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四十四話

ミテネ連邦府で無事に合流出来た大志・実継・苺の三人であったが、連邦府の受付カウンターには要の姿があった。三人の御目付け役としてログインした要も初心者(ニュービー)であることには間違いないが、歴戦の兵士である要はVR訓練によって動きに隙が全くない。


大志も同様に動きに無駄はないが、要と比べると隙だらけだと言っても良い。実継と苺に関しては大人と生まれたばかりの赤ちゃんぐらい差がある。大志は当初ゲームの中まで干渉して来ようとする要を止めようとしたが、月額制でもあるブループラネットで遊ぶためには保護者である楓と大河の許可がいるので説得に必要だったのだ。


口止め料として、日本政府から才能保持者保護法の特別項目である功労金が支払われたが、成人するまでは少くとも二人が適切に管理するため大志が自由に使えるお金は少ない。初心者にとって最初に越える壁は月額料を稼ぐことにある。


未成年でも長く遊べるように比較的短時間で稼げる様に救済処置がある。イェンを円に替えるためには百倍必要となるが、プレーを続けるために支払うのは十倍で済む。プレーヤー人口を減らすのは出資している企業にとっても国にとっても益にはならないからだ。


ブループラネット内にも経済活動は存在し、現実世界の入社試験として与えられたイェンを期間内にどれだけ増やすことが出来るかをみる会社もある。一人では難しくても数人いればできることは多くなり、数十人又は数百人のギルドともなれば更に大規模なものとなる。


現実世界ではブループラネット内の資産も遺産として正式に扱われ、相続税がかかる。ただゲーム内では、手数料として惑星を支配している盟主ギルドに支払われる仕組みとなっており、現実世界と何ら変わらない生活を営むことが出来る。大志達は地球を支配している盟主ギルド【ミテネ連邦】に所属するプレーヤーではなく、あくまでも無所属である。大志はいまある巨大ギルドに護られるのではなく、ゲームを楽しむために小さなギルドを設立する予定だ。ギルド名はまだ決めておらずギルド旗の意匠も何もかもがこれから始まるその為のチュートリアルが始まろうとしていた。


NPCに案内されてやってきたのは、小さな武道場である。ここで戦闘の基本となる戦技とスキルを獲得することができるらしい。今の職業は無職であったが、軍人を四人が選択することでレベルアップ時にステータスアップの恩恵を受けることができるようになるらしい。職業は色々あり学生も選択することも可能だがゲーム内に設置されている学校に通わなくてはならないため恩恵は大きいが諦めることにしたのだ。


最初に木人形に技を掛け、体術を無事に獲得する四人。武器もナイフ、銃などの様々な種類から選ぶことができ要はナイフを他の三人は銃を選んだ。銃は素人でも一定の戦闘能力を得ることができるが維持費がばかにならない。


要が選択したナイフは初期装備ではあるがサバイバルナイフとは異なり振動剣であり最上位の物になると分子レベルでの切断も可能になる。接近戦に自信のある要だが、現実世界とは違いギフト能力を発現出来ないことに留意する必要がある。


迷子になっていた苺は現実と変わらないブループラネット内でテレパスを使おうとして発現できず混乱することになったが、ギフトホルダーに対する最初の洗礼になっている。ギフトの代わりにスキルがあり無限大の可能性を秘めている。


戦闘系だけに限らず技術系や補助系と様々な分野に幅広くあり、多少のステータス補助はあるものの現実世界と何ら変わらない動きをとることができる。そのためレベル一の要であってもレベル五十のプレーヤーをPKすることは不可能ではない。


そこがワールド内でPKが認められているエリアでないとNPCによる強制連行が待っているが、捕まえに来た治安維持部隊を相手に戦闘を行い惑星手配されているプレーヤーがわざと捕まり脱獄を繰り返すブラックプレーヤーが存在する。彼等を捕まえるブラックハンターも存在し賞金首と賞金稼ぎによる熾烈なPVPが行われ、惑星内に留まらずサーバー全体で最強を決めるトーナメントを行うこともゲームの醍醐味となっている。


レベル一の大志達にはまだ関係のない話となるが何時かは出場してみたいと考える大志である。チュートリアルも終わり用事のなくなった大志達は都市にある市場へと足を向けていた。武器屋や回復アイテムが置いてあるドラッグストアに用事があったためだ。現代社会より発展している光景を見て思わず、ため息をついてしまう苺。


「現実の東京より遥かに発展してるんだ」


確かにミテネ連邦が支配する地球は外宇宙に進出する術を手に入れており、火星移住計画で入手した情報を活かして火星を既に支配下に置いている。軌道エレベーターの完成や医療技術はVRゲームの中の設定にしては良くできている。基幹システムを創った人物の謎からブループラネットの説明書を【予言書】と揶揄する人物がいるくらいだ。


誰が言ったのか忘れてしまったが人の想像することは何時かは実現するという奴なのだろう。大志達三人は職業【軍人】の中で戦闘系の項目を選んだが苺だけ救護兵(メディック)を選んだ。戦闘系のスキルが得られない代わりに回復系アイテムの効果が増したり、戦闘時に敵から狙われにくくなるスキルを得ることができる。


開始したばかりのプレーヤーはとにかくお金がかかる。RMTを認めている代わりにアイテムガチャなど現実の貨幣を用いて金満プレイすることはできない。現金でゲーム内での優位性を確保することは悪いことではないが、製作者は万人が楽しむ事のできるゲームを作りたかったのか現実世界の人間関係をゲームで活用することは否定しなかったが、現実の貨幣をイェンに交換することを一切認めていない。


「木野さん。集中するあまり迷子にならないように気をつけてね」


「分かってます。仙崎先生。」


要は木野家とあまり面識のなかったが林檎誘拐後の説明の為に政府高官と時任校長とで両親に謝罪しに行ったことで一定の交流と信頼を得ることができていた。もう少ししたら林檎もブループラネット内にアクセスすることを許可されるだろう。外務大臣の源三の支援があったことでゲーム内でとはいえ現実を忘れて楽しむことができる。要はメディックの重要性を十分理解している。部隊内に一人【薬効強化】のギフトホルダーが居るだけで薬の量が不足がちな自衛隊の支援において救える命が一つでも増えることは好ましいことである。それが自衛官でなくても、難民救済や被災者救助の現場であっても同じだ。


GIDによりギフトが発現しないように厳重に管理することは、国防上必要なことなのかもしれないが、林檎の人権を侵害する行為であることは間違いない。中曽根は外国と交渉してレベル十のギフトキャンセラーを手配しようと源三と一緒に尽力している。日本にも高レベルのギフトキャンセラーはいるが世界最高のホルダーに依頼することで責任を果たしたいのだ。時任も校長としての人脈を使って事件の調査をしている。第二世代のギフトホルダーで日本で彼女ほど有名なものはいない。ノーマルとギフトホルダーの対立となり圧倒的に数の多いノーマルと数は少ないが才能があるギフトホルダーの全面戦争が起きればどうなるかは分からない。被害者でありながら融和を説いた彼女の言葉は本当の意味で国民で理解された訳ではないだろうが、国が割れなかっただけ良かったと言える。同じ頃に旭会やウロボロスといった差別主義者の活動が活発したが彼女の責任ではないだろう。


ブループラネット内では回復アイテムは注射器タイプと錠剤タイプに分かれている。錠剤タイプは回復時間に時間がかかるのと看護兵メディックが使っても効果は変わらないため非常用として使用される。注射器タイプは回復時間が早いが錠剤タイプより回復量は少ない。それを補うのが看護兵メディックでありチーム編成に一人はいた方が良いとされる理由だ。


ミテネ連邦の領内において無所属プレイヤーは受けられる恩恵が少ない。一年に一回は新しい惑星が発見され、実効支配をめぐってギルド戦闘になる。支配できない惑星も存在するが、ギルドに参加していない者も当然おり経済的にはギルドが支配しているケースも少なくない。銀河帝国という名前がシステム上GMゲームマスター達が管理するギルドの名前である。融資している国の国家公務員が合議制で表上、運営していることになっているが、このGM達も全てを管理できている訳ではない。外部的には法律で規制し、ブラックボックスの解析に努めているが、何十万~何百万ものユーザーがいるとされているゲームを強制ログアウトにすることもできない。確実に復旧することができればそれもまた不可能ではないかもしれないが、RMTを認めている以上はゲーム内資産は現実世界でも個人の所有物として扱われるのだ。一部のデータ破損がどれほどの損害を与えるか目算がつかない以上は手を出さないのが賢明だといえた。


問題なくアイテムを購入できた四人は初めての依頼を受ける為に連邦府へ戻ることにするのであった。依頼の多くはNPCから出され、お使いクエストと呼ばれるものから討伐クエストまで幅広いものがある。街に被害を出している大型獣の討伐依頼がありどの程度の強さなのかを調べる為の試金石として受けることになった。


銃弾もただではないし、怪我をすれば治療費もかかる無理をしない範囲で依頼を受けるのが一番効率が良く、要は腐っても元ヤタガラス隊副隊長だ。そこらにいる獣に負けるわけがないしある程度のレベル差であればプレイヤースキルで何とかしてしまうだろう。


それだと大志達の修業にならないし、ゲームを楽しむ事も出来ない。窮地に陥った時以外は極力、助力しないでおこうと決心した要であった。


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