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三十二話

大志と苺の二人はというと大志を倒して得点を得ようとする他チームの攻勢を受けていた。即席のチームワークではあるが同じ目的を持つので共闘することにしたらしい。大志達からしてみれば迷惑でしかないが、一部の生徒の中には、大志を倒したという実績が欲しいものもいた。


確かに大志を倒したともなれば学年はおろか学校中の話題となり、それが元でスカウトを受ける可能性は否定できない。しかし、目立つことは良い事ばかりでないことを理解しなければならない。素性を隠してなければ大志は大河の息子というだけではなく、悪意を持った人間によって誘拐される可能性が高い。だから国も事実を偽ってシングルホルダーとして登録することを認めているのである。シングルホルダーが彰のようなダブルホルダーに勝つことも実際に他の例であることなのでギフトを扱う才能があると思われ、特に不思議に思われることではないということだ。


仮にシングルホルダーがトリプルホルダーに勝ってしまうと国の要注意人物として登録されるか、国の機関にスカウトされるかの何れかが選択されるが、一対一ならまだしも多対一なら少しの期間だけ人々の記憶に留まることとなるだろう。実際問題、隆太は公式戦において大志に勝利したが、非公式の模擬戦においては何とか勝ち越しているが勝ったり負けたりしているのが現状である。強さとは相対的なものであり、確かに大志は一年生にしては強いが歳上の隆太には負けるし、同年代では突出しているかも知れないがギフトによっては勝てない相手もでてくるし、鍛えられた大人にはノーマルであっても現状では勝てないだろう。自己研鑽をし、今の時点で勝てないからといって諦める必要もないと言うことである。


間合いを上手くとりながら同級生の攻撃を捌いていていく大志。女子ならなんとか相手になるので合気道の技を使って力を受け流しつつ、ダメージを受けないことに徹する苺。もはや他チーム対大志・苺の戦いになってはいるが上手く持ちこたえている方だろう。大志が既に二名を戦闘不能にして迂濶な攻撃をしてくることは減ってきているが、一人が捨て身となって攻撃し複数で大志に対応することで、大志も無傷という訳には行かなくなっている。崇人(たかひと)みたいな実力者がいないから捌けているようなもので少しの変化で大志が戦闘不能になることはあり得た。


大志にとって運が良かったのは、中には正々堂々と戦うことで勝ちたいと願っている烈音(れおん)が乱入して都合の良い形で均衡が崩れたことにあった。要がこの戦闘を見て安心したことは言うまでもない。確かに勝てば官軍という様に敗軍の将になるよりかは、冷静な判断ができたとは言えるが、何をして勝っても良いと言う訳でもない。


チーム戦なのだからルール上に則ってチームメイトと共闘して勝利するのが本来の姿なのだから。突然、背後から攻撃されたことに動揺して大志・苺の包囲網に若干の綻びができる。機を見ることに長けている大志が一人を脱落させ混乱は拡がって行く。


これでは不味いと思った者から撤退し、仕切り直すことになった。烈音は大志に何か言いたそうな表情をしていたが、そのまま無言でその場を離れて行った。逃げた生徒を追撃するつもりなのかも知れなかったが、大志は体力を温存する事を優先して追いかけることをしなかった。


時間はまだあるが無限にある訳でもない。早く実継と合流しなくてはと焦る気持ちはない。大人数で囲まれるという状況がそう都合良くあるわけもなく、自力で何とかするだろうという信頼は特訓を通じて感じていた。崇人は陽菜との戦いに専念していた。同じクラスではあるものの接点が少なく女子を相手にすることに抵抗感があったことも戦いを長期化させる原因となっている。


やはり女子の中では陽菜の戦闘技術は抜きでており、普段から体を動かすことが好きなため、体力もある。陽菜は心愛(ここの)とチームを組んだが、心愛が彰の事を好いておることを知っており、敵視している大志×彰で妄想するのが最近の良くあることだった。しかし実継×大志も捨てがたい。彼女の脳内は腐っていた。


想像するだけなら害はないとして大志に放置されているが、苺を腐女子の道に引き摺り込むために作戦を練っている。同志も着実に増やしており汚染は留まることを知らない。彼女が精神感応系のホルダーであったのなら大変なことになっていただろう。彼女自身は男の子がちゃんと好きであり気になる存在もいるが今は目の前の戦いに集中している。


身を護るためにギフトホルダーが空手や柔道を学ぶのは珍しくない。国としても自分で身を護れる手段があることは好ましいことなので、助成金を出して推奨している。陽菜には目標があった今は落ち着いているとされているが現役時代の時任校長のように何かが護れるような人間になりたいといつも願っている。


女性ということで男性が入るより難しいとされている特殊部隊(タスクフォース)に入り、自分の親しいものは勿論のこと助けを求めている人に手をさしのべられる人間になりたいのだ。男女同権になってから入隊自体は女性でも可能と聞くが、ギフトホルダーのみの精鋭のみで構成される部隊は公式には警察も自衛隊も認めていない。


各国が戦力として保持しているのは暗黙の了解であったが、要らぬ誤解を与えないためと某国を刺激しないために公表していない。有志で構成されるギフトホルダーによる相互補助組織はあるが一般人(ノーマル)に悪感情を抱かせないため公営はされていない。


崇人の一撃は女子の自分にはない力があるが、ただ振り回しているだけといった印象だ。経験者からしてみれば体系的な格闘技を習ったことはないと見抜ける動作だが明らかに自分の方が分が悪い。ギフトによるものだろうが体力的に劣る自分が勝つためには己に克つしかない。


限界は自らが作っているのであって人間には無限の可能性があることを教えてくれたのはノーマルの師範である。男性ではあるものの現役時代の時任と戦い性差を越えた何かを感じとり精進してきた。陽菜が両親の次に尊敬している人物だ。


ギフトを発現しない時任に負け、悟りともいえる何かが自分の中でひらけたのだと師範は語った。差別主義者はいるもののノーマルだとかギフトホルダーだというだけで、本人を見ないで差別するのは馬鹿らしいと思うのが日本人の今の気質だが、やはり一定数は旭会の様な人間を産み出してしまうしウロボロスの様な思想主義者がでてしまうのは、人間である以上は仕方のないことなのかも知れない。


五分ほど戦っているが息が切れ始めたのはやはり陽菜である。崇人にはバトルロワイヤル特有の乱入を警戒して戦う余裕があるのに対して、陽菜は周囲を警戒する余裕は既にない。好敵手(ライバル)になれるような女子は陽菜には存在していなかったためどうしても戦うなら同年代の男子になる。


道場でも歳上を相手に練習することがあるが、やっとの思いで勝利したと思ったら対戦相手となった男子は女子に本気が出せる訳ないだろと周囲に漏らしていた。才能はあるが、練習嫌いの彼が言った言葉は負け惜しみだったのかも知れない。


だがその一言が、陽菜を本気にさせたのは間違いない。大志は紳士的に振る舞うところがあり明らかに手加減している様子だが、本気が出せる人間が少ないのであって怪我を負わせないために相手の実力に合わせて指導するかの様に戦っていたのに気付いた。

それに対して崇人は相手によって力加減をするようなタイプではない。致命的な攻撃を避ける為にギフトを発現するという繰り返しで彼の脳には負担がかかっていた。まだ異常を来たすようなレベルまでにはなっていないが脳を護る為に本能的にギフトを抑制し、発現不可能なレベルまで追い込まれるのは女子では陽菜が初めてだった。


女子に負ける訳には行かないし、チームメイトを誘った手前、逃げる訳にも行かない。間の悪い事に実継と彰・小次郎の三名が乱入して来なければ戦闘不能になっていた可能性がある。陽菜は消耗していた所に加えて彰が放ったペイント弾に当たり戦闘不能の判定を受ける。予想外の結末に納得の行かない陽菜であったが、今の実力を再確認できただけで良しとすることにした。


可能性はまだある。護られるばかりは自分の性分ではないし、成長できるだけの伸びしろはまだあるのだ。勝利したあとの様な達成感を感じながら着替えるために更衣室へと向かう陽菜であった。

陽菜は敗退したが試合はまだまだ続く。残り時間は半分を過ぎ、脱落するチームも見受けられる。戦闘不能になり、手が空いた生徒はシャワーを浴びるものやチームメイトの戦闘を見守るものなど様々だ。


会場を警備する柳達が異常を感知するのはもう少し先のことになる。林檎を誘拐し、練度ではヤタガラスに劣るとはいえ中国の特殊部隊員を皆殺しにした張本人が超能力開発幼年学校に侵入するまであと僅か過激思想を持つ彼の有名な組織ウロボロスが初めて日本で活動した事が公式に認められた事件の幕開けとなるのであった。


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