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三十六話

ウロボロス構成員である女は単独で超能力開発幼年学校に潜入していた。第一目標と第二目標である中曽根喜一と倉橋大河を一度に殺害するチャンスはそうそうあるものではない。


支部長には威力偵察だけで今回は陽動に努めろと指示を受けてやってきたが、機会があるのであれば殺害するに越したことはないと言われため組織内での地位をあげるために躍起になっている。


活動の貢献度によって理想郷が完成した際の地位が決まるのだ。一般の構成員は幹部になるために精力的に活動し、幹部は自分の立場を守るために部下を監督する。


女は大河へと視線を向けないように気を付けて行動する。迂濶にも巡回を行っていた自衛官に見付かりやむおえなく排除した。敵は警戒し、任務は半分は失敗したようなものだ。これ以上の失態は組織から命を狙われることになりかねないのでそれだけは何としてでも避けたい。潜入工作はまだまだ続く。


北海道を管轄している警察は事態の収拾へと動き始めていたが、解決への道程は遠い。負傷者の手当てに追われ治安維持のために警戒を余儀なくされるからである。警察庁には既に連絡済みで異常を感知したことを含めて上からの指示を待つしかない。


道知事は既に他県への要請を初めとした要請の検討をしていたが事件は常に流動的だ。全ての情報が集まってからや事件後に人を批判することは誰にでもできるが、当事者でない者が好き勝手に勝手なことを言っているに過ぎない。給料が良い分だけ他人より責任が重い。判断次第では道民の命を左右しかねないだけ判断には慎重さが求められるのだ。


才能研究機関には既に調査要請をし必要最低限の事は済んでいるという油断があったことは否定できない。道庁がテロリストに制圧され職員が拘束されたのはそんなときだった。道庁にもギフトホルダーの警備員はいる。建物は道民であれば一部を除いて一般人に解放されている。テロリストは未だ職員とたまたま訪れていた道民を人質にして立てこもっている。


要求はいまだなく抵抗さえしなければ危害を加えるつもりはテロリストにはないと判断できた。しかし抵抗するものには容赦なく銃弾を浴びせていく。軍用GIDによってギフトホルダーを封じ込めるという徹底ぶりだ。警察官や自衛官であれば支給品にGID拘束錠が含まれるが一般人が訓練された人間に抵抗するのは無茶を通り越して無謀なだけだ。人質を複数に分けて管理し反乱を起こしても制圧できるようにされている。


朝、不審な電話が道庁にかかってきており、警備には伝えられたものの本当に事件が起こるとは誰も予想していなかった。警察にも念のために連絡を入れ調査がなされたが公衆電話からかけられており周囲に監視カメラが設置されていなかったため警察は威力業務妨害で調査はしたものの警告者の素性の手掛かりはないに等しい。


警察に掛けられていれば虚偽通報罪で本格的な調査がなされたであろうが、逆探知システムのない道庁では情報が少なく調査にも限界がある。極稀に【予知】のギフトを持つ一般市民による通報がないわけではないが、大半が愉快犯による犯行で立件することも少なくない。正式に政府登録されたギフトホルダーによる予知通報は罪には問われない。実際に予知を無視した結果、悲惨な事件が阻止できなかった過去があるからである。


確かに不確かな予知しかできない低レベルホルダーは少なくない。国民の利益を考えると完全に無視できるものではなく匿名の通報も可能だ。通報があって対応していたにも関わらず偏見によって真実を覆い隠してしまったのは道警察の失態だ。隠しておいてもいずれは白日のもとにさらされるのは明白だったので政府には正確に報告した。


道知事である朝倉知事は警察の不祥事とも言える事件に解放後、周囲に不満を漏らしたとされているが人間である以上は責められることではないだろう。道庁人質事件では百人以上の人間が人質となっており、急遽、派遣された百虎隊長である白井は頭を悩ませていた。何処で手に入れたかは不明だが、軍用GIDの波形を感知し、迂濶に手を出すと人質に危害が加えられる可能性は否定できない。


日本でのカウンターテロの代名詞とも言えるヤタガラスは都内でのテロを警戒しているため支援要請することも難しい。道庁を囲うようにSAT隊員のスナイパーが警戒に当たっているか、テロリストは窓に近づくような素人集団ではなく、正規の手続きを踏んで入国すらしていないと考えられ素性が分かっているものはいない。


自力で何とか脱出した職員からの情報を纏めるとテロリストは少なくとも十人はいるらしい。相手がどんなギフトを有しているか分からない現状では、百虎隊と言えど静観するしかない。テロリスト側からの要求はなく、占拠し注目を集めるのが目的だと推測された。


それは間違いではない。テロの最終的な目的は存在をアピールすることと言っても良い。世界中から注目されることで組織の求心力となり、テロの対象となった国を自縄自縛の状態に貶めることができれば成功なのだ。日本で知事をしていれば、あらゆる面で情報は筒抜けになると思って良い。選挙で当選するためには自身の顔を売る必要があるからだ。良く知らない人間に投票するなど会社などのしがらみなない限りはあり得ない。


朝倉はテロリストに顔を知られ一般の人質とは隔離されていた。道知事となれば機密に関わることも少なくなく、今後、日本で活動する上で重要な情報を有しているだろう。テロリストは朝倉を拷問して情報を吐き出させることなど朝飯前だ。抵抗していた朝倉に肉体的な拷問をすることで屈伏させた。それでも話しても問題のない範囲でしか今はテロリスト側は情報を得ていない。道庁で人質をとったのも言わば時間稼ぎであり本当の目的は別にある。


反ギフトホルダー団体の旭会事務所は都内にあり、襲撃を受けていた。通報を受けた警察が現場に急行してはいるものの間に合わないだろう。警察の怠慢と言うわけではない。北海道で起きた人質事件が都内でも起きないとは限らず、非番の警察官を緊急動員して警戒していた為に手が回らないだけである。


国会議事堂に急用のない国会議員が集められ、対応に追われている。周囲は国枝の進言により自衛官が警戒している。空自にはスクランブル待機が命じられ、陸自が武装して周囲を警戒しており、許可のないものが侵入しようものなら直ぐに拘束されるだろう。


中曽根は国民にまだ真実を話すべきではないと考えているが特ダネを見逃せない記者がインターネットを通じて記事を発表してネットで拡散している。根も葉もない噂で有れば記者を拘束し裁判にかけることも出来なくはないが、事実であるためそれも難しい。


日本がテロの対象となるのは今回が初めてという訳ではない。過去を遡れば少なくない数を受けているが初動において封じ込める事に成功しているだけに過ぎない。相手が悪いことも今回の事件を公表せざるおえない理由となっている。


中曽根のもとには公安を初めとした機関から情報が集まっており、決定的な情報はないがウロボロスが行った犯行であると推測できるだけの情報が集まってきている。時任校長は事態を受けてチーム対抗戦の中止を中曽根に進言したが、ヤタガラスが警戒している超能力開発幼年学校は他の場所に比べると安全度は高く。中止にすることで起きる混乱を考えると続けられる限りは、少しでも時間を稼いでおいた方が懸命だ。


シェルターは要人を護る為にあり全ての人を収容できるだけの広さはない。公表すれば、出来る範囲の人数はシェルターに収容することになるが、ここで優先度が高くなるのは中曽根を始めとした政府高官、将来を担う事になる生徒達で保護者は含まれない可能性が高い。生徒の全員を収容できるはずもなく、トリプル・ダブルホルダーが優先されることに納得するだろうか。


十中八九、暴動が起きるだろう。納得させるためにも空自による輸送準備がなされ、あと三十分は時間が必要となる。自制心が高い日本人と言えど本当に命の危機に晒されるとなると行動が読めなくなる。カリスマ性の高い中曽根・大河が居ても混乱を収めるためには時間が必要になる。カリスマ性の高い中曽根・大河が居ても混乱を収めるためには時間が必要になる。


もしものために鎮圧用催涙弾も用意がされている。必ずしも暴動が起きる訳ではないがいざというときの備えを忘れないのが大河が戦場で死者を出さなかった要因だ。大河の存在だけで自衛官は奮いたち国民を護る盾となるだろう。信頼を得ているということは有事の際にも有効に働く。中国との一触即発となった事件でも使用されることのなかったヤマタノオロチの虎の子の兵器である【ヤマトプロトワン】が初めて国土防衛に使用されることになる可能性を考え大河はヤマタノオロチの隊長である柊に命じて防衛出動待機をさせていた。


戦車の主砲の直撃を受けても数発なら問題なく動かすことができる。日本の最新式戦車である九十式で性能実験は既に終えている。世界との軍事バランスを崩しかねないヤマトプロトワンは核兵器とあまり変わりがない。違うのは実用段階まで漕ぎつけたのが日本だけというだけであり、機密を守るための徹底的な情報統制を引いているだけにすぎない。また侵略戦争には決して用いられることはないだろう。


情報をもらしただけで内憂外患罪が適応され刑期は最低で釈放なしの終身刑である。最高刑は死刑もある重罪だ。情報がもれた事による死者の数を考えると適正内の量刑となる。使い方、次第では核より被害を出すことは不可能ではない。機動力に優れ継戦時間も長い、持てる弾薬の数は制限されてしまうが、専用の補給部隊をつけているので問題はない。


ただ真価が発揮できるのは無重力化においてであり、重力化では可動部分に不具合が起きやすいのは兵器である以上は避けられないことだ。各国の諜報機関が血眼になって調査しているのだが、SFにおける機動兵器やロボットアニメに見られる仮想兵器だということしか分かっていない。


ウロボロスの目的の一つにヤマトプロトワンの情報を得るという事もあってテロの標的になった。ウロボロスによる日本に対するテロはまだ始まったばかりであった。


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