分かる。
 そして、お色はその確認に簡単に首を縦に振った。

「構いません。
 祟り姫を嫁になんて酔狂者もいないでしょうから。
 これも戦国の習いでしょう」



 夜も更けて用意された寝所に行くが、当たり前のようにお色がついてくる。
 まあ、男からして嬉しい状況ではあるが、間違いなくこれは修羅場である。
 なぜならば、寝所には有明が待っているだろうからだ。
 廊下で立ち止まって、俺はお色の顔を見つめる。
 月明かりから見える彼女の顔は、凛々しいというより儚く見えた。

「何でついてくる?」

「それは、私は八郎様のものになったのですから。
 寝所でもお世話をしようかと」

 このあたりのやり取りは本題の枕だ。
 どうせ寝所で待っている有明との修羅場が本戦だろうから、その前にお色に確かめる事にする。

「で、何で俺なんだ?」

 お色からの返事がないのは意味がわからないのか、意味がわかってとぼけているのか。
 俺は彼女の返事を待たずに、淡々と推理を披露する。

「祟り姫と言っても宗像の血を引く姫だ。
 あてがない訳ではない。
 たとえば、少弐政興殿の所でも良かったし、毛利相手に毛利家中の誰かに嫁ぐというのもありだった。
 俺と同じ扱いならば、隣の麻生とて受け取っただろうに」

 わざと会話を切るが彼女は笑みを湛えたまま。
 祟りの怖さか女の怖さか知らぬが、背筋が寒くなるのを我慢して更に推理を続ける。

「妙見神社の一件もそうだ。
 姫は俺が来るのを知っていた。
 もちろん、俺を狙ってだ。
 祟り姫の名前はそれゆえに宗像の民には知られているだろうから、害無きお願いなら聞いてくれただろうな。
 俺の行き先とか」

 この手の移動には先触れとして伝令を走らせ、合戦がおきないようにするのが戦国の世の習いだ。
 そういう訳で、彼女には俺が岡城に行くのを分かっていたのだ。

「どうしてそんな事を?」

「妙見の滝の着物さ。
 天女の羽衣よろしく、服が無くなった話なんていくらでもあるだろうに。
 にもかかわらす、服は上質の着物。
 それはそうだろう。
 俺を誑かさないといけないからな」

「……」

「それが取られていなかった。
 それと、水に当たった時間も見計らってだろう?
 秋も深まってきているからな。
 長く当たると、唇が青くなるんだよ」

 これでも寺で預けられた身である。
 薄田七左衛門なんて山伏をやっている修行のエキスパートも友に居た。
 そこそこ修行なんてものも身につかぬ程度にはかじっている。

「基本的には、姫の提案を飲む方向に行くだろう。
 だからこそ話してもらおう。
 どうして俺なんだ?」

 騙し騙され罵られが戦国の世とはいえ、それを寝所まで持ってゆくほど俺もマゾではない。
 答えない場合はそのまま抱かない事を考え、それで有明を説得しようと考えていたら、お色の口が開いた。

「流石ですわね。御曹司。
 貴方様だからこそ、私はこの身を賭けたのです。
 理由は、御曹司が京に行くから」  

 その笑顔が眩しい。
 違う。寂しいのに強がっているのだ。
 そんな笑顔を俺は何度も柳町の有明で見てきた。

「『宗像の祟り姫』。
 この名前はずっと私についてまわるのでしょう。
 それが私はいやだった。
 この身を遊女に奴しても構わなかったのに、祟りが全てを邪魔してしまう……」

 彼女の祟りは解けている。
 だが、その名前は未だ呪いとして彼女を縛り付けている。

「私を抱かなくても構わない。
 畿内で私を売り払っても恨みませぬ。
 私は、祟り姫ではなく、お色として生きたい」

 告白の間頭に浮かんだのは、有明との修羅場だった。
 長くなるだろうし、多分有明も受け入れるだろう。
 だって、俺も有明もお色と同じ呪いに縛られているのだから。
 そんな俺の事なんて知らず、お色は俺が望んだ、彼女の願いを俺に告げたのだった。

「私はここから、この祟りの地から出て、お色として生きてみたい。
 お願い。
 八郎様。
 私を、祟りから連れだして」
もちろん、祟り祓いのくだりはこっちの創作。
どんなエロい祓いをされていたのかって?
きっと、某ROOTの巫女お嬢様みたいに。


麻生元重 あそう もとしげ
許斐氏則 このみ うじのり
許斐氏鏡 このみ うじあき

4/15 少し加筆
4/18 加筆
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