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修羅の国九州のブラック戦国大名一門にチート転生したけど、周りが詰み過ぎてて史実どおりに討ち死にすらできないかもしれない 作者:北部九州在住

豊芸死闘またの名を因果応報編

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豊薩緊張 その2

 肥後情勢の悪化は次々と早馬にて伝えられている。
 その発信源は同盟という名の従属をしていた阿蘇家からのSOSだった。

「申し上げます!
 阿蘇家当主阿蘇惟将様からの文が届いております。
 内容は『相良家との境目争いが終らず。何卒ご支援のほどを……』」

「肥前国斉藤様より伝令!
 有馬家が保護している天草の切支丹どもが支援を求めています!!」

「間者より文が!
 宇土城主名和顕孝の元に島津家からの間者らしき者が頻繁に入っているとの事!」

 合戦なり政変なりで境界に変更が生じる場合、双方の納得があるならば話は別だが、時は末法の世戦国時代。
 武力にて互いの境界を策定する訳で、それにはある一定の法則が存在する。
 暴力という合戦を想定するので、地形的な事情に縛られるという事だ。
 肥後国を地理的に見ると北肥後と南肥後に分けられ、大体その境目は宇土半島というのが大雑把な分け方だ。
 だが、これに地形を加えると少し境界が変わってくる。
 宇土半島そのものは山ばかりで、半島の北側に緑川が流れているのだ。
 そして、宇土城はそんな緑川の南側に位置している。

「島津の奴ら、境界を緑川より南と言い張るつもりだな。
 吹っかけてきやがる」

 府内城の側近衆の詰め所にて肥後国関連の情報を見ながら俺がぼやく。
 招き入れたのは田原親賢で、その背後に田原成親と角隈石宗の影が見える。
 少なくとも側近衆は俺を警戒はするが、仲間外れにはしないというアピールでもあるのだろう。

「名和殿が島津に取り込まれたら、まずい事になりますな。
 検使を送るべきでは?」

「送って島津に走られたら元も子もないだろう?
 捨て置け。
 どうせ、残る時は残るし、寝返る時は寝返るものよ」

 田原親賢と話して分かったことだが、彼は基本提案しかしてこない。
 ある意味寵臣としての正しい立ち位置で、意思決定は大名である大友義鎮に任せるという訳だ。
 加判衆の連中は基本領主である為に、意思決定をするし、その追認を大名に求めたりする。
 このあたり差異があって面白いと思うが、この場で言うほど愚かではない。

「むしろ、俺に話さずにお屋形様に言えばいいだろうが。その話?」
「お屋形様にあげる前に八郎様に話す事で、案が研ぎ澄まされればと」

 なるほど。
 俺は駄目出し要員らしい。

「わかった。
 話にこのまま付き合おう。
 多分、出てきた話で一番やばいのは阿蘇だな」

 俺の断言に田原親賢が首をかしげる。
 同盟国である以上、それを見捨てたら大友家の威信にかかわるので、阿蘇家支援は既定路線だからだ。
 だから、紙と筆を持ってこさせて、地図を描きながら田原親賢に説明をする。

「何で阿蘇家当主自ら支援の文を送ってよこしたかという事だ。
 十中八九名和家の件だろうな。
 あそこが島津に取り込まれると、阿蘇家は分断される」

 阿蘇と名がついているのだから、阿蘇家は阿蘇山周辺を領地にしている訳だ。
 だが、阿蘇家の本拠である浜の館と呼ばれる城は阿蘇山外輪山の外側に位置しているのだ。
 彼らが軍勢を肥後国に出す場合のルートが二つしか無く、阿蘇山を登って菊池側に出るのと緑川を下るルートで、緑川河口に宇土半島が存在している。
 つまり、名和が島津に寝返るという事は、阿蘇家が実質的に無力化される事を意味し、大友家の肥後の影響力が消滅する事を意味する。

「ならばなおの事検使を送らねばならぬではごさざいませんか!」

 聞いていた田原親賢が立ち上がって怒鳴るが、地図を持ってきた奴の顔は笑っている。
 よく見ると、田原成親だった。

「父上。
 八郎様はこういう言い草をしている時は、何か策を考えておられるのですよ。
 これぐらいで怒っていたら付き合いきれませぬぞ」

「言うようになったじゃないか。田原成親殿。
 その言葉に免じて、続きを話したいと思うがよろしいかな?」

 俺と田原成親のやり取りに田原親賢は少し不機嫌な顔で座りなおす。
 こういうフレンドリーさが無いのが大大名大友家というものらしく、珍しくもあり、寂しくもあり。

「名和殿が島津の間者を我らに見せた。
 その意味を考えよ」

 田原親賢は首をひねるが、俺と共に畿内に居て間者どころか忍者達の働きを俺の横で見ていた田原成親はその意図に気づく。
 よそ者の間者が情報を持って帰れる意味は二つしかない。
 一つは間者が有能だった場合、もう一つは間者にその情報を持ち帰らせたい場合である。

「名和殿が助けを求めていると?」

 田原成親の言葉に俺は笑う。
 こいつは本当に良い方向に育った。

「そうだ。
 島津につけばお家は安泰だが、扱いはただの国人衆、いや占領地だからその下か。
 相良の末路を見ているならば、うかつには入りたくは無いだろうよ」

 ここで大友家の放置政策がある意味効力を発揮する。
 好き勝手やってきたからこそ、大名の統制を肥後国人衆は受け入れにくいのだ。

「で、ここで阿蘇家の話に戻る。
 危機感を持っている阿蘇家からすれば名和家のどっちつかずを放置できずに、攻めようとするだろう。
 そうなれば、名和家は必然的に島津に助けを求めてという形になって、大友と島津の合戦にまで話が広がるだろうよ。
 阿蘇がやばいというのはこういう意味さ」

 ここで俺は一息をつく。
 田原成親がさっと竹筒を渡す。
 中には汲んできたばかりの井戸水。
 かつての近習の振る舞いに懐かしさを覚えながら俺はその水を飲む。

「ここまでは阿蘇家の大黒柱である甲斐宗運殿は勘付いている。
 にも関わらず、阿蘇家当主自ら支援を求める文を送ってよこしたか?
 その意味を考えるべきだろうな」

 一つは阿蘇惟将と甲斐宗運の関係が悪化している場合。
 だがこれは島津という外敵がいる前で発火するとは思えないし、少なくとも二人はそこで仲間割れを起こすような無能ではない。
 だとしたらもう一つのケースしか無いだろう。

「つまり、当主自ら支援要請の文を送らねばならぬ何かが肥後で起こっている訳だ。
 そしてそれを、大友家はまだ掴んでいない」

 俺の一言に目の前の二人だけでなく、周囲の連中すら黙り込む。
 どうやら聞き耳を立てていたらしい。

「八郎様。
 その何かとは何でしょうか?」

 こういう時に切り込むようになった田原成親を見ながら、わざらとらしく天井を眺める。
 けれん味のある間というのが、俺の話術を更に怪しくさせる。

「こういう時は、最悪から考えるべきだろうな。
 一番の最悪は、島津と毛利が繋がった場合」

 あっさりと言ってのけた俺の一言に場が完全に凍りつく。
 俺とて凍りつきたいが、生まれてこの方死亡フラグ回避の為に前世知識を元にずっと考えて考えて考え続けたお経みたいなものである。

「天草からなら海路で博多に繋がるし、間の竜造寺もどういう動きをするか分かったものではない。
 こうして俺が口にしただけで皆が固まる一手だ。
 毛利元就ならば、考えているだろうよ」

 海路という繋がっていないのに繋がってしまうその特性がこの状況を生み出してしまう。
 なお、それを最大限に利用して作り上げたのが毛利包囲網だったりするのだが、それを言うのは野暮だろう。

「次に島津の圧力が思ったより強い場合。
 島津は木崎原合戦の勝利で、日向国や大隅国に圧力をかけているが、肥後にも後詰を出してきたのかもしれんな」

 いやな話だが、島津四兄弟の誰かが肥後方面軍司令官として送られるだけで、大友家の脅威が跳ね上がるのだ。
 優れた将というのはそれだけでも恐ろしい。

「ご慧眼お見事にございまする」

 入り口から声がしたと思えば、角隈石宗だった。
 彼は軍師であると同時に、修験者を間者に使うスパイマスターでもある。
 ここに入ってくる情報より深いものを得たからこそ、ここに来たのだろう。

「ですが、惜しゅうございますな。
 第三の最悪でございましたぞ。
 両方でございます」

 そう言って角隈石宗はいくつかの文を差し出す。
 博多に店を構える大友家御用商人島井茂勝からの文で、毛利家御用商人神屋貞清の店に毛利家の小早川隆景と島津家の僧である面高頼俊が滞在していることを掴んでいた。
 そして、神屋貞清から俺宛にと渡された文には、従属した相良家の軍監として島津一族の派遣が記されていた。
 その人物の名前は島津家久。
 俺が恐れる島津四兄弟の四男で、沖田畷合戦、戸次川合戦の立役者である。


 あれ?


 フラグ何か飛んでね?



 肥後情勢の急変に大友家は本格的な肥後介入を決意。
 加判衆が田原親宏から臼杵鑑速に交代した席で、志賀親守を大将に、田原親賢と柴田礼能を副将に、五千の兵を肥後に送る事を決定する。
 一方、本来の目的である対毛利戦は、前線に配置した戸次鑑連、吉弘鑑理、斉藤鎮実に任せ、俺の猫城奪還の出陣が認められた。
面高頼俊 おもだか らいしゅん
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