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修羅の国九州のブラック戦国大名一門にチート転生したけど、周りが詰み過ぎてて史実どおりに討ち死にすらできないかもしれない  作者: 二日市とふろう (旧名:北部九州在住)
第二次三好包囲網編 永禄十二年(1569年) 秋

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畿内の作法 その3

 足利義昭が将軍についてから畿内の守護・守護代がごっそりと居なくなったが、その穴埋めが行われる。

 まず三好家が撤退した丹波守護に一色藤長を、守護代に荻野直正を任命。

 一色藤長は撤退した内藤宗勝の領地を押さえて、幕府影響下に置くことに成功する。

 大和国は守護代筒井順慶の開城命に、防衛の難しさから多聞山城が山城国木津城と共に開城し退去。

 この二城は幕府直轄地として多聞山城は仁木義政に、木津城は三淵藤英に与えられた。

 多聞山城城代福屋隆兼は信貴山城へ帰り、木津城を守っていた城主三好政康は阿波に移り、再建途上の阿波三好家を助けることになる。

 ここまでは、ある意味損切できる線で三好家も幕府の顔を立てたとも言えるが、そこから先については断固拒否するしかない。

 まず、摂津国守護に表舞台から遠ざかっていた六角義賢を抜擢。

 その下の守護代に和田惟政を任命して三好家にこれ以上ない形で喧嘩を売る。

 もちろん三好家が彼らの入国を認める訳もなく、京の二条城にて幕政に関わる日々を送っているという。

 で、新管領となった畠山高政も負けてはない。 

 具体的には彼に和泉国・河内国守護が与えられ、紀伊国は畠山政尚、和泉国は畠山昭高の兄弟に任せた上で、畠山高政は河内国高屋城の返還を要求。

 これに対して高屋城を守る野口冬長はこれを拒否。

 緊張が高まりつつあった。


「和泉国守護代家臣遊佐信教である!

 公方様の命により、この城を貰い受ける!

 早々に城を明け渡してもらいたい!!」


 岸和田城にて将軍と管領と守護の花押が書かれた和泉国守護代の書状を見せながら、畠山家家臣である遊佐信教が高圧的に言ってくる。

 この手の喧嘩は舐められたら終わりであるが、開戦の引き金を引くのもためらいがある。

 という訳で、俺は遊佐信教に対して白々しく煙に巻いてみる。


「ほほう。

 これは公方様の命か。

 この事は副将軍はご存知なのかな?」


「副将軍は関係がないことだ!」


 こちらの飄々とした物言いに引っかかった遊佐信教はあっさりと向こうの内情を暴露する。

 案の定と言うか、三好家という敵がいるのに持たなかったのかというか、新政権内部の不協和音の響きであった。

 織田信長の多大な功績があったとはいえ、畠山高政も名門畠山家を統べる意地と野心がある。

 織田信長に対抗するためにも、失った領地の回復は急務に違いない。

 で、織田信長の事だ。

 このあたり黙認しているのだろう。

 畠山と三好が潰しあえば、必然的に織田の力が増すからだ。

 とはいえ、もう一つ俺は考えている事がある。


「関係がない!?

 公方様が室町殿御父と慕い副将軍について幕政を支えているお方が関係がないとおっしゃるか!」


 足利義昭が暴走している可能性だ。

 史実に比べて足利義昭の境遇が良いから、将軍の力そのものを過信している可能性がある。

 そうなった時に足利義昭が考えるのは、あまりに強力な織田信長を牽制する為に畠山高政の地位を引き上げる。

 織田信長にとって、三好家と畠山家が連立して足利義昭を担がれる事が一番厄介だったのだろうが、三好家が力を保持したまま政権を追われたので、足利義昭や畠山高政がそのプランを取らないことを確信しているのだろう。

 

「遊佐殿。

 それがしとて幕府を守り奉ってきた者の一人として、公方様の命に従うのは吝かではない。

 だが、仮にも公方様の命と申すのならば、公方様と副将軍と管領のお三方の花押を持ってくるのが筋ではなかろうか?

 少なくとも、三好亜相様はそのあたりの手を抜きはいたしませなんだぞ!

 この魑魅魍魎が跋扈する畿内において、公方様が滞りなく治める為にも、重ねて三者の花押を頂きたい」


 こちらの気迫に遊佐信教がたじろぐ。

 向こうからすると、散々畠山の邪魔をしてきた怨敵みたいなものである。

 あとは勝手に向こうのイメージが仕事をしてくれるだろう。


「僅かな手抜きで戦になることもあり申す。

 遊佐殿。

 重ねて申し上げるが、三者の花押と引き換えにこの城明け渡しましょうぞ」


「わ、分かった。

 その言葉信じようぞ」


 向こうからすれば戦のきっかけ作りなのだろうが、書状一つで城が手に入るのだ。

 ならばここで喧嘩する必要はないという訳で遊佐信教は俺の前から去っていった。


「本当に城を明け渡すおつもりで?」


 遊佐信教が帰った後に開かれた評定にて島清興が怪訝な目で尋ねる。

 俺は彼の視線に笑顔を見せながら、わざとらしく肩をすくめた。


「まぁ、半分は本気さ。

 もっとも、戦になるだろうがな」


「と、言いますと?」


 皆を代表して大鶴宗秋が俺に尋ねる。

 俺の家臣たちもだんだん慣れたもので、こういう時の俺の物言いには何か裏があるのをある程度察してくれているのがありがたい。


「副将軍様は多分花押を書いてこないよ。

 で、先に高屋城攻めが発生する。

 それが理由さ」


 畠山と三好が潰し合ってくれるのだから、それを織田信長は止める必要がない。

 適当にあしらいながら、畠山の暴発を待つつもりなのだろう。


「その副将軍ですが、今は岐阜に帰られているはず。

 遊佐殿が戻ってくるのはしばらくかかるでしょうな」


 田中成政が織田信長の近況を告げる。

 織田信長は京から本拠地である岐阜に帰って、中央から一歩引いた形をアピールしている。

 織田信長の視点は今北陸にあった。

 上杉家と組んでの加賀一向一揆殲滅である。

 加賀一向一揆勢の抵抗が激しく、遅々として進んでいない。

 加賀攻めを任された坂井政尚は越前国境の吉崎御坊跡に城を建てて攻め込む準備をしていたが、これが加賀一向一揆勢の逆鱗に触れた。

 本願寺蓮如によって開かれた聖地を土足で踏みにじる行為に体制を立て直した一向一揆勢が激しく攻撃をしかけて、羽柴秀吉や明智光秀の後詰めでようやく追い払ったという。

 国境がこのような状況なので、織田信長は背後から一揆勢を叩くために能登国に目をつけた。

 能登国は畠山家の領国だったが、大名だった畠山義綱が重臣達のクーデターによって父畠山義続共々追放されてしまい、嫁の実家だった六角義賢の所に厄介になっていたのである。

 これに目をつけて彼らの帰還を支援したのである。

 織田信長の支援を受けた畠山義綱と畠山義続は能登に帰還して重臣達と激しく争っているが、能登を掌握したという報告はまだ聞こえてきていない。 

 織田信長の動きに気づかず、足利義昭とその幕臣達が調子に乗って、畠山高政を焚き付けた。

 田中成政の言葉を聞いて俺はそんな事を思う。

 田原成親が今度は言葉を発した。


「今の時点で我らに忠誠を誓った家は三十五郷士中二十六家。

 新守護に忠誠を誓ったのは七家となっております。

 あと、蛇谷城の相良頼貞は新守護に忠誠を誓ったようで」


 なるほど。

 思った以上に、俺の方についている国人衆が多い。

 寺田宗清が逃亡したために奪った蛇谷城の城主相良頼貞が畠山家に忠誠を誓ったが、これは仕方のないことだ。

 紀伊国境沿いでこちらも後詰を送れない以上、独力の生き残りを考えたのだろう。

 国人衆の支持を得ているという事は、統治についてある程度丸投げできる代わりに、彼らの兵に直接介入する事ができない事を意味する。

 吉弘鎮理が淡々と報告した。


「こちらについた国衆は沼間清成と淡輪隆重がまとめて兵を指揮するとの事」


 その意気込みは嬉しいのだが、吉弘鎮理の報告に気づいた点は無いだろうか?

 彼が兵数を言っていない事に。

 吉弘鎮理が言いたくても、そもそも国人衆の動員をまとめる沼間清成と淡輪隆重ですらどれぐらいの兵が集まるのか見当がつかないのだ。

 これが国人衆の連合政権である守護大名のある意味限界と言えよう。

 前の戦で数千は出してくれたから、それぐらいは出してくれると当てにすると、痛い目を見ることもあるので注意。


「どっちにしろ、戦は近いぞ。

 皆、戦準備を進めてくれ。

 島清興がまとめていた岸和田城の兵を再編する」


「かしこまりました。殿」


 俺の言葉に大鶴宗秋以下が平伏した上で再編作業に入る。

 元々の岸和田城兵や俺が南予から連れてきた兵に、樫井合戦や石津川合戦でこちらについたり残った兵が岸和田城に駐屯していた。

 それを戦力化する為に、諸将に兵を割り振るのだ。

 で、こうなった。



 総大将   大友鎮成  (有明・井筒女之助・小少将・戸次政千代・田中成政・篠原長秀・篠原右近)

 馬廻    佐伯鎮忠  五百


 陣代    大鶴宗秋   千


 侍大将   吉弘鎮理  五百

       小野鎮幸  五百


 足軽大将  白井胤治  五百

       鹿子木鎮有 五百

       内空閑鎮房 五百

       田原成親  五百

 

 岸和田城代 島清興    千

 細川勢   細川藤賢  五百

 島津勢   島津勝久  五百


 和泉国国衆 沼間清成  数千

       淡輪隆重  数千


 合計          六千五百+数千



 郎党が多くて精鋭と言って良い南予組に畿内の兵を三対二で混ぜ合わせて戦力化する。

 大鶴宗秋の兵と島清興の岸和田城守備隊は総予備の扱いである。

 島津勢と細川勢は堺に駐屯してもらっている。

 俺の権力の源泉は銭であり、堺の商人たちの支持は絶対に守らないといけないからだ。

 替わりに俺の周りの危険度が少し上がっている。

 果心が孕んだ事で岸和田城に留まる事になり、足軽大将として前に出した田原成親の替わりに篠原長秀と篠原右近の二人を入れたからだ。

 痴情のもつれで殺されるなんて事はやりたくないが、色に狂った小少将は抱かれる事でしか己の存在を証明できないし、三好家から見て謀反人一族である篠原長秀と篠原右近の二人は畿内に居場所がない。

 せめて畿内にいる間は守ってやる必要があった。

 とりあえず戸次政千代を入れて牽制はさせるが、チート忍者である果心の居ない穴は思った以上に大きい。


「そうだ。

 殿に客人が来ておりますよ」


 評定が終わった後に田中成政が思い出したように報告する。

 この男の緩急は知っているから、おそらく悪い報告ではない。


「誰だ?」


「柳生宗厳殿だそうで」


 こういう気の使い方というか、足りない所に手がとどく報告を持ってくるあたり、田中成政は本当に当たりだったと思う。

 少し待たせることになったが、田中成政を連れて部屋に入ると懐かしい顔が笑って出迎えてくれた。


「お久しぶりでございます」


「久しいな。

 元気にしていたか?」


 両手を広げて歓迎する。

 柳生宗厳も笑って俺の歓迎を喜んだ。


「おかげさまで。

 剣の修業はなされておりますか?」


「残念ながら、大名なんぞになってしまって素振りだけだ。

 大名なんぞなるものではないよ。

 後の方は?」


 柳生宗厳の隣りにいた男に声をかける。

 笑顔を見せて自己紹介をするのに立ち合いに似た空気が流れる。


「お初にお目にかかります。

 上泉信綱と申します」


 多分と思っていたが、剣豪の後に居たのは剣聖だった。

 礼儀正しく挨拶してくれるが、明らかに俺のことを図っているのだろう。

 聞けば、柳生宗厳が剣を見せようと上野国に出向いた時、上泉信綱が仕えていた長野家は武田軍の猛攻を受けていたそうだ。

 柳生宗厳も上泉信綱と共に剣を振るって防戦したが多勢に無勢となって長野家の居城箕輪城は落城し、長野家は滅亡する事になった。

 で、弟子や一族と共になんとか逃れた彼は畿内にまで戻ってきたという事らしい。


「三好様の所で厄介になろうと思っていたのですが、こちらにと松永様が勧めましてな」


 柳生宗厳の一言に背筋に冷たいものが走る。

 これは果心の妊娠がバレたと踏んでいいだろう。

 恐るべし松永久秀。

 そして、その意味に気づかないほど俺も馬鹿ではない。


 畿内の政変を彩ってきた暗殺。

 その対象に俺も選ばれているという事を。

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