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修羅の国九州のブラック戦国大名一門にチート転生したけど、周りが詰み過ぎてて史実どおりに討ち死にすらできないかもしれない 作者:北部九州在住

第二次三好包囲網編 永禄十二年(1569年) 秋

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畿内の作法 その4

 俺が率いる大友軍が岸和田城を出陣する。
 兵数は四千五百。
 目的地は三好長慶の居る飯盛山城。
 名目は、娘扱いになっている果心の妊娠報告である。
 あくまでこれらの兵は護衛ということにしているが、その実態は風雲急を告げる高屋城の後詰に見えるようにという訳だ。
 岸和田城には島清興を残して紀伊方面を警戒させているが、来る可能性は低いと俺は踏んでいた。

「その理由お聞きしてもよろしいので?」

 出陣前の評定で小野鎮幸が尋ねてきたので、俺はその理由を告げた。
 地図の畠山家勢力圏を意識させながら、高屋城を指でつつく。

「この城は紀伊に近すぎる。
 だから、前の戦みたいに各個撃破されかねない。
 今回畠山家の狙いは河内国高屋城だ。
 ここを取られると、この岸和田城は挟まれて動けなくなる。
 織田が京を押さえて攻撃ロが限られるからこそ、全力でこの城を落としに来るぞ」

「紀伊からの侵攻は考えなくてもいいと?」

 吉弘鎮理の問いかけに、軽く首を横に振る。
 戦略的に考えないくて良いのと、現実の脅威はまた別だからだ。

「足止めの為に攻めて来ることはあるだろうが、本気じゃない。
 この城に篭っていれば問題はないさ。
 島清興。
 また城を守る事になるが頼む」

「かしこまりました」

 島清興が頭を下げる。
 目立たぬ仕事だが、そつなくこなす島清興を俺を含めた諸将は敬意を払っている。
 南予で雇った将との交流も行われており、今の所問題はない。

「畠山は大和国から攻めてくるはずだ。
 で、大和国国人衆を合わせた二万の兵で襲ってくるだろう。
 高屋城と信貴山城の間にある生駒山地と大和川で我らは防戦する。
 他に河内国と摂津国から後詰が来るだろうが……」

 ここで言い淀む。
 正直、その言い淀んだ理由を語るかどうか迷ったが、意を決してそれを告げた。

「京を押さえる織田家がどう出るか分からぬ。
 だから、摂津の後詰は少なくなるかもしれん。
 同数は持ってこれるだろうが、それ以上は厳しいだろうな」

 河内国高屋城に集まっている兵力は、野口冬長と伊丹親興を中心におよそ六千。
 信貴山城には本多正行と福屋隆兼の兵が千しか居ない。
 大和国国人衆の掌握に失敗し、彼らと小競り合いをし続けて消耗した結果である。
 動員をかければ数倍の兵を集められるだろうが、そうなったら今度は国人衆の離反を招く。
 三好家ほどの大大名だったら、この負担を他国国衆に交代させて休ませることもできたが、第二次三好包囲網で領土全域が疲弊しておりその回復の時間が必要だった。
 ぶっちゃけると、三好軍の中で最も負担の少ない軍勢が俺達だったりする。
 畠山高政の強引とも思える態度もあながち間違いではないという訳だ。

「二万対二万。
 大戦ですな」

 小野鎮幸が楽しそうに言ってのける。
 彼はこういう戦に参加したいからこそこんな所に来ているのだ。
 分からないではない。

「でしたら、まっすぐ高屋城に入られた方がよろしいのでは?」

 大鶴宗秋の質問に俺は苦笑する。
 半分の冗談と半分の本気を混ぜた声でその理由を告げた。

「親に孫ができた報告ぐらいはするものだろう?
 それを口実に、誰がこの戦の指揮をとるのか確認せぬと負けるからな」

 ただでさえこの戦、

 野口冬長 三好家一門
 松永久秀 三好家準一門
 大友鎮成 三好家準一門扱い

という序列に色々とややこしい連中が揃っている。
 これで摂津国からの後詰めに三好一族が来た日には誰が総大将になるかで揉めかねないのだ。
 で、大名である三好長慶からその辺りの確認を取っておけば、少なくとも指揮系統は確保できるという訳だ。 
 そんな感じで出陣しようとした訳なんだが……

「ご主人。
 なんか城門前でお侍が待っているけど。
 『三好亜相殿の元に行くなら、ついて行く』とか言っているけどどうする?」

 戦時じゃないのを良い事に、堂々と城門前にやってきた傾奇者こと前田慶次に頭を抱えながら岸和田城を出発したのが一昨日である。
 完全武装の戦装束の我々に対して、鎧も着ていない傾奇者衣装で馬上でタバコを吸いながらついてくる前田慶次は実に様になる。
 ちと見とれてしまうが、ぶぶ漬けでも食べさせて追い返してしまおう。

「大友殿の兵は精強ですなぁ。
 さすが、数多くの戦を戦っただけある」

 『帰れ』と言う前に褒められる。
 畜生。
 機先を制された。

「それほどでもない。
 こちらにも聞こえる副将軍殿の戦いぶりに比べればとてもとても」

 適当なおべんちゃらで誤魔化そうとしたら、前田慶次は寂しそうに嘲笑う。
 少なくともこの男腹芸なんぞ考えなくても良いのは救いだろう。

「そうは言うが、我らは尾張で戦った連中の多くを越前で使い切ってしもうた。
 大殿はその再編に頭を抱えているだろうよ」

 おい。
 さらりと重要情報が出てきたがいいのか?
 顔を引き攣らせた俺は更に探りを入れる。

「そういう話は、できるだけ控えるのがよろしいかと」

「敵に回るからと?
 安心せよ。
 三好と畠山が潰し合うのを織田は邪魔をせぬよ」

 なんだろう。このフリーダムさは。
 まぁ、こんなことしているから傾奇者として歴史に名が残るんだろうが。
 こっちの内心なんて気にもせずに、前田慶次は兵たちを褒める。

「長槍が多いな。
 よく揃えられたもんだ。
 鉄砲は堺を前にしているから、あるのは当然か。
 馬を随分買い漁ったんだな」

 的確に見ている所は見ているので追い払いたい所だが、追い払って何か因縁つけられての開戦理由なんてまっぴら御免である。
 話をそらすが、急遽増えた兵たちの戦力化で一番頭を抱えたのは実はこの装備だったりする。
 ゲームだと兵を雇って終わりなのだが、装備の均一化と編制で戦力が大幅に変わるからだ。
 岸和田城に居た兵をそれぞれの武将に配属して練度の均一化を図ったのは前に言ったと思う。
 で、その均一化は統一行動ができる代償に兵の練度を下げるとも言うのだ。
 それを補うために、長槍で固めさせた。
 これで横槍を喰らわない限り、正面の敵は追い払えるからだ。
 鉄砲と弓の飛び道具は、持っている連中を白井胤治に預けて一元管理させた。
 飛び道具は集中運用によって格段に破壊力が増すからだ。
 今回一隊を持たせることになった田原成親には荷駄隊を任せている。
 で、実は一番の目玉である騎馬だが、堺や岸和田城周辺から三百頭ばかり一気に買い入れる。
 畿内の馬は戦続きで結構鉄砲に慣れている馬が多かったのが助かった。
 侍連中に馬を渡して、二百頭近くは馬廻に配備し臨時の騎馬隊にする。
 指揮をとる侍連中が馬に乗ると、馬の分高い所から指揮ができるので統制が楽になるメリットと狙われやすくなるデメリットがある。
 膨れ上がった兵の指揮に四苦八苦した編制であるというのは多分前田慶次は見抜いているのだろう。

「まぁ、色々としているのですよ。
 遠く畿内で戦うための知恵というやつで」

 俺が適当に肩をすくめると、前田慶次はニヤリと笑う。
 こういう不敵な笑みも様になるあたり、彼もまた時代に愛された将なのだろう。
 なお、俺の隣で柳生宗厳と上泉信綱がガン睨みしているのだが、ちっとも気にしていねぇ。

「おお。そうだ。
 忘れておったわ。
 堺でお主を狙っておる痴れ者の話を聞いたのだが、買うか?」

 ダメだ。
 完全に場を制圧してやがる。
 俺は諦め顔でため息をついた。

「高くつきそうだが買おう。
 いくらだ?」

「そうだな……
 一度京に来てくれないか?
 大殿が会いたがっている」

 引き抜きか、それに類することだろう。
 会っただけでも下手すれば三好家中に不信感を持たれかねないが、ここは身の安全を買う。

「いいだろう。
 飯盛山城に寄ったらそのまま京に上ってやる。
 あとは適当に場を作ってくれ。
 で、その痴れ者の話を早く」

「ああ。
 あいにく裏は取れてないが、雇った忍の名は分かっている。
 城戸弥左衛門。
 伊賀の中忍で鉄砲の名手だそうだ」

 前田慶次の情報によって俺周辺の警戒は最高潮に達している。
 なお今回三好長慶との会見に連れてこざるを得なかった果心ともう諦めたがついてくる有明達女衆にはそれぞれ雇っている忍をあらかた張り付けた。
 俺本人は柳生宗厳と上泉信綱と前田慶次が居るので、近づいてくる馬鹿は多分防げるだろう。

「ご主人。
 僕のこと忘れていない?」

「あの三人突破できるなら思い出してやる」

「ひどーい!」

 どこからみてもちっぱい遊女にしか見えない井筒女之助の髪をわしわししながら、警戒しつつの道中が続く。
 全隊がいつ来るか分からない襲撃者に警戒しながらなので行軍は必然的に遅くなる。
 一隊を除いて。

「吉弘鎮理隊、飯盛山城に入城しました。
 城の兵が警護につくそうです」

 篠原長秀の報告に前田慶次が口笛を吹く。
 大将が狙われていると知ったら動揺するのが普通なのだ。
 にも関わらず、己の仕事をきちんと理解してそれを予定通りに完遂してみせた。
 それだけ将兵の練度が高いのと同時に、大将から信頼されていると見ているんだろうなぁ。
 まあ、彼への信頼は俺にはある。
 彼に俺への信頼があるかどうかは知らないが。

「ご主人。
 襲ってこなかったね」

「前の時と違って、相手が中忍ってのが大きい。
 つまり、複数の忍で襲ってくるだろうよ。
 で、それをされると根比べになる」

 襲撃者が複数になるだけで、途端に防衛側の難易度が上がる。
 いつ、何処で襲うかの選択肢が格段に増えるからだ。
 ぶっちゃけると、『襲う』という情報を流して他の動きを拘束する事が目的とも考えられる訳で。
 畿内の戦とはこんな虚実入り混じった何かを相手にしないといけないのである。
 そんな事を考えながら、俺は前田慶次に礼を述べた。

「ここまでついてきてくださり感謝いたしますぞ。
 おかげで襲われずに済み申した」

「気になさるな。
 こちらも大殿に良い報告ができるというもの。
 京に来られるのを楽しみにしておりますぞ」

 一声かけて悠々と前田慶次は去ってゆく。
 その飄々ぶりに憧れみたいなものをいだいて見ていたら、いつの間にか来ていた有明に足をつねられる。

「いて」

「あんな風に飄々となんて思ったでしょ。
 駄目だからね」

 で、少しむくれた顔を見せた後で、有明は笑顔を俺に見せてくれるのだ。
 これも何度も繰り返された俺の日常の一つである。

「ついてゆくって決めているんだから。
 私も連れていきなさいよ」

 ふむと考えるふりをしながらふといたずらを思いつく。
 有明の手を取って、一気に馬に乗せたのだ。
 こちらの意図を察してくれる男の娘が居て、有明は見事俺の馬上に。

「ちょ!
 ちょっと!」

「ついてくるんだろう。
 だったら、こっちの方が楽だ」

「……馬鹿……」

 赤くなって恥ずかしそうにうつむく有明をからかいながら、俺達は飯盛山城に入城した。
 最後まで襲撃は無かったが、道中の安全確保の為に数日飯盛山城に滞在する羽目になる。
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