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修羅の国九州のブラック戦国大名一門にチート転生したけど、周りが詰み過ぎてて史実どおりに討ち死にすらできないかもしれない 作者:北部九州在住

天然チート爺vs量産型チート主編

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河野家の内情は複雑怪奇なり

 浮穴郡から大洲盆地に入った長宗我部軍の兵力はおよそ千。
 しかも、長宗我部元親自ら率いているのだから、こっちも出迎えはちゃんとしなければならない。
 なお、彼と会うとしばらく男の娘の機嫌が悪くなるので、懐柔の策を考えておくことを頭の片隅にメモしておく。

「長宗我部軍!
 見えてきました!」

 物見櫓から長宗我部軍を眺める。
 長宗我部元親本人が率いているのだから、馬廻か旗本かそれに類する戦力で最精鋭なのは間違いがない。
 この城に居るのは、城主大野直之の兵五百に、俺の手勢五百と豊後の後詰千の合計二千。
 日田親永の手勢を宇和島に送って、同数宇和島の遊女連中を呼び寄せたので、相変わらず張り子の虎度は高い。
 一万田鑑実や吉弘鎮理の兵達は長期にわたる戦いで消耗しており、志願したのを却下して休息と再編を命じさせている。
 まぁ、これで長宗我部元親がこっちを攻撃してきたらえらいことになるのだが、そうはならないと踏んでいたし、不機嫌極まりない彼の顔がそれを物語っていた。

「長宗我部殿。
 戦勝おめでとう」

「大友殿こそ、お見事な合戦をなされたようで。
 ……知っていましたね?あれを」

 どのあれだか色々と心あたりがあるので適当に笑顔を作ってごまかす。
 それに合わせて長宗我部元親の機嫌がみるみる急降下しているのだが、その凛々しい顔の怒り顔がどう見ても『私、怒っているんですけど、分かる?』となじる女子にしか見えない。
 武者姿なのに、鎧に着られている女性のように見えるから困る。
 で、合戦時になると鬼若子と讃えられるぐらいの修羅ぶりを発揮するのだから更に困る。

「だから言っただろうが。
 俺たちは、道後平野に入るつもりは無いって。
 あの時点で疑っておけよ」

「ええ。ええ。
 分かっていましたとも。
 貴方はそーいう御方だって事を。
 でも愚痴りたいんです!」

 ノリはデートに遅れてきた彼氏をなじるがデートは楽しみにしている彼女でしか無い。
 その為、周囲が微笑ましい感じになって……あ。一人『グギギ……』と嫉妬の炎を出してやがる。
 長宗我部元親が軽く手を振り、彼の隊が隊列を崩して休憩に入る。
 一応こちらも警戒していたのだが、ここで警戒を緩めて遊女たちを前にして歓待の宴を始めたり。

「手伝いに来たんですから、さっさと伊予川まで出てきてください」
「なんでお前と同じ苦労を背負い込まないと行けないんだ?」

 地蔵岳城の一室での宴だが、酒を肴に情報交換と取引の席にあっさりと変わる。
 さすが土佐人らしく長宗我部元親は酒に強いので、この絡み酒は芝居である。
 こっちはそれに付き合って酔い潰されても面白くないので、白湯にしていたり。

「決まっているじゃないですか。
 貴方がさっさと出てこないと、うちが奪った領土が使えないんですよ!」

 久万川合戦に勝って、長宗我部軍は一気に伊予川こと重信川の南側まで領地を手にしたのは良かった。
 だが、久万川合戦に長宗我部元親は『勝ち過ぎた』。
 つまり、復興と統治の事までうかつにも頭が回っていなかったのである。

「現地に着いて、久武親信と二人で頭を抱えた私の気持ちがわかりますか!
 目の前にある肥沃な土地から取れる物が土佐に持ってこれないと分かった私の気持ちが!!」

 いい感じで愚痴を言う長宗我部元親。
 この時代の物流は川が、つまり河川交易が担っている。
 浮穴郡は土佐国に河口を持つ仁淀川水系で、長宗我部元親の後詰が比較的楽に送れた背景の一つになっている。
 で、三坂峠を下りた先にある道後平野は重信川水系で、河口は当然ながら伊予国にある訳だ。
 別名、毛利水軍の根拠地の手前とも言う。
 己の従属国の領地を奪っておいて、己の目の前からその収穫物を乗せた船が出てゆくのを眺めるほど毛利水軍もお人好しではない。
 標高七百メートルの三坂峠を山羊等を用いて運ぶなんてのも考えたのだろうが、もちろんコストが釣り合うわけがない。

「だったら諦めて、返還を条件に河野家と和議を結んじまえばいいじゃないか。
 どうせ毛利とはその方向で話を進めていたんだろ?」

「な、何の事だか知りませんね」

 酔ったふりを忘れて一瞬キョドる長宗我部元親。
 図星らしい。
 で、それを蹴ってこっちを焚き付けに来たという事は、毛利の弱体化を掴んだのだろう。
 こっちが欲しい情報を手土産にして基本断る選択肢を潰しているあたり、彼も無能どころではないのだが。
 要するに双方受け入れざるを得ないからの茶番である。
 だから部屋の隅で控える某男の娘の嫉妬の炎が凄いことに。

「こっちに話を振りに来たという事は、予州河野家との交渉に失敗したんだろう。
 まったく動く気がなかったと踏んだがどうだ?」

「……かつて貴方が一条領を乗っ取る際に言った言葉を思い出しましたよ。
 ああなると、ここまで腐るんですね」

 今回の合戦のキーパーソンの一人である予州河野家だが、東予にてその領地を預かる石川道清の名前しか出ていないことに気づいただろうか?
 名前が同名を使いまわしてめんどくさ……げふんげふん。
 予州家当主は河野宗三郎通宣。
 区別する為に河野宗三郎と呼ぶが彼が見事な傀儡で、周囲が腐らせた結果、この決定期にまったく動かなかった。

「何で動く必要がある?
 籠の鳥よろしくおとなしく鳴くだけで、河野本家も毛利も石川道清も大事にしてくれる。
 今更本家を乗っ取る?
 飛ぶのを忘れた籠の鳥を空に放てばどうなるか分かろうに」

 有能だったのだろう。
 傀儡に甘んじ、周囲が望むがままに腐った。
 かくして、旗印が人質となり予州河野家は動きを止める。
 長宗我部元親がここまで出向いて焚き付けに来た理由である。

「毛利の弱体化、かなり進んでいますよ。
 既に毛利水軍が帰りました。
 小早川殿も帰るつもりらしく、河野家内部の立て直しを進めているそうです」

 長宗我部元親が漏らした極秘情報は、大友家の九州出陣と合わせて説得力がある情報だった。
 今ふと気づいたが、佐田岬半島での戦で出て来ていた忽那通著は河野家の水軍大将。
 だとしたら、あの時点で既に撤退の見切りをしていた事になる。
 かなり早い段階で、予州河野家が動かない確信を持っていたのだろう。
 それがわかれば、彼が隠していた最後の情報も察しがつく。

「つまり、予州河野家は毛利に、この場合は河野本家についたという訳だ。
 多分、餌はお前が奪った荏原城」

「……そうやってこっちの手札ばらすの止めてくれませんか?」

 戦国の世は複雑怪奇なり。
 石川道清の選択と板挟みは、規模は違うが今の俺ととても良く似ている。
 河野家分家筋と三好家準一門待遇を得て、双方のパイプを使いながらも軸足はどちらか決めてそこからは外れない。
 彼が守る東予の地は河野家の領地であり、代々河野家に仕える侍や民も多くそれを無下にすることはできなかったのだろう。
 俺がもう少し三好家に頼んで石川道清へ介入させたならばまた違ったのかもしれないが、大規模内紛で天下人の座から降りて勢力再編中の三好家にそれをするのを躊躇った。
 その結果が長宗我部元親のこの愚痴で、俺も甘いと自嘲する。

「真面目な話、やっぱり手仕舞いにするべきですか?」

 長宗我部元親の真顔な質問に、俺は彼の盃に酒を注いで言う。
 そっちの手札が分かったならば、こっちの手札も出すべきだろう。

「俺ならここで手仕舞いにするな。
 豊後からお屋形様率いる大軍が出陣した。
 毛利水軍の撤退は、その後詰に向けた休養と再編が目的だろうよ」 

 府内の大動員はかなり前から行われており、近く九州で大友と毛利の両者で合戦が行われるだろうという事は西国の誰もが知っている事だ。
 その毛利軍を消耗させるという戦略目的の上に、この伊予の戦は行っている。
 毛利軍が九州の大友軍に対応する為に兵を退き出した時点で、その戦略的価値は低下するのだ。
 俺は篠原長秀を呼び、先に帰った田原成親から聞いた大友軍の編成状況を書いた紙を長宗我部元親に手渡す。
 彼経由で毛利元就に流れる事も想定した上で。
 府内を出発した大友軍の陣立は主だった将を含めてこんな感じだった。


先陣   戸次鑑連 肥後衆の一部        三千
      甲斐宗運 由布惟信 清田鎮忠

第二陣  田北鑑重 筑後衆           六千
      蒲池鑑盛 問註所鎮連 星野鑑泰 田尻鑑種

第三陣  吉弘鑑理 豊後衆           八千
      大友義統 吉弘鎮信 臼杵鎮氏 

本陣   大友宗麟 豊後衆と馬廻        七千
      田原親賢 角隈石宗 斎藤鎮実 大内輝弘

後詰   志賀親守 肥後衆           五千
      隈部親永 城親冬 大津山資冬

豊後留守 吉岡長増               四千
      木付鎮秀 志賀鑑隆 佐伯惟教


合計                    三万三千


 これに別働隊が二つある。
 まずは豊前衆と田原家で編成されて門司を牽制する部隊。
 別名九州大内家残党部隊とも言う。 

第一別働隊 田原親宏 豊前衆          一万
       城井長房 佐田隆居 大内義胤 杉隆重 飯田長秀

 で、第二別働隊は、現在毛利と交戦している門司方面の前線部隊。
 俺が下げさせて維持させた香春岳城の将兵等もここに入る。

第二別働隊 朽網鑑康 筑前衆残余 豊前衆の一部 七千
       大鶴鎮信 瓜生貞延 麻生鎮里 多胡辰敬

合計                    一万七千

総合計                     五万


 大友家の本気というよりも大内家の本気と言った方がいい。
 大内家正当後継者の大内領入りは爆発的効果を大内領内にもたらし、万以上の味方を集めることに成功したのである。
 とはいえ、問題が無かった訳ではない。
 案の上大内輝弘と大内義胤との間で指揮権をめぐる確執が発生したのだ。
 こちらが入れ知恵した事で、大内義胤が大内輝弘の方を立てたのだが、大内家残党は大内義胤の方に集まるという笑えない結果に。
 別働隊として門司攻めに向かわせたという笑えない背景があったりするのだが、それは長宗我部元親には言う必要がないが、陣立でばれるだろう。多分。

「凄いですね……この数」

「と、思うだろ?
 からくりがあってな。
 かなりの数、周防・長門から流れてきている」

「え?」

 要するに、爆発が確定になった時点で本拠近くではなく離れた所で爆発させて、ダメージを軽減させる事を選んだのだろう。
 大内義胤が九州に渡った噂は旧大内領内で爆発的に広がっていたのに、九州と中国地方の船便はまったく規制をされなかったらしい。
 大友軍の兵力増強というデメリットを許容しても、周防長門で謀叛を発生させない。
 あくまで想像だが、博多と門司だけでなく九州の放棄まで視野に入れていると見た。
 兵が増えるというのは同時に、それだけ兵糧や物資を大友家が負担する事を意味する。
 この一戦に賭けてじっと準備をしていた大友家にとってもこの予想外の兵の急増は、兵站にかなりの負担をかける事になる。
 門司の方に一万七千という兵を送り込んだのは、門司を落として海路による連絡線を構築したいのと、急増した大内軍残党をここですり潰す目的があるに違いない。

「で、大友殿は何処に入る予定なんです?」

 長宗我部元親の質問に俺は意外そうな顔をして、彼からというか俺以外誰も信じていない一言を言ってのけた。
 こういう時白湯なので酔った振りができないのがちと恥ずかしい。

「え?
 出る気無いよ。俺は」

「あ!?
 貴方伊予の戦でだらだらする事で、出陣を避けるつもりですね!
 だったら、真面目に戦をして伊予川まで出てくださいよ!!」

「それしたら確定で九州に呼ばれるだろうが!
 それがやだから、こうやってだらだらしているって言っているんだよ!!」

「どーせそれしてもしなくても、呼ばれるのは貴方もわかっているんじゃないですか!
 もったいぶらずに教えてください!
 毛利に流して、和議の手土産にしますから!!」

「あの毛利狐がそれを察してない訳無いだろうが!!
 どうせ俺が出て一番面倒な所にやってくると踏んでいるんだから、さっさと手仕舞いの使者送りやがれ!!!」

 こういう掛け合いができるのは実は楽しい。
 なお宴の後に閨に戻ろうとした俺にとてもいい笑顔をした男の娘がこう言った。
 笑顔というのは本来攻撃的なものである。

「ねぇ。ご主人。
 僕が何で怒っているか分かる?」

 なお、男の娘の機嫌をなおすために寝る前の政務の際、側においての頭ナデナデをする事になった。
 これで機嫌が治るのだからちょろいのだが、有明以下女連中もしてほしいと寄ってくるのが実に困る。
久しぶりにランキングに乗ったので、ここまで頑張ってみた。
今度こそ少し休む予定。
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