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十三話

十二月十一日 午前八時


大志は学校の警備をしていた椎名と分隊長の柳に護衛される形で超能力開発幼年学校から首相官邸への移動をする。苺のメンタルケアは杉崎に一任され、大志が学校を休んで校外にでたのは先に行われたクラス対抗戦での映像をみた自衛隊士官学校の教官に誘われ見学に行くという建前のもと行われた。


要が情報処理を行うため留守にしていることもあってこの場の指揮権は白虎に委譲されることになる。白虎も普通の警官と同じように制服を着て校内を巡回している。警備が薄くなったところで再度の襲撃・誘拐があっては国家の沽券に関わるので自衛隊には常にスクランブル発進できるように手配され、首都圏の主要施設には警戒宣言を秘密裏に出している。


官邸主導による非常宣言も既に用意され、避難誘導の訓練と情報開示の手段構築も済んでいる。首相官邸にはいくつもの部品にばらされた量子コンピュータが設置され大志の到着を待っていた。従来の計算なら複数のパソコンを大量に並立化させるかスーパーコンピュータを使えば何とかなるが、あらゆる可能性を考え状況から最も適切な答えを導き出すには量子コンピュータが必要になるからだ。


大志は量子コンピュータなど使用したことはない。一般的な家庭用コンピュータを使ったことがあるだけだ。複数処理を持つギフトホルダーでも入力すべき情報が多すぎて回答を得ることはできなかった。量子コンピュータ自体はある程度の予算があれば作ることはできるがもっぱらは研究用でそこまでのスペックを必要することはまずない。ナノマシンの設計やDNAの解析・ウイルス解析などに使われ才能研究機関に用意されていた一台を首相官邸に持ってくることにしたのだ。


「うーん。使ったことないからやってみて覚えるしかないか。」


スペックの違いに戸惑いながらも要達が入手した情報を元に学校周辺の監視カメラにハッキングをかける。事件を公にしていないので監視カメラの情報はNシステムの情報が殆どで残りは巡回していたパトカーのドライブレコーダーからのもので正しい回答を得ようとしたら情報は足りない。


家庭用・業務用コンピュータにハッキングを掛けて更にスペックの向上を図る。法務大臣の署名による超法規規定行為のため今回のハッキングで大志が罪に問われることはない。発信源を特定されない為に第三国を経由して行っているためにスピードは遅いがこれでも十分な情報を集めるのに一時間程で済んだ。中国船の経路を調べ中国の領海から日本の領海に入った時に誤魔化すためなのか漁船ソナーをはなっており海上自衛隊によって航路の特定はできた。


入港した経路から超能力開発幼年学校への侵入、木野林檎の誘拐・逃亡のシュミレートを行っていく。やはり要が予測したようにマインドジャックやギフトキャンセラーが居た可能性が高い。問題は学校の中ではギフトの使用はGIDにより無効化もしくは弱体化されることだ。生徒が行った場合には罰則規定があり、ギフトを使用した際に発せられる波長を機械が感知していないことも疑問に残る。例外的に護衛の任に着くヤタガラス隊員・大志の個人護衛官である要は携帯用CGIDの携帯も認められている。いざという時にギフトが使えないと侵入者に対して遅れをとるからだ。


学校とは言え国家機密を有する重要施設であることから仮想敵国の侵入を予測した防衛体制をとっているが本格的な侵攻と捉えられかねないことはしないだろうということが国としての見解であり、自衛隊高官の考えであった。自衛官が急行できるよう緊急速報装置も付けられ学校内の重要施設には必ずついている。警察も校外を巡回し不用意に近づこうとする人間は職質の対象にすらなる。どこかの国の大使館並みのセキュリティは備えているのだ。そうでなくてはギフトを目的とした犯罪から未熟なギフトホルダーを護る事は出来ず、将来的にも国益を損なう事になるために当然の処置と言えた。


要が監視カメラの情報を解析し情報解析官も機械に対してのハッキングはないと断言している。スタンドアローン型で外部から侵入できるような構造になっていない。光化学迷彩を使用すれば姿は見えないがサーモグラフィによって温度の異常を検知される。温度も誤魔化せる光化学迷彩もないことはないがバッテリーの問題から短時間での運用しか考慮されていない。


電撃作戦と考え取敢えず生徒を誘拐するなら有効な手段ではあるがリスクに対してのリターンに問題が残るだろう。自分に対する諜報活動の可能性も考えないことはないが護衛官がついていることは承知しているだろう。シングルホルダーは専用の護衛官はつかないことが多いが、海自出身者を多く輩出する木野家に国が配慮した結果もあって木野林檎・苺には女性自衛官が護衛についていたはずだ。


しかしこの女性自衛官も専任ではあるが休みも必要になるので、交代するはずだ。その交代の時間を狙われ、交代するはずの自衛官が何らかの原因で用意できず代役としてきたものが、この犯行に関わっていたとしたらどうだろう。可能性としてはものすごく低い。この時代ではすでに純粋な民族という概念は希薄になってきている。周辺国との国際結婚は以前に比べると増加し、混血が進んできたからだ。


日本は二九〇〇年代の混乱当初に他国民を難民として受け入れ、特別措置法を施行して日本国籍の取得の条件緩和を行った歴史がある。有識者からは国防の観念から仮想敵国から難民になりすました工作員が潜伏する可能性をしていたが、当時の与党は野党の反対を押し切った。結果は概ね良好で世界から称賛の声も多くあがった。


中国は未だに日本を仮想敵国としている経済的に敵わないとなると今の人からみても過去の出来事である日中戦争の話をしだす。韓国も同様に慰安婦問題で日本を批判していた時期があったが政府主導で米国に行っていた慰安婦問題が国内の批判を受けるようになると日本に対しての政策を転換させるようになる。過去の事に拘ることも悪いことではない。ただ日本は韓国に対して十分な補償をしているのは韓国自体も分かっていることだ。徴兵制度を続けている韓国だが年々その質は落ちている。北朝鮮との軍事的緊張は未だ続いており東西に分けられ統治されていたドイツがベルリンの壁崩壊を契機に統合を果たしたが南北の民族統一は起こりそうになかった。


陸続きで戦争になりかねないような火種を千年以上抱えている韓国は他国の領土を占領する余裕は既にない。むしろ中国は共産党を中心に増えすぎた人口を一人っ子政策で抑制しようとしたが、結局のところは罰金を払えない一般層の一子以降は国籍を持たない子を生みだすだけに終わった。科学の発展により国民が飢えることはないが、よりよい生活を望むのが人間であり上を見たら際限がないのはどの国でも同じことだ。


「防衛省のアクセス権限が欲しい。要さんに言って用意できませんか?」


要はいまだに情報統制室で情報の洗い出しを行っている。大志が判断する情報を少しでも多く収集する為であり、大人として八歳の子供に全てを任すことは今まで国防を担ってきた大人として許容できるものでなかったからだ。


情報処理のスペシャリストである公安に所属する刑事は国枝防衛大臣から預かっていたセキュリティコードを渡す。


「国枝防衛大臣のアクセス権限を君に請求された場合、渡すように指示を受けている。一日ごとに変わるから注意したまえ」


大志はセキュリティコードを受け取り処理に戻る。いくら量子コンピュータを使っていても防衛省のセキュリティは堅く不必要な時間の浪費を避けられるに越したことはない。急遽交替した隊員の出生から入庁までのデータを手に入れ精査していく。やはり彼女は在日三世とも言える存在で祖父母がギフトホルダーで中国から日本へと移住してきている。要もこのぐらいの情報ならアクセス権限を得て調べるだろうし二十一世紀とは違いネット上のデータの改ざんが難しい世の中になっているので改ざんはないと考えてよいだろう。


「このひとの祖父がギフト発現時の混乱で日本に移住してきているけど、問題はなかったの?」


公安職員は答える。


「この祖父は日本人で仕事の関係で訪中しその時に結婚して家族ごと移住したそうだ。公安のブラックリストに載っているような人物ではないし思想的に問題がある人物ではないだろう。国籍取得の際には一通りの調査は行われるので問題がないと判断され、彼女も防衛省への入庁を許可された。」


もともとあまり期待していなかった情報だけに特に気にした様子ではない大志。林檎が誘拐された時点で柳と椎名による護衛がついたので、情報収集ができなかった。子供が知るべきでないと判断した要と大河は間違ってはいない。量子コンピュータを扱えるのは大志だけではなく国内には大志と同じレベルで使えるものもいない訳ではない。距離的問題と信頼性の問題から大志に許可が下りたに過ぎない。


問題はここからだ。公安の人間に悟られないように木野雄三きのゆうぞう、三等特佐に連絡をとる必要がある。要も警告していたが中国政府は本格的に艦隊を日本領海に向け発進させている。木野三等特佐が指揮を執る昴は戦闘艦としての能力はそこまで高くない。電子戦に特化しており海戦が起きた際には臨時CICとしての機能を持つ。越権行為もいいところだが必要とされることは間違いない。


戦略核を海上で撃墜する必要があるこれはどの様な結果となろうと日本国土を防衛するために必要なことであり大河も国枝も防衛大臣として承認している事案である。衛星兵器による撃墜も技術的には不可能ではないが、精度を考えると護衛艦の管制射撃による撃墜のほうが可能性は高くなる。軍事演習の名目で日本領海に広がる海上自衛隊護衛艦群ほとんどすべての戦力を出し対中戦に備える。米国とも共同軍事演習として在日米軍も戦略艦を出している。ステルス潜水艦も出撃しており監視の目を中国に向けている。


大志は特殊暗号化したデータを護衛艦「昴」に向けて発信する特殊部隊でよく使われるこの暗号は解析されることはまずないといった信頼度だ。あとは艦長の木野三等特佐が此方の意図を読んで動いてくれるかどうかである。秘匿技術である超電導コア活躍しないことを願いながら開発された兵器の真の実力が発揮されるのは時間の問題かもしれなかった。


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