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三話

実継も油断していた訳ではないが、交代で食事休憩を摂っていたときの隙を狙われた。被害は三人しかも戦闘向けのギフトホルダーが集中的に狙われ戦闘不能判定を受けた。単独で警戒していた生徒を倒したのはもちろん大志だ。


水分を補給してお腹がいっぱいになった後トイレに入るところを狙われた。何時狙われるか定かでないギフトホルダーの自衛心を持たせるためにもトイレも特に非戦闘区域となっていない。流石にトイレ内での戦闘はしないがトイレまでの道のりに息を潜め襲撃することはルール上問題ない。帰ってこないクラスメイトを心配する実継だったがクラス代表に配布される端末で撃破されたことを知る。端末には撃破された時間と戦闘不能になった生徒名しか表示されない。戦力を削られたことに焦る実継だがこれ以上の被害を広げない為に行動を二人以上で行動させることを徹底させる。


彰は教室で昼食を摂っていた。クラス代表の自分に状況報告が来て実継と対抗戦で均衡していることが自信となっている。ニクラスがどのくらいの戦力を持っているかは知らないが、自分に戦闘で敵う者はいない。直接戦ったことがないので分からないが大志すら自分の敵ではないと思っている。烈音れおんがそうそうに敗れたことが痛かったが確実に一人は倒しているはずなので収支としてはつり合いが取れている。小次郎は機械操作のギフトを持つが今回は屋内戦でしかも重機などを持ち込めない場所なので暇を持て余している。


大志からしてみればギフトの無駄使いでカメラを取り付けたラジコンで偵察を行わせるぐらいのことはする。実際、実継のクラスは無線で操縦している偵察機を何台が飛ばしており戦闘には直接役には立たないものの偵察としては有効な手段だ。最も無線による操縦なので混線させたりカメラを塞いだり、電池を外してしまえば簡単に無効化できる。持ち込み制限が十台ですでにすべて使用不可の状態にしている。


大志としては彰が簡単に負けるとは思っていない。現時点で勝てるのは自分を除けば上級生ぐらいなものだろう。不利な状況を覆す為に策があり有利な状況を作り出して勝とうとするのは当然だ。自衛隊といっても今では軍隊としての扱いを認められている。基本的には人道支援目的の派兵と自国防衛のための行使しかしないが命がかかっていることは間違いがない。彰は策を小細工だと考えている節があり自分の事を父である大河の七光で入学したと考えていることは普段からの態度でまるわかりだ。


大河の部下であるヤタガラスのメンバーに戦闘技術を叩きこまれたのは幸運と言ってもよい。大国だったら闘う能力を身につける前に国家権力によって自由を奪われた生活をすることになっていただろう。大河が陸将補という立場に加えて倉橋家は代々、自衛官・政治家を輩出してきた名家であったため国から無茶な要求をされることはなかった。大志も八歳ながら理解しており入学した時点である程度は諦めている節がある。


今回の対抗戦でクラスの戦力が拮抗しているのは大志が意図的に状況をコントロールしているからである。事前に戦力を間引き実継の策を完全には潰さないものの有効には働かさせない。実継もそれは理解している。


現在の時刻は十五時で対抗戦終了まであと二時間を切っている。現在では一クラスが一三名、ニクラスが十名を残すのみとなっている。一年生の対抗戦でここまで時間がかかっているのは珍しい。大抵の場合は時間が経つごとに集中力を欠き一方のクラスが全滅することで勝敗が着く。戦術と言えるようなものではなくただ単純に数と数の戦いで決着がつく。


仮の話だがもし同じ学年に大志と実継がいなければ例年通りの見応えのない対抗戦になっていただろう。要はこのまま決着が着かず人数差による判定で勝敗が決すると予想していた。その方が大志にとって一番良い結果だからだ。一クラスにもニクラスにも今回の対抗戦で実力を誇示でき、今後につなげることができる。


クラス代表を仕留めない限りは善戦したとして二クラスともに健闘賞がでるし実継も敗軍の将としてクラスメイトから要らぬ恨みを買わなくて済むからだ。現在の個人ポイントは撃破数八で大志がトップだ。クラスメイトを纏める手腕も含めてこのままいけばMVPは確定である。次点は実継の撃破数四、同じく撃破数四のニクラスの生徒となっている。


彰は他の取り巻きと教室の本陣にいたため撃破数はニだ。本陣近くまで攻めよせてきたニクラスの生徒をギフトを使って戦闘不能にした。その際に心愛ここのは戦闘不能判定をされていた。戦闘不能判定を受けた生徒は体育館にて戦闘をモニターで観察している行事ではあるが初期の段階で戦闘不能判定を受けた烈音れおんは居眠りをしている。


体力的に持たない一年生を無理やり起こす教師はいない。戦闘も全てが映っている訳ではなく校内に設置されている監視カメラの映像が流されているだけである。数が多いので分割ニ画面で映されている本陣の状況に注視している。大志はなるべく監視カメラから離れて行動している。姿を完全に消すことはできないがギフトによってジャックされないとは限らない。機械に特化したギフトがあるように情報に特化したギフトもある。【複数処理】やテレパス、機械端末を自己の管理下に置く【ジャック】もある。


いくら大志といえど予想はできても一年生の全てのギフトを把握している訳ではない。実継が要と同じ複数処理のギフトホルダーだと予想しているがそうでない可能性の方が高い。大志は三つのギフトを有しているが親以外で知っているのは国と鍛えてくれたヤタガラスのメンバーくらいだろう。ギフトは後天的に進化することがあるのでごまかすこともできるし習熟度によっては同じギフトでも効果は全然違う。


先天的に得られる能力は使わなければ普通の人と変わらず、少し頭の良い人というぐらいの印象しかもたれない。折角のギフトを軍事・経済に利用できるのだから国としても得難い人材を得るために教育を行う。日本の場合は超能力幼年学校がそれにあたるというだけだ。あくまでも任意での入学だがギフトホルダー達の教育費は無料であり、国を支える人材となる彼ら彼女らの安全も確保されている。


実継は大志に誘導させられているとは分かっていながらも乾坤一擲の勝負に出ることになる。それしかクラスを勝利に導けないし、自分の力を示すことができないと考えたからだ。


拠点となっているクラスに戦闘系ギフトホルダー一名を残して残りの九名で攻める。一クラスも組織的に抵抗し五名が戦闘不能になるが二名を道連れにする。一クラス八名、ニクラス八名と数の上では同数になったが、まだ実継のニクラスが不利だ。大志・彰が戦闘不能になっておらず大志の居場所は報告されていない。


実継は大志が対抗戦に興味がないことには気づいていたが今まで戦闘不能にされてきた戦闘系ギフトホルダーの実力を考えると不気味でしかない。一クラスの拠点まで攻め入り護衛となっていた一クラスの全員を戦闘不能にする。残ったのは一クラスは大志・彰・苺のみでニクラスは実継とクラスメイト三名だ。この時点で苺は無力化されていると同じ状況で大志もわざとニクラスの拠点を護っていた生徒と戦闘を長引かせていた。三対一ならやりようはあるだろう。このままクラスメイトには悪いがニクラスに勝ってもらうことにする。


大志の思惑とはずれたのは彰の思考を読みそこなったことだろう。一名が彰の手によって戦闘不能にされた実継は教室から引いた。教室に誰もいない状態で敵クラスの者が占領宣言をすると敗北が決まるためクラスを離れないと考えていたが実継を戦闘不能にすれば良いと考えて教室を出た。実継が彰を引きつけクラスメイトに占領宣言を行わせたことで一六時五十分に対抗戦はニクラスの勝利で終わった。


個人MVPはクラスを勝利に導き、撃破数六の実継が選ばれた。要個人としては戦況を支配下に置き巧みな戦術でニクラスを翻弄し続けた大志こそふさわしいと思っていたが勝利クラスのクラス代表がMVPに選ばれるのが慣習なので異存はなかった。


大志の最終戦績は撃破数十と断トツでそのほとんどが戦闘系ギフトを持つ生徒だった。後の要はこう語った。八歳の時点であそこまでの才を見せるのは流石は大河さんの息子であり愛弟子だと。ヤタガラスのメンバーでも戦闘・指揮のどちらかに秀でるものはいる。しかも自衛隊士官学校で主席・次席で卒業したような本物の天才たちだ。


要は今後の大志の成長を見守りつつも楽しみに思うのであった。


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