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二十一話

実継さねつぐはやっとの思いで大志に話しかけることに成功した。個人戦のエントリーは既に済ませ、チーム戦の登録をするだけという状況であったが、実継はクラスメイトとチームを組むことより大志とチームを組むことを重要視していた為に断っていた。実継からしてみれば、クラスメイトは優秀であり、自分と遜色のない実力を持っている。


実力と言っても方向性が違うだけでありそこはノーマルだろうがギフトホルダーだろうが関係はない。クラス対抗戦で自分が代表を務めたのは機械端末により情報が入ってくる中で必要とそうでない情報を処理し適切な指揮が執ることをクラスメイトが期待してのことであり自分以外にもし大志が同じクラスであったとしたら自分が有利なギフトを保有していたとしても代表に大志が選ばれただろうと考えている。対抗戦後すこし話をする機会があったが本人の行動と全体を把握する能力から自分の考えが間違いでないことを確信する。


対抗戦のルール上、トイレの中で戦闘することは問題にならないし休憩時間が定められている訳でもない。油断した実継が悪いのであって大志を責めるのは違うと考えていた。クラスメイトは油断していたことを認めたくないのか卑怯だと言う者もいたが大志の実力を疑っている者は少ない。仙崎先生の個人授業を受けている関係上一クラスに行く機会が増えた。明らかに佐竹彰とその腰巾着とも言える鶴若小次郎は大志の事を敵視しているがクラス内での発言力はそこまで高くないようだった。クラス対抗戦の結果で低くなったと言った方が正確なのかもしれない。大志がクラス代表を務めていればニクラスは例年通りに全滅となって敗北していただろう。


クラス代表はクラス対抗戦の一週間前に発表されているが代表者が佐竹彰だったことを意外に思いクラスメイトと共に情報収集を行った。クラス対抗戦の商品が魅力的なものであるとはいえ同じギフトホルダーでギフトホルダーの世界はノーマルの世界に比べると狭いため幼くても分別のある行動をとることを教育される。いま彰が大志を敵視し嫌がらせ行為を行っているが担任である要も実習の際には二人と組ませないなどの配慮はしている。それが例え大志が本気を出さなくても軽く彰をあしらえることを知っていたとしてもだ。


狭い世界で実力がないものは淘汰される世界でもある。大河や要はそんな世界で自分の実力を誇示し生き残ってきたに過ぎない。銃を持って人を殺した経験があるものは自衛官の中でも少ないが、自衛隊に対して行われた執拗な自爆テロや市民に紛れてのゲリラ戦ノーマル・ギフトホルダーに限らず敵対する者を殺さないと次に死ぬのは自分自身かも知れないし同僚かも知れないのだ。戦闘地域へのPKO活動は日本はあくまでも内戦などにより住む場所を無くした者たちの支援が主な任務であり、指揮官が大河であったため隊員を無事に日本に帰還させることを主眼においた作戦で死者を出さなくて済んだのだ。


「倉橋君、少し君と個人的に話がしたいんだが、時間はある?」


実継は人見知りではないが大志がクラスメイトとも積極的に交流を深めるタイプでないことを知っているため話はしたことはあるがそこまで深い関係でないため名字で呼ぶことにしている。普段、一緒にいる特定の生徒は大志にはいない。強いていえば木野苺と仲が良いというぐらいだろう。


「小澤君。申し訳ないんだけどこの後は仙崎先生と個人訓練があるんだ。そのあとでよければ話ぐらいはできるよ。」


大志からしてみれば話の内容はチーム対抗戦の件以外に考えられなかった。実力を考えても実継はチームを組むうえで問題ないだろう。少し問題があるとしたら林檎さんに頼まれた件で了承するかどうかに尽きる。


「分かった。僕は武道館で自主練をしているから終わったら来てくれると助かる」


実継は普段、要の個人授業を受けてから寮に帰る生活をしている。要は大志と違い実継には体よりも頭を鍛える必要性を感じており、戦術・戦略を学ばしている。実践だとどうしても怪我や機密の関係上好ましくない問題が発生するので実継はVR上での訓練を積んでいる。国民に閲覧許可が出ている過去の戦争や戦闘から指揮官がとるべきであった行動、防衛のためには兵器の特性を知っている必要があるのでVR訓練で行っている。とは言っても限りなく本物に近い偽物として拳銃などの兵器をVR上で使用する許可がでている。その為VR上での兵器に慣れてしまうと現実で使用するときに齟齬が出るので自衛隊関係者には推奨していない。


そもそも訓練用の軍事VRも用意されており痛覚を制限させる機能を持つほかは殆ど現実と変わらない状況での訓練は可能だが、あくまでも正規に任官しているものでないと扱えないようにプロテクトが掛けられているため大志や実継が使用することはできない。自衛隊士官学校生の訓練もここで行われ適性のないものは技術系へとシフトされる仕組みをとっている。このシステムを構築したのはノーマルの人間でありその頃はまだギフトホルダーは存在していなかったので創った人物は相当の天才とされているが経歴が一切不明とされている。分かっているのは二五世紀頃に生存していた可能性が高いということだけである。


良く分からないシステムを使用することに嫌悪感をあらわにする人間は懐古派と呼ばれる存在となったが今のVRシステムの基幹システムとなっており、VR自体に抵抗感のある人間は殆どいなくなっている。なぜなら安全性は現代のクラッカーがあらゆる攻撃をしても脆弱性を発見できないだろうというのがハッカーたちの常識であり事実であるからだ。小説にあるようなデスゲームなどは大志達が生活する世界において無縁だった。


実継は要との訓練がない今日は自主練をすることに決めていたが親が許可さえくれればとあるVRゲームをプレイしようと計画していた。そのためには個人・チーム戦で優秀な成績を残しておくことは無駄なことではない。タイトル名は【ブループラネット】地球外生命体との交流や個人として生活することを可能としたタイトルだ。このゲームが人気なのは現実に近い行動が取れファンタジー要素が一部に制限され、ゲームマネーをリアルマネーへと換金することが世界中において合法とされているからだ。VRシステムを構築されたとされる人物が自作し五世紀近くもの年月が経っているのにも関わらずタイトルが廃れないのはこのゲームの中において財を成した人物が現実世界でも成功しているからだ。


その人物はゲーム上とは言え惑星一つを支配し、経済規模もものすごくでかい。ビックタイトルだけあって現実世界の企業も広告を出すことで自社製品の宣伝をすることに余念がないことも少しは影響しているだろう。


実継の親はVRゲームをやることに否定的であり訓練に使うのでさえ嫌う傾向にあった。実践を経験している自衛官は少しの違和感が死につながることがあることを十分に理解しており、実継が任官した後のことを考えてのことだろう。実継からしてみれば様々な条件を設定でき訓練できるVR訓練は過信することは危険だが、現実世界での訓練と変わらないと考えている。


災害派遣をされ要救助者を捜索することがある陸上自衛官が災害訓練をするために実際の天災が起こらないとできないのは本末転倒である。救護訓練に関しても今までの医療データの積み重ねから発展してした技術であるため多角的な判断と様々な状況下においての判断できる指揮官を育成する為に必要になる。実際、ヤタガラスではVR訓練を積極的に取り入れている部隊である。実際の身体強化能力の具現化などできない部分があるので現実とは多少違うがギフトホルダーによるテロ事件を想定し、訓練している。その際には現実世界で使えるギフトは使えないため通常の重火器による制圧訓練となるがやらないよりはやった方がましであるし実際にどの様に手に入れたかは分からないが、CGID(反ギフト無効装置)により人質の救出失敗という痛ましい事件がアメリカでは起こっている。


大志には悪いが実継はチーム対抗戦で優勝して商品であるVRソフト【ブループラネット】を手に入れるつもりだ。そして交友することで更に大志と仲良くなりたいと考えていた。超能力開発幼年学校や自衛隊士官学校の人間関係が将来の派閥になっていることもあって出世したいと考えている実継は大志と仲良くなることは決して悪い訳ではない。父は三等陸佐でノーマルだが防衛大出身でありノーマルの自衛官の知り合いは少なくないがギフトホルダーの知り合いは多くはない。


自衛隊内でノーマルとギフトホルダーは対立している訳でもなく雄三と橋本の様に指揮官・副官として組まされることも少なくはない。ギフトという特殊能力を保有しているギフトホルダーはノーマルの自衛官に比べると出世は早い。そのことについての善悪は別として優秀なノーマルもいれば無能なギフトホルダーもいると言う現実を受け入れない自衛官は早々に退官していく。国枝大臣のようにギフトホルダーで将来出世が約束されていたにもかかわらず退官して政治の道に進む者もいるが国枝大臣の父が国会議員であって票田を引き継ぐことができたため防衛大臣になれたに過ぎない。


武道館で適度に汗を掻いていると訓練を終えた大志が要を連れてやってきた。


「小澤君。大志とともにチーム対抗戦にエントリーするつもりかな?僕の個人授業を受けている上級生は少ないがいないわけでもないし一年生から優勝することは、学年別はできても総合優勝はできないのではないかな」


「仙崎先生。それは尤もだと思います。しかしクラス対抗戦では佐竹くんが失態を起こさない限りは良くて引き分けだったと考えています。それは倉橋君が僕が考えていた戦術を見切って行動していた結果であり、短期戦を選ばれていたら善戦することなく敗北していたはずです」


「小澤君。それは買いかぶりすぎだよ。僕は対抗戦で活躍することを望んでいたわけでもないしましてコントロールしていた訳でもないよ。昔から仙崎先生を始めとした父さんの知り合いに鍛えてもらう機会が多かったに過ぎないよ。」


「僕は仙崎先生に話している通り、自衛隊士官学校を経て仙崎先生のような副官になりたいんです。僕は指揮官を務められてもギフトの特性上、機械頼りになります。それならば参謀として指揮官を補佐する方が有益であり国益にかなうものだと信じています」


要は実継にもちゃんとした指揮官の素質を認めているし戦術プログラムを国に許可を経て使わせている。部隊を指揮すると言ってもNPC相手と実際の人間相手では勝手が異なるだろうが本質的な判断さえできていればそれは問題ではない。経験がないから判断を誤るのであり、実戦経験を積んで成長した教え子も少なくない。


「大志。ここは実継くんと組んでチーム対抗戦に出場することも悪いことではないと思うよ。何を懸念しているかは分からないが実際にやってみないとわからないこともあるだろう」


「小澤君の話が対抗戦の話だとは限らないじゃないですか。仙崎先生もしかしたらVRゲームを一緒にやろうとか訓練に関係のない話かもしれないですよ」


目的を見透かされたのかなと少し挙動不審になるが人気タイトルで入手困難なため、是が非でも手に入れようとする生徒は少なくない。国がスポンサーになっており優秀な人材がゲーム内の経験を積んで誕生した結果も踏まえて学年別優勝者にはソフトを総合優勝者にはVR機器とセットで賞品として贈られている。


少し自棄になりながらも一緒にチーム対抗戦に参加しないかと勧誘する実継の姿が武道館にあった。


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