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四十五話

大志達が討伐依頼を受けた大型獣は変異体と呼ばれるモンスターで兎に角でかい。地球の環境は人類が生きていくには充分だが、あるときを境に動植物の巨大化が起こったとされている。


核によって一度、文明社会が滅んだからだとか天敵がいなくなって巨大化したとも言われているが真相は分かっていない。ミテネ連邦に所属していれば詳しい歴史を調べることも不可能ではないが、既存のギルドに入って行動を縛られるのは面白くないしゲームなのだから楽しみたい。百万イェンと三名以上のギルドメンバーが入れば設立は可能なので早めに資金を貯めておこう決心する大志である。


大型獣は人喰い熊。名前の通り肉食で人の味を知ってしまった熊である。無害な草食獣が多い中で、人喰い熊は厄介な存在だ。銃弾を数発であれば耐えれるだけの体力と高い知能がある。自分を傷つけた者を執拗に追いかける執念を持っており、初心者キラーとして知られている。ゲーム内の情報を良く集めていない大志だったが討伐報酬が十五万イェンなのでそこそこの強さを持っていると考えていた。


他の依頼は時間が拘束される割には、報酬が高くなく、はっきり言って割に合わない。最初から戦える者はそう多くはないので初心者救済的な依頼だが、ゲームの中に来てまでアルバイトをしたくないとプレイヤーに思われる不人気依頼でもある。大志も時間があれば、受けても良いが余程の事がない限りは受けないだろうなと考えていた。


人喰い熊はセーフティエリアから少し離れた所に棲息しており、商人達は身を護る為には護衛をつけるしかないので、あまり近づかない。プレイヤーが即死判定を受ければアイテムの所有権はフリーになり最初に手にした者の物になる。無事な場合は、半日の時間をおいて所有権の移転が行われる。


PKからプレイヤーが保護されるのはセーフティエリアに設定されている街の中だけであり、街の外に出れば、全てが自己責任である。大きなギルドメンバーになることで自分を護ろうとすることは悪い事ではない。ギルド運営は実際に組織を運営する上で重要な要素が含まれ、現実世界でも全く役に立たないという訳でもないからだ。


大志が斥候を務め、実継・苺は周囲の警戒をしている。要は必要無いと考えているが伏兵などがいないか広範囲に渡って警戒している。悪質なブラックプレイヤーは手にかけるプレイヤーが初心者(ニュービー)だろうが容赦はしない。


訓練された兵士である要は、金さえあれば実弾系のスナイパーライフルが欲しかったが当然、所持金が足りるはずもなく維持するのも大変である。PKプレイヤーキラーでも出ないかなと考えていると大志がハンドサインで異常を伝えてくる。停止のサインだったので、苺にも理解できる範囲だ。


「どうした。この辺りにはプレイヤーはいないぞ」


「要さん。嫌な感じがするんですよ」


確かに微かではあるが殺気が漏れている。苺が選択した初期装備を借りて前進する要と大志。案の定、複数のプレイヤーに囲まれる。ミテネ連邦が支配している惑星だけあってミテネ連邦に所属しているプレイヤーが幅を効かしている。強引な勧誘を行い、GMコールをすることも少なくない。


「その装備を見るからに初心者(ニュービー)か。獲物としては最悪だが、弱者をいたぶるのも悪くはないか。」


男の言葉はそこで途切れる。明らかなブラックプレヤーに対する攻撃はPK扱いにはならずPKK扱いとなるため、要のカーソル表示はグリーンのままだ。敵対することが確定した以上は大志も躊躇うことなく攻撃を加えて行く。幾ら盟主のギルドメンバーとはいえ初心者狩りは推奨されない。寧ろギルドとしての良識を疑うべきであり、ギルマスとサブマスは何をしているのかと頭が痛くなる。成長しきった組織に良くある現象なのだがトップは幹部のことは良く知っていても、下っ端のことは知らないことが多い。


「ちくしょう。やりやがったな。」


武器を構える前にヘッドショットで確実に命を奪う要。要は実継に苺の護衛を指示して、大志と要だけで殲滅作戦を行っている。


「大志。右側の相手は頼んだぞ。」


手に持ったナイフで相手の頸動脈を裂き致命傷を与えながらも大志に指示を与える。


「要さん。結構やる気ですね。訓練に比べたら話にもならないですよ」


レベルが高くなってもステータスが多少上がるだけで戦闘技術はプレイヤースキル頼みとなる。隙だらけで急襲しようとしていたところを逆に急襲され連携が上手く取れていない。


「人食い熊ならぬ。追剥ぎか。システム上は殺しても問題ないから容赦なく行くとするか。」


初心者の武器での急所を狙えば致命傷を与えることができる。高性能な武器はそれだけ値段が高いのでミドルプレイヤーを超えた辺りでないと所持していないので、襲ってきたプレイヤーとはそこまで装備の能力の差はない。武器に対する習熟度が上がれば武技を使用することができるようになるが、アシストであり、なくても問題がないものだ。寧ろトッププレーヤー程、武技に頼らない戦闘を行うようになる。システム的な動きだとPVPにおいて先を読まれ易く致命的な隙となりかねないのだ。廃人クラスともなるとゲームの為に現実世界でも肉体を鍛え軍人さながらの戦闘技術を持つ者もいる。


待ち伏せしていた五人は全滅し、経験値とお金になった。五人のうち三人は最低ランクとはいえ、賞金首になっていたのだ。死体となったが街まで持ち帰り、治安維持機構へと引き渡して判明した。初心者がそこそこ名の知れたPKを返り討ちにしたことに驚いたが、動きがVR慣れしている。実生活のことを聞くのはマナー違反であるため追及はしないが、ミテネ連邦としては戦力は多いことにこしたことはない。勧誘するがギルドを立ち上げるつもりだと聞いて諦める。ミテネ連邦のギルド幹部と大志達は知らないうちに一度、出合っていたのであった。


武器屋に戻ってきた。大志達は鹵獲した兵器の中で不要なものを売るためと要が装備にアンチマテリアルライフルを欲しがったためだ。日本の特殊部隊員の多くは狙撃銃の訓練をすることを義務付けられている。カウンタースナイパーが必要なこともそうだが、不可視の一撃で敵の命を奪うことは戦う以上は必要なことである。要もある程度は適性があり、一キロ以内であれば手動照準でも的に当てることができる。


「親父。ここにはアンチマテリアルライフルは置いてあるか?」


「新兵に買えるような値段じゃねえ。一丁、最低価格で百三十万イェンだぞ。出直してこい」


「ならアサルトライフルを使うからスコープだけでも手配してくれ。」


「五万からあるがピン切りだな。ゼロインもサービスでできるが自分できないやつが持つ資格はない」


「ゼロインくらいなら簡単にできる。なんならスコープと銃を貸してくれ」


手順が実際とは多少異なっているが普段、訓練に使用していた銃だ。分解整備もできるし、本物の軍人は一般のプレイヤーが立ち入れる場所でブループラネットでは活動していないので、仕方がないことだ。データとはいえ、実際に資産価値を持つため遊ぶ為に大河に貸してくれとも言えない。慣れた手つきで調整していく要。武器屋の親父は立ち振る舞いから武器の取り扱いに慣れていると判断していたので、販売すること自体には異論はない。


「分かった。好きなのを選べ。銃の管理はどうしている?携帯許可を持っているから問題はないが連れの子供たちは銃を撃つのに慣れているのか?」


「それは問題ないです。仮にも携帯許可を得るだけの実力は持っていますから」


武器を手に入れて安心する要。防具に得た金を使っても良かったが、即死してしまえば意味がないし。抵抗される前に長距離から一方的な射撃ができるのは思ったより大きな差となるのだ。一度、士気が落ちてしまった軍は弱い。過酷な戦地で駐屯し、戦い抜いた要は遊びではあるが手は抜かない。苺がどうなるかは分からないが、大志と実継は自衛隊士官学校に入隊することはまず間違いない。


変な癖がついてしまうと困るため、銃はなるべく撃たせたくはないが、折角、人気ゲームで遊べるのに、街で大人しくしていろというのはあまりに酷だろう。林檎の気晴らしを兼ねているし要は戦闘技術を鈍らせないために必要なことでもある。大型獣を討伐するつもりが、犯罪者を捕まえることになってしまった。実入りが良く結果的には好都合だったが、対人戦はまだ早いと要は考えていた。


血は出ないように設定され痛覚も制限されている。ゲームの中だけとは言え、多感な時期には好ましくないことは確かだ。VRゲームが現実世界に与える影響に関する議論は久しくされていないが、悪影響を及ぼすとして根強い反対があることも事実だ。楓が要を保護者として付けたのも過保護が理由という訳ではないのだ。


ゲームで執拗なハラスメント行為を受けた女性が男性恐怖症に陥ってしまったこともある良くも悪くも現実と遜色がないと言っても過言でない再現率の影響力は侮れない。

対象年齢は全年齢に対応しているが、年齢が低いほど制限がかかる。二十歳を越えていれば、HPの減少と共に痛覚に対して実際の十分の一程のダメージを受けることができる。


ダメージを受けるのはマイナスだと考えがちだが、感覚に対する制限がなくなり鋭敏な反応が出来るようになるのだ玄人ほど痛覚制限を切り戦う。現実に即した動きしかできないが、現役の軍人・自衛官・警察官、武道家などが一般プレイヤーを抑えて無双することすら可能なのだ。


実際、元自衛官などは副業として休日にプレイしているものも少なくない。公務員だからと言って資産運用が禁止されている訳でもなく、訓練にもなるため寧ろ推奨しているくらいだ。一般的な動物とは違い、変異獣を倒すのには経験が必要になる。名前の通り、突然変異した大型獣は銃を持っていても十分な脅威となりうる。殺されたくなければ駆逐するしかない文字通りの弱肉強食の世界になっている。


安全対策がとられているとはいえ、苺はVR環境に慣れている訳ではない。変なトラウマにならなければ良いと考えつつも適切なフォローをすれば良いかと考える要であった。


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