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二十五話

大志の次の対戦相手は四年生となり、実継(さねつぐ)の対戦相手は同じ一年生の崇人たかひとになった。大志からしてみれば未知の相手で優勝にそこまでこだわっていない大志は相手の能力を調べていない。実戦において相手のギフトがわかっていることは稀であり、あらゆる状況に対応するため敢えてしていないのだ。


戦闘を通じて調べることができるので大志からしてみればそれでなんの問題もない。実継の対戦相手である崇人はクラスメイトで良く知った相手であるだけに対応もとりやすく対策もとりやすい状況にあるため試合はどう転ぶかは未知数である。


「実継の対戦相手は崇人くんだろ。勝算はあるのか?」


「お互いギフトを知っていてやり辛いところはあるだろうが、勝算は勿論あるよ。その為に慣れない格闘訓練をこなしてきたし、仙崎先生に特訓して貰っていた訳だし。」


「確かに最初に比べると大分ましになったのは事実だな。佐竹くんには勝てないものの村中くんなら勝つことも不可能ではないんではないかな」


大志の言い分は最もであり、それだけ実継が努力を欠かさなかったということである。苺も護身術として合気道を習っていたが勝てるのは同学年の女子がやっとであり、男子では相手にならない。苺と親しくしている陽菜(はるな)は腐女子ではあるが空手を習っており同学年の男子であれば、敵わないぐらいの実力があることには驚いた。神崎の両親はノーマルだが自分の身ぐらいは護れたほうが良いため習わしたそうだが、初めて半年くらいでそこまでの強さを手に入れたとなると努力はもとより本人に才能があったのだろう。


勿論、小学低学年の間は男女間でそれほど力の差が存在しないことも大きな理由だろう。成長するにつれて男女の性差による不利は出てくるようになり今までの様に簡単に勝てなくなるだろうが、その時に乗り越えられるように日々の鍛練をかかさなければ無駄になることはないだろう。


苺に親友が出来たことは喜ばしいことだが苺を同じ趣味の道に引き込まれないように警戒する必要はある。実継と一緒にいると熱っぽい視線を向けられるのには害がないと分かっていても少し不愉快なものになる。陽菜も男性が好きでBLはあくまでも趣味らしいのだが、本当の所は心を覗かない限りは分からないので警戒しておくに越したことはないだろう。


今回、大志はシューティングを選択したため器具の受け取りに大会本部まで来ている。


「一年、倉橋大志です。ペイント銃を受け取りに来ました」


大会実行委員の六年がペイント銃とペイント弾を渡してくれる。大志は少し早めに来て試射をするつもりだ。障害物のあるフィールドで戦うことになるが、銃にもそれぞれの癖が存在するため銃に合わせて戦う必要があるからだ。


八発ごとに装填しなくてはならない形式のため、マガジンも五つ渡される。先に十ポイント得た方の勝利となり頭と心臓が五ポイントで残りの部位は二ポイントとなる。マガジンが多く渡されるのは、反動がほとんどないと言っても良い代物ではあるが、近づかない限りは対象に当てることも難しいためである。


大志は本職とのサバイバルゲームで鍛えられてはいるものの怪我をすることを嫌う楓の方針で、殆んどがVR上のものであるため調整が必要になる。ルール上は直接攻撃も可能であるため、プロテクターとゴーグルを着用しての戦闘になる。


対戦が始まる十分前となった。準備を済まして今は怪我を防止するための柔軟体操をすることで心を落ち着けている。適度の緊張は必要だが過度の緊張は動きを阻害する。相手が確実に勝ちにくる試合は多少の緊張感を大志に与えてくれた。


そして会場へと移動する。屋内に建てられた急造のキルハウスがそこにはあった。急襲も可能だが、ゴーグルによって視界は限定される。罠を仕掛け優位に戦闘を進むる為に軽く目星をつけておく。既に一度使われたのか、ペイント弾の後があり清掃は全試合が終了してから行われる予定なのか少し汚れていた。


二回戦開始まであと僅か大志は高揚していた。


戦いの前にモチベーションを上げることは毎度のことではないが、相手が上級生ということもあって気合いが入る。負けるよりかは当然、勝った方が良いのは言うまでもないことだろう。


四年生である対戦相手は次に戦うのが大志だと知って気合いが入っている。気をつけてなくてはならないことは大志を格下だと思わずに戦うことだ。そうでないと【下落ち】と呼ばれる下級生に無様に負けた者として周囲に認識されることになるのだ。


またしても審判となる時任ときとうは、二人が遮蔽物に隠れたことを認識すると試合開始を告げる。キルハウスに改造された校舎には監視カメラが取りつけられ、対戦の様子を中継している。


「始まりましたね。倉橋さん。今回のポイントはずばりなんでしょうか?」


「いかに自分の身を遮蔽物に隠しながら相手を誘い出すことがポイントになるでしょう」


大志は相手が遮蔽物から身を乗り出して来ないことに舌打ちをしながら相手が動いてくれないのなら動かざる終えない状況にするば良いだけなので相手に悟られないように動き始める。四年生は年下に負けられないと思うばかりに動けないでいる。


ペイント銃には、銃を扱うのに慣れていないものの為に、赤外線レーザーが取りつけられており、照準が此方を探すかのように動いており、迂濶な行動をとれば即座に撃たれることは目に見えていた。

試合が始まる前に対戦相手がどの様にして勝利を納めたか確認しており、もし肉弾戦になろうものなら、簡単に制圧されてしまうだろう。


四年生は国際基準に当てはめるとレベル二のギフトキャンセラーだ。対ギフトホルダー戦に於いては使いどころの難しい能力になる。有効範囲もそこまで広くなく、ギフトを発揮するためには近付いて発現する必要がでてくるのにも関わらず、近づけば負ける可能性が高いとあっては、距離をとらざるおえない。


大志は相手がそれほど接近戦が得意ではないことを見抜いていた。赤外線が無くてもペイント弾を相手に当てることなど今の大志からしてみれば難しいことではない。元々、校舎として普段使用されている建物なので、鏡が設置されており、わざと屈折させて位置を誤認させるために利用しているだけだ。


対戦相手の四年生は勇気を出して留まっていた遮蔽物から出る決心をするがその頃には大志の居場所を目視出来ないでいた。当然、探しだすために足音やレーダー照射されている部分を目安に探すことになる。


大志の作戦にまんまと嵌まってしまう四年生だったが、上級生の意地なのか確実に当たるはずだったペイント弾を避け、闇雲に撃ったペイント弾が当たり二点リードすることになる。ここで再装填をしているうちに大志のペイント弾を被弾し二対二になってしまう。


大志は盲撃ちをする必要もないため冷静になって攻撃しているのに対して四年生はがく撃ちになっており見当違いのところに当てている。通路の角は死角になっており、進むのに普通なら神経を遣うがそれどころではないのか、無防備に身体を晒しさらに二点を大志に得点され、二対四と逆転を許してしまった。


ここまで来てしまえば後は大志の一方的な攻撃で終わるはずだった。四年生がギフトを発現させるそのときまでは。


話は変わってしまうが、世界には自分に似た人間が三人はいるとされている。勿論、俗説で一卵双生児でもないかぎりは例え兄弟であっても似ているだけで全くの他人である。ドッペルゲンガーが存在するのか科学的に実証はできてはいないが、ギフトホルダーの中にはもう一人の自分とも言える(シャドー)を扱えるものがいる。


今回の対戦相手である米田郁(よねだいく)は【ダブル】と【ギフトキャンセル】の二つの能力をもつダブルホルダーであった。大会のルール上は問題ないが、シャドーの被弾は本人の被弾としてカウントされ、的が二つに増え危険は増える。ぎりぎりまで発現しなかったのは、シャドーをコントロールするのには、集中力を要し、大志の油断を誘うためそして逆転の布石にするためである。


背後をとったと攻撃態勢に入った大志の背後を逆にとりヘッドショットを見事に決めた。大志は油断していた訳ではなく、相手のギフトを調べていなかっただけだ。実戦であったとしたら即死していた可能性があり自身への不甲斐なさから思わず殺気をだしてしまう大志。


解説は続いており先程の攻撃の顛末に関して自身の意見を述べている大河であるが、大志の雰囲気の変化を読み取り警備に当たっている部下に対して動くなと命令を出した。


実戦経験を得てやむ無く相手を殺害してしまった隊員もヤタガラスには在籍している。強烈な殺気を発して相手を威圧する気当ても萎縮しないように耐性をつけるべく訓練を行った大志とは違い米田は訓練はしているものの普通の小学生であり、まだ専用の護衛官によって護られている存在である。


萎縮した人間に容赦なくペイント弾を当て七対十で試合は終了となった。冷静になった大志はやってしまったと後悔するが時間は決して戻らない。父、大河がこの試合を見ていない訳はないし、柳も要も見ているだろう。


自衛隊関係者からしてみれば逸材であるが、一般人からしてみれば恐怖の対象にしかならない。特にギフトを発現できないノーマルからしてみれば、畏怖の対象にしかならない。


自分の行動を反省すると同時に勝ち名乗りを受けて対戦会場を後にする大志であった。次の対戦は実継である。実継は直前までの試合を観戦していたが、終盤に大志の雰囲気が変わり対戦相手の米田の動きが鈍ったのを決して見逃さなかった。その観察力こそが実継の長所であり、戦術を選択するために要に鍛えられた部分だ。


このままいっても大志と対戦する前に負ける可能性があったためそこまで神経質になってはいなかったがまずは目の前の試合を勝ちに行く実継であった。


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