表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
修羅の国九州のブラック戦国大名一門にチート転生したけど、周りが詰み過ぎてて史実どおりに討ち死にすらできないかもしれない  作者: 二日市とふろう (旧名:北部九州在住)
肥前大乱編 永禄七年(1564年) 冬

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

113/257

肥前大乱 その3

この話の作業用BGM『犬神家の一族』愛のバラード。

 竜造寺軍大勝利の確定情報が芦屋に居た俺の所に飛び込んだ時、それに巻き込まれる羽目になった。

 市場イベント、マネーの勝ち馬乗りである。


「博多向けの米が飛ぶように売れるぞ!

 蔵の米を全部持って来い!」


「買いだ!

 買いだ!!

 米だけなく、麦も、稗と粟も抑えろ!

 しばらくは飛ぶように売れるぞ!!」


「戦の荷止めはしばらく続くぞ!

 農村に走って買えるだけ買ってこい!!!」


 大消費地商都博多の食糧事情は、九州各地から船で食料を運びこむ事で成り立っている。

 そして、それが成立する大きな理由の一つに、筑後川という大河から育まれた筑後平野という豊かな穀倉地帯を背後に抱えている事が大きい。

 筑後平野でとれた食料は、そのまま河口から有明海に出て長崎半島を回って、船で博多に運ばれるのだ。

 つまり、この食料運搬航路上で現在合戦が行われる訳で、竜造寺の勝利による戦の長期化を見越した商人たちが食料の買い占めに走っているのだった。

 間の悪いことに、現在中国地方でも毛利家による尼子攻めが行われており、その兵糧確保に博多は一役買っていた。

 博多より東にある芦屋で博多向けの取引が行われているのは、博多が巨大取引市場として機能している証拠である。


「お久しぶりでございます。御曹司」


 市場イベントと共に現れたのが柳川調信。

 商人兼武将みたいな男だから、こういう時にやってくるのはある意味わかりやすいといえばわかりやすい。


「久しいな。

 猫城に戻って、城下の発展ぶりを確認したかったがその余裕もなさそうだ。

 どうなっている?」


「飢えることは無いでしょうが、高止まりはするでしょうな。

 しばらくはこの波に乗って儲けを出そうかと」


 博多に食料を供給していた筑豊を中心とする遠賀川水系の平野部はこのバブルで潤うことが確定している。

 最後まで儲けにこだわって崩壊に巻き込まれないならば、そこそこの利を稼げるだろう。


「あまり波には乗るなよ。

 その儲けの火種を俺が消しに行くのだからな」


「聞いております。

 此度の肥前の騒動の検使になられたとか」


「しばらくは噂で相場が動くが、落ち着けば久留米から陸路で博多に米を運ぶ事を思いつくだろうよ」


 費用も搬入量も陸路の方が高くつく。

 だが、パニック相場の鎮静剤にはなるだろう。

 そこまで自分で言って、疑問が湧く。


「少弐政興殿は何で唐津の方に向かったんだ?

 筑後から直接肥前を攻めた方が楽だろうに?」


 俺の疑問に柳川調信があっさりと答えを言う。

 元、対馬宗家の武将だっただけに、水軍衆あたりの事情に詳しいのはこの場では頼もしい。


「それでは、大友の傀儡だと言っているようなものではありませんか。

 事実ですが、水軍衆にも操れる利と傀儡のままで終わりたくない少弐殿の意見が一致したのでしょうな。

 それに、唐津の方は洒落にならぬ大騒動が勃発している様子で」


 また長くなるので解説タイムだ。

 まずは少弐政興が筑後に向かわなかった理由である。

 大友家の領国である筑後からの出撃は大友家の全面支援が期待できるが、それゆえに大友の傀儡となってしまうのは先の会話の通りだが、もう一つ理由がある。

 筑後川西岸で反竜造寺家で踏ん張っている肥前西島城主の横岳資誠の存在である。

 少弐一族分家で少弐冬尚の娘を娶って一門扱いとなり、少弐家滅亡後も大友家の支援の元で竜造寺軍を撃退していた。

 ここで少弐家を名乗っても良いのだが、横岳資誠はあくまで少弐家に忠義を尽くしたらしい。

 少弐資元の四男である少弐元盛を匿っていたのである。

 少弐政興は少弐資元の三男に当たるので、正当性は少弐政興の方が上だが、復興の為に肥前から離れた事がマイナスになっていた。

 少弐政興が肥前に領地をと焦ったのはこの辺りにも理由がある。

 さて、問題の唐津に行く前にもう一人登場人物を紹介しよう。

 松浦鎮。

 相神浦松浦家に養子に行った少弐資元の五男である。

 松浦本家も現在絶賛内紛中なのだが、少弐家が竜造寺家によって滅亡に追い込まれた時にその価値が無くなった彼は菰田に幽閉される事になった。

 で、相神浦松浦家に替わりに養子に入ったのが有馬晴純の四男である松浦盛。

 有馬晴純はこの後も出てくるので覚えておいてほしい。

 話を松浦鎮に戻す。

 行き場の無くなった彼だが、俺の暗躍もあって少弐政興が筑前にて復興すると彼の所に帰る事になる。

 有馬家にせよ、少弐家にせよ、勢力を拡大し続ける竜造寺家を無視できなかったという事なのだ。

 そして、彼を使って波多家の内紛に介入する事になる。

 さて、波多家だ。

 松浦一族の有力分家である波多家のお家争いだが、当主波多盛が子供を残さずに急死するというお家争いあるあるから始まる。

 ここで影響力を持ったのが当主未亡人の真芳。

 彼女は波多家に次ぐ草野家の娘だった事から、実家の影響力を行使して次期当主選定に関与する。

 ここで、草野家が直系相続でなく養子をもらっていた事がこの後の悲劇に繋がる。

 養子でやってきた草野家当主、草野鎮永の実家は筑前国原田家。

 糸島半島の根本にある高祖城を本拠とする原田隆種の次男で、臼杵家と何度も糸島半島をめぐって争っている反大友家の家であるがひとまず忘れていい。

 重要なのは養子になったという事で、その場合大体婿養子を指すので草野家は直系女子がいる奥方が強かったのだ。 

 真芳はその草野家の女である。

 養子による旨味を十二分に理解していた。

 自分の娘と外から有力大名の次男三男をくっつけて婿養子にして当主に持ってこよう。

 この時彼女が選んだのは、この時勢いに乗っていた有馬晴純の孫藤童丸。

 分からないではないが、問題は前当主に兄弟がいた事だ。

 揉めないわけがない。

 という訳で、戦国時代の解決手段である力による解決が図られることになったが、真芳が合戦を指揮する訳にも行かない。

 ならばどうしたか?




 謀殺である。



 

 波多盛の兄弟は領国の壱岐に三人居たが、先手を打った真芳は壱岐の代官達に命じてこの三人を謀殺。

 これに重臣たちが反発するのは当然である。

 で、重臣代表の日高資を城内で毒殺。

 次いで鶴田直を暗殺した所で、粛清をやり過ぎた真芳に対して家中が暴発。

 日高家と鶴田家を中心にクーデターを敢行し、真芳と藤童丸を追放したというのが波多家のお家争いである。

 さて、クーデター政権が何よりも最初にしないといけない事は正当性の確保だ。

 松浦本家は内紛中で旗印には使えない。

 使えそうな一族はあらかた粛清し尽くしている。

 で、隙を見せたら南から竜造寺家が介入するのは目に見えている。

 頭を抱えたクーデター政権が松浦鎮に目をつけたのは偶然ではない。

 少弐家という肥前の旗印にふさわしい血を持ち、相神浦松浦家の養子として松浦の名前を名乗っている。 

 正当性にもってこいなのだ。

 もちろん、肥前に返り咲きたい少弐政興もこの動きを歓迎した。



  

 このタイミングで竜造寺軍が肥前国丹坂峠で有馬・大村連合軍に大勝利しなければ。




 この戦いで竜造寺家が奪った肥前国の要衝である多久城から北上すると、波多家の領土に接する。

 その城の名前は獅子ヶ城。

 クーデター政権の中心となって兵を岸岳城に出した鶴田家の居城である。

 こんな美味しい状況を竜造寺隆信は見逃すだろうか?

 俺は思わず声に出して呟く。


「ないな」

「ですね。

 だからこそ、少弐様は大慌てで波多家に後詰に向かわれたのでございます」


 柳川調信の苦笑に俺はため息をつくしかない。

 で、そこまで考えれば、さらにもう少し先が見えてしまう。


「この状況で、原田隆種がおとなしくしていると思うか?」


 もう乾いた笑いしか出ないが、柳川調信も同じような笑みを浮かべている。

 それが全てを物語っていた。


「御曹司だったら、邪魔しませんか?」

「全力でするに決まっているだろう」

「その通りです。

 原田隆種が兵を出して進ませず、壱岐の水軍衆も奥方側なので侵入を拒んでいます。

 少弐殿は松浦殿と共に柑子岳城まで来たものの、まったく先に進めていません」


 博多から船どころか陸路でも一日半程の所である。

 つまり、まったく進めていない。


「おい。これどうするんだ?」

「それは御曹司が考える事でしょうに」


 頭を抱える俺達の耳に鎧の音が聞こえる。

 障子が開かれると、鎧姿の入田義実が嬉しそうな声をあげた。


「お久しゅうございますな。御曹司。

 御曹司に猫城を見てもらいたかったのですが、事が事ゆえ出せる兵を引き連れて参りました。

 兵三百人。

 御曹司の命を待ちかねておりますぞ!」


 こういう時に自ら考えて動ける将は貴重である。

 入田義実の言葉の後に柳川調信が真顔で俺に告げる。


「猫城の守備はお任せを。

 それだけでなく、兵糧や弾薬も確保して送り続けましょう」


 ひとまず先のことは後回しにしよう。

 博多に入ってしまえば最低限手を打つことができる。

 少弐政興が動けていない事も下手にかき回していないとポジティブに考えよう。


「明日にも船で博多に入る。

 そこで兵が揃うのを待つつもりだ。

 入田殿に豊前松山城の多胡殿も兵を出してくれるそうだ。

 馬廻りおよび、豊後から一万田殿が来る手筈になっている。

 兵は一応二千で見積もってくれ」


「はっ」

「承知致しました」


 芦屋での会議はそれでお開きとなった。




 閨に戻る途中、有明が俺を待っていてくれた。


「お疲れ様。

 明日には博多ね」


「そうだな」


 博多で俺と有明は色々なことを学んだ。

 あの街から逃げ出した俺たちを博多はどのような顔で迎えてくれるだろうか?

 それだけは少しだけ怖かった。

 有明が俺の手を握る。

 宵闇の中、その手の暖かさは懐かしさすら思い出す。


「大丈夫。

 変わっても、私は忘れないから」

「そうだな」

「『そうだな』しか言わないのね」

「そうだな」


 有明のおかしそうな笑い声にやっと俺も我に返る。

 この時の俺は肥前情勢も有明の事も忘れて考えていたのだから。

 高橋鑑種の事を。

 有明の仇の事を。

 あの男がこの状況で動かない訳がない。

 あの男が何をするのかそれだけが読めなかった。


「んっ……」


 唇に触れるのは散々味わった有明の唇。

 俺の心がここにない事を長い付き合いの有明は見ぬいて笑う。


「約束したでしょ。

 私の為に修羅の道に走らないでって」


「そうだ……」


 そこまで言おうとしてさすがに笑ってごまかす。

 少しだけ気が楽になった。


「多分ろくでもない事に巻き込まれるだろう。

 覚悟しておけ」


「あら?

 一族滅ぼされて、遊女に落とされて、仇に囲われる以上のろくでもない事かしら?」


「……そこまでは行かないだろうな」

「ならば大丈夫よ。

 きっと」


 有明が俺の手を引っ張る。

 閨ではいつもの様に女達が乱れるのだろう。

 博多で気が抜けないのならば、芦屋が最後の休息になる。

 少しはハメを外していいかもしれないと有明に誘われて俺は閨に入った。 

私が初期プロットを投げ捨てた最大の理由が、この肥前がらみのドロドロである。


何故壱岐は長崎県になったのか?

http://www.ikishi.sakura.ne.jp/hatashinryaku.html


ごめん。

リアルでファンタジー超えてゆくのやめてくれませんかorz

なお、これで状況説明の『半分』も終わってないんだよなぁ……orz


横岳資誠 よこだけ すけまさ

少弐元盛 しょうに もともり

松浦鎮  まつら しげる

松浦盛  まつら さこう

有馬晴純 ありま はるずみ

波多盛  はた せい

草野鎮永 くさの しげなが

原田隆種 はらだ たかたね

波多真芳 はた さこう

日高資  ひだか たすく

鶴田直  つるた ただす


7/20

 佐賀の戦国史様からの情報提供によって、鶴田直の読み方が分かりました。

 本当にありがとうございます。

 読み方のソースまで教えていただき、感謝してもしたりないぐらいです。


ソース

『肥前鶴田氏の研究』鶴田徹 著(鶴鳴社)2015年4月24日刊 P101より。


佐賀の戦国史様のツイッターはこちらです。

@sagasengoku

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ