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修羅の国九州のブラック戦国大名一門にチート転生したけど、周りが詰み過ぎてて史実どおりに討ち死にすらできないかもしれない 作者:北部九州在住

覇王対峙編

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亀背越合戦 あとしまつ

 亀背越合戦に勝利した結果、『畿内の三好健在なり!』を天下に示すことになった。
 人間勝ち馬には乗りたいもので、勝利後に慌てて参陣する国人衆達に俺も野口冬長も苦笑するしか無い。
 摂津・河内・和泉等から一万の兵が集まり、消耗した戦力を回復した三好軍は集まった兵を野口冬長にあずけて摂津方面の押さえに残し、俺と淡輪隆重と福屋隆兼を中心にした一万の兵で空になった大和国に侵攻。
 畠山軍と共に消耗し尽した大和国国人衆にそれを防ぐ力は残っていなかった。
 それだけでなく、背後でこの戦を煽っていた幕臣達も京に逃げ帰っており、信貴山城・龍田城・椿井城を無血開城した後、筒井城が降伏。
 興福寺が使者をこちらに送り敵対の意志はないことを伝えると、最後に残った多聞山城も既に幕府軍が逃げ出した後で無血占拠。
 大和国をほぼ制圧した所で、やっと終戦に向けた交渉が行われる。
 貧乏くじを引かされたのは、すっかり苦労人が板についた細川藤孝である。
 そんな彼からある意味衝撃的かつ納得する報告が俺の耳に飛び込んでくる。

「公方様が京から逃げ出したぁ!?」

「……昨日遅く、『政は副将軍に任せている』と言い残して幕臣を連れて矢島御所に避難を。
 京は三好軍が来ると混乱するも、京都所司代や駐屯している織田兵によってなんとか守っている次第。
 それがしは、京都所司代村井貞勝殿の命によって和議の使者としてやってきた次第で」

 せっかくなのでと茶室での応接となったが、細川藤孝の淡々とした説明に俺も苦笑するしか無い。
 ある意味足利将軍らしいといえばらしい。
 とはいえ、散々戦を煽って負けたらあとは任せたとばかりに逃亡するのだからたちが悪いというか、生き汚いというか。
 こんな姿勢で幕府は生き延び続けてきたのである。

「で、京の織田軍の兵はどれぐらいで?」

「森殿、明智殿、羽柴殿の兵を合わせたら、大友殿の兵よりは多いでしょうな」

 あくまで、多聞山城に居る兵と較べてである。
 河内に残した兵もあるし、三好家必殺奥義である四国からの後詰という手もある。
 それでも足りないならば、紀伊の雑賀衆と根来衆を雇ってしまっても良い。
 つまり、今現在の三好家は攻勢正面になるだろう山崎方面に三万から四万近い兵を動員できるのだ。
 俺が率いる大和国制圧部隊一万を合わせたら、四万から五万。
 足利義昭の逃亡はその嗅覚の鋭さを証明するものである。

「それで、和議ですか」

 同時に、足利義昭の限界をも示している。
 三好長慶の病の事は足利義昭も掴んでいる筈だ。
 四万から五万の大兵力による侵攻作戦となると大名が出てこないといけない訳で、三好長慶が無理なら三好義興が出て来ないとまとまらない。
 三好義興が阿波国で阿波三好家の立て直しをしている現状を知っているならば、三好家の大規模侵攻は無いと分かるはずなのだ。
 だが、足利義昭は逃げた。
 俺が率いる現実の一万の背後に、幻の四万の三好軍を見たのだ。
 史実よりうまく行き過ぎた足利義昭初の挫折なのだろう。
 それでも、己の価値を間違えずに最低限の損切を即座にしてみせるあたり、足利義昭もただの神輿ではない。

「ええ。
 織田殿からは早馬にて『任せる』と。
 それで、羽柴殿と明智殿からは『大友殿に繋ぎを取れ』という訳で」

 逆に俺を知っている超チート連中は、俺が三好軍を動かしている事を即座に理解してこうして繋ぎを取りに来やがった。
 俺がそう遠くない未来に九州に帰らないといけない事を知っているからだ。
 そして、その時には三好長慶の命が燃え尽きているだろうという事まで理解した上で。
 亀背越合戦というのは三好軍の戦術的勝利であって、戦略的勝利に繋がらないという事を理解して京を死守している。
 俺が今織田家に居たとしてもこの判断はできないだろうな。
 多分足利義昭と一緒に逃げている。
 そう考えると、急に足利義昭に親近感が持てた。

「大友殿。
 何がおかしいので?」

 細川藤孝の声に我に返る。
 せっかく風流人がやってきたのだ。
 少し趣の違うもてなしをしよう。

「お気になさらず。
 大陸よりめずらしき茶が手に入りましてな。
 それを披露しようかと」

「おお。
 それは楽しみですな」

 めずらしき茶というのは、日向彦太郎から仕入れた烏龍茶である。
 これはこれでと細川藤孝が堪能したのは言うまでもない。
 話がそれた。
 現状四国へ向けて撤退を意図している三好家はこれ以上の領土は必要がない。
 一方、東の武田家と緊張状態にある織田家はこの畿内方面で戦火を起こす余裕がない。
 俺と細川藤孝の話し合いがそのまま三好と織田の手打ちに、亀背越合戦のあとしまつになるのを双方とも理解しているからのこの余裕である。
 別名、勝ちの押し付けあいとも言う。

「大友殿。
 公方様がおっしゃるには、大和国守護代職を推挙して欲しいとの事で」

 もちろん公方様こと足利義昭はそんな事を言っていない。
 要するに、現在占拠中の大和国を三好家にやるという現状追認の言葉である。
 それに対して、俺はひとまずそれを保留して別の所から攻めかかる。

「細川殿。
 畠山殿が討死した今、管領職はどうなっているので?」

「まだ新任は決まっていないと……
 そういう事ですな」

「公方様がお逃げになられても、管領がいたら幕府は機能していたと思うのですよ」

 三好政権の重要な神輿だった細川京兆家の処遇を良い機会だからと片付けてしまう。
 天下を握るにはこの神輿は大事だったが、天下を狙わずに四国に逃げる際にかえって天下に目がくらみかねない。
 処理して押し付けてしまおう。
 細川藤孝の顔が露骨にいやな顔になる。
 超チート故にこの後の流れが読めたからだ。

「管領が京で働くならば、御一門がその幕下につくのは当然の理。
 最初細川藤賢殿を考えたが、和泉国守護が大和国守護代に格落ちするのも理に合わず。
 ならば、別の御方を御一門より抜擢するしかありませぬな」

 ぐーぜんだねー。
 目の前の御方、何でか細川姓なんだってー。

「大和国守護代として大和国一国ご差配お願いできますな?」

 これ以上無い貧乏くじだが、それを乗り切れば文字通り一国一城の主として成り上がれる。
 大和国の石高はおよそ四十四万石。
 一躍大大名の仲間入りなのだが、そう話はうまく行く訳もなく。
 南都寺院をはじめとした寺社荘園の複雑怪奇な土地争いに、多くの国人衆が古い名家というのもあって難治だったりするのだ。
 その実戦力は亀背越合戦であらかた消え去ったが、裏返すと統治人員が消滅している事を意味する。

「そういえば……」

 だからこそ、宇佐山城を押し付けた時のように飴を用意する必要がある。
 ついでに、足利義昭の周りに居た幕臣を引き抜く格好の手段として。

「公方様が勝ち戦と思って集めた侍たちの処遇、まだ決まっておられぬようで。
 引き取ってしまわれたらいかがでしょうか?
 こちらも、大和国安定の為に、長くそれがしの下で働いていた島清興を帰しましょう」

 筒井順慶討死の報告は島清興の元にも届いていた。
 こちらも詫び状を送ったが、『敵味方に分かれた戦の宿命。お気になさらず結構』という返事を頂いている。
 とはいえ、こちらの気が収まらないので、彼と彼の郎党を大和に帰すことにしたのだ。
 その事で感謝されたのは言うまでもない。
 細川藤孝がため息をつく。
 勝者は俺であるのだから、実質的な命令に逆らえる訳がないのだ。

「お引き受けしましょう。
 ついでに、三好家について追われた方々に守護と守護代に帰って頂きましょう」

 後日談になるが、和議と同時に畿内守護の再編成が京都所司代を通じて行われた。
 細川昭元の管領復帰と三好派武将の守護・守護代復帰である。


 山城国 守護  細川昭元
     守護代 松永久秀

 摂津国 守護  三好長慶
     守護代 内藤宗勝

 河内国 守護  細川藤賢
     守護代 池田勝正

 和泉国 守護  野口冬長
     守護代 淡輪隆重

 大和国 守護代 細川藤孝

 淡路国 守護  安宅冬康
     守護代 船越景直

 丹後国 守護  荒木村重

 讃岐国 守護  十河重存
     守護代 香川之景

 阿波国 守護  三好義興
     守護代 三好正安


 三好家はあえて実ではなく名を取った。
 次世代に向けての体制固めの一環として箔をつけておく為だ。
 その一方で抜擢人事と懲罰人事が発生している。
 抜擢人事は和泉国守護代になった淡輪隆重。
 働いた功に報いた形で、彼はその場にて泣き崩れて俺を大いに狼狽えさせたのは笑い話である。
 懲罰人事は河内国守護代だった伊丹親興で、なまじ三好家の内情を知っていたので国人衆らしく勝ち負け両方に張って参戦を病と称して躊躇ったのである。
 まさかこんな大勝利になるとは思っていなかったので、合戦後に慌てて参陣してきたが後の祭りであり、河内国守護代職を池田勝正に譲る結果となった。
 朝廷絡みでも動きがあった。
 三好派で堺に落ち延びていた二条家が京に復帰。
 一条家では俺と一条兼定が近いという理由で、子の居ない一条内基の養子という形で一条兼定の息子万千代を据えることに成功したのである。
 これにともなって、一条兼定は権中納言に昇進している。
 そのついでなのだが、ひっそりと官位が昇進していた。
 これまで正六位主計助だったのだが、従五位上主計頭である。
 動いたのは二条家と一条家で俺へのお礼だそうで、幕府と織田家も俺がそれで懐柔できるなら安いと黙認。
 もちろん三好家が文句を言う訳もなく、あっさりと殿上人の末端に名を連ねることになった。



 その一方で亀背越合戦の勝利は畿内を、いや天下を急激に変えた。
 あちこちの火種に炎上して一気に大乱になだれこんでいった。
 まずは紀伊。
 畠山家は完全にその力を失い、家は残ったが国人衆並に落ちぶれていた。
 その状況を野心溢れてる相良頼貞が見逃す訳がなく乱入し、うまく紀伊領内に勢力を作り上げる事に成功したのである。
 彼はこのままだと畿内の台風の目になるかもしれない。
 一方、東でも動きがあった。
 この亀背越合戦は、畠山・幕府・『織田』連合軍が三好家に大敗した戦いとして全国に拡散してしまっていた。
 つまり、織田領を狙う武田家にとって織田家の大敗はまたとないチャンスという訳で、二万の兵で美濃国に侵攻。
 だが、待ち受けていた織田信長は四万の兵で迎撃しようとした時、その急報が畿内に激震を与えた。

「浅井長政謀叛!
 武田側について、織田領内を攻撃中!!」

 武田信玄渾身の謀略、浅井家寝返りが炸裂する。
 俺も想定していない事態に狼狽えたが、情報が入ってくるとその背景が見えてきた。
 まずは領内を織田家に囲まれてこれ以上の拡張ができなくなったというのがある。
 浅井家も若狭武田家を狙っていたのだが、先に羽柴秀吉が食べてしまった為に揉めていたというのは後で知った事。
 次に、織田信長が行った一向宗殲滅戦で浅井領は逃亡先の一つになっており、家中に反織田感情が蔓延していたという事。
 北陸一向一揆や長島一向一揆の殲滅を狙う織田信長と対立する石山本願寺は、その中間点に位置する浅井家にかなり工作をしていたみたいでそれが実ったという事だろう。
 なお、石山本願寺と武田家はそれぞれの嫁の縁で義兄弟の関係にある事も見逃せない。
 最後は、細川藤孝が大和国多聞山城に移ったので旧領宇佐山城を譲った幕臣一色義輔こと斎藤龍興の暗躍だ。
 彼が大津の地を治める宇佐山城を手に入れた事で、琵琶湖から淀川を使って浅井家と石山本願寺を繋げて浅井家の自制の紐を断ち切ったのだ。 
 急激に拡大した織田家はこの動きについて行けなかった。
 浅井軍は羽柴秀吉の保護下に入っていた若狭武田家を攻撃。
 これが、『浅井長政謀叛!』として伝わると、加賀一向一揆軍が南下。
 越前国境を守っていた坂井政尚は吉崎御坊跡にて一向一揆勢に城を囲まれて降伏し、越前領内は大混乱に陥った。
 長島本願寺も活発に動いて後方を荒らし、武田軍の勝利と思われたが織田信長は何とか追い返す事に成功したらしい。
 決め手は、俺が天下を望まない事を知って和議成立後に即座に領地に帰した、羽柴秀吉と明智光秀の二将だったそうな。
 浅井軍が若狭を攻めるギリギリで羽柴秀吉と明智光秀は領地の越前に帰り、浅井軍と一向一揆の挟撃を乗り切ったのである。
 一方織田信長は、これだけ領土が寸断されながらも優先順位を間違えなかった。
 矢島御所に逃げ込んだ足利義昭を留め置いて神輿を確保したまま、美濃領内を荒らす武田軍を睨みながら、岐阜城にて軍を維持しつつ尾張と美濃の連絡線を確保し続けた。
 決戦を望む武田信玄は東美濃と三河を荒らすが、ついに決戦は起きずに兵糧の切れた武田軍は岩村城や奥三河を領国化して撤退したのである。



 もちろん、この火種は九州でも派手に燃え盛っている。
 亀背越合戦から一月後。
 その報告が九州の地から俺のもとに届けられる。

「筑前国休松にて大友軍と秋月軍が戦い、お味方が敗北した模様!」
「肥後国宇土にて大友軍と菊池軍が戦い、お味方が勝利した模様!」
「筑前国糸島にて大友軍と竜造寺軍が戦い、お味方が大敗した模様!」


「毛利軍数万が筑前国芦屋に上陸!
 各地の国人衆が反大友で蜂起し、筑前・豊前は騒乱状態に!!!」


 ついに来た。
 毛利軍九州上陸。
 それは俺が畿内から去る事を意味していた。 
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