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第一章・その1・始まりとはいつも唐突なものだ。

君は『世界』というものを、どう思うだろう?

これについてはいろいろな考えを持っている人がいることだろう。

苦しいこともあるだろうし、楽しいこともあるだろう。『不幸』も『幸福』も、世界が織り成す『物語』のひとつ。

『苦しくて苦しくてどうしようもない』とき、君は何を思うだろう。

『苦しくて苦しくてどうしようもない』とき、君が一番に思い浮かぶ人―――。

それが、君の大切な人だ。

親でも、友達でも、仲間でも。

翼を持つ俺は、どうなんだろう――。

今、俺には大切な人などいない。

かつて、ありとあらゆる人々にさけずまれ、すべてを恨んだ。呪った。『世界』など、いらないと思った。

ひとつだけ。

たった一つだけ、俺にも大切な存在があった。

もう失ってしまったれど。

捨てられて―――しまったけれど。

大切だった。これ以上ないくらい。

それこそ―――死ぬほど。

でも、そんなひとはもういない

そんな俺の物語第1章。



少年が街を歩いていた。

朝の冷気が立ち込める。薄く霧がかかり、あまりいい天気ではなかった。

彼の名は、ツバサといった。

ツバサは狭い路地を、ひたすら歩く。どこに向かっているのだろうか。それとも、ただあてもなくぶらぶらと歩いているのか。

答えは、前者のほうだった。

公園。少年はそこに行き着いた。ただ公園といっても遊具と呼べるようなものはなく、あるのは3つほどのベンチと、公園の中心部に位置する、斜めに傾いた1,5mほどの金属の棒だけだ。

その棒を囲む線が直径2mほどの円になっていて、傾いた棒の先には12と書かれていた。

おそらくは、太陽時計になっていたのだろう。今は棒が傾いているので、時計としての機能は失われている。

ベンチは時計を囲むようにいちどられていた。それぞれ12,4,8が記されている場所に設置されてある。ツバサは4時の場所のベンチに座った。

ツバサはしばらくぼんやりと時計を眺めていた。

ふと、気づいた。

―――誰かいる。

誰かがいること自体は不自然なことではなかった。この公園は公共のものであり、自分以外の誰かがいることは普通にあることだ。そう、そんなことはどうでもいい。

だが。


自分がベンチに座り、しばらくたってからそいつが自分の隣に座っていたことに気づいたことは、どうでもよくなかった。


この公園、入り口はひとつしかない。ツバサが公園に入ったときに公園にいたのは、ツバサただ一人だった。さらに、太陽時計の『4』に位置する場所は、入り口から対照的な場所だ。

つまり、『ツバサがぼんやりと時計を眺める』という行為は、『常に公園の入り口を眺める』という行為にもなる。なので誰かが公園に入ってきた場合、すぐさま気づくはずだ。

しかし、今の今まで気づかなかった。そいつが自分の隣に座るまで。

そいつは少年だった。くろいふくをきていて、黒くて長い髪をしている。

黒い少年は言う。

「おはよう。お前は誰だい?」

「こちらのセリフだ。君は誰だ?」

フッと少年が笑みを見せた。

「佐藤翔平。」

「普通の名前だな。」

「嘘。ほんとは佐藤優也。」

「それも嘘か?」

「ああ、本当の名は、Eaterイーター。」

イーターか・・・・。さっきまでの名前とは一変して、変わった名前だ。イーター・・・・、意味は『喰う者』。

ツバサは言う。

「ぶっそうな名前だな。何で『喰う者』、なんだ?」

「僕だからさ。そういうお前は?」

「俺は」

「ああ、名乗らなくてもいいぞ。知ってるから。」

「知ってる?俺の名前を?」

「ああ。『ツバサ』だろ。名前の由来は、『翼が生えているから』。・・・・違うか?」

「・・・・!」

なんで初対面のやつが俺のことをそこまで知っているんだ?

ツバサは少しだが不安になってきた。こいつは何者だ?

イーターは、微笑む。

「そんなに警戒しなくてもいいぞ。」

「そうもいくか。」

「いやいや、僕はお前の味方だから大丈夫だ。」

「信用できんな。そもそも、君は何者なんだ?」

「だから、イー」

「名前じゃない!」

こいつ・・・少しずれてないか?

ツバサはため息を吐きつつ思った。そもそも、こいつはどうやってツバサに気づかれずにに彼の隣に座れたのだろうか?―――こいつの存在は謎だ。ツバサは心の底からそう思った。

「なあ、イーター。」

「何だ、ツバサ?どんな質問でも答えてやるぜ?どうやってお前に気づかれずにお前の隣に座れたのか、とか。」

「・・・・俺が聞きたかったことを先に言うな。」

「ああ、これで良いのか?えーっとな、最初からいたんだ。公園に。」

「は?」

彼は、ありえないことをさらりと言って見せた。最初からいただと?

ツバサは言う。

「馬鹿なことを言うんじゃない。俺がここに来た時にはお前の姿は見えなかった。というか、どこにも居なかったじゃないか。」

「僕を見てなかっただけだろう。」

「いや、俺は公園全体を見渡したぞ。」

「そういう意味じゃない。お前は僕を見ることが出来なかった。たったそれだけの話さ。」

見ることが、出来なかった・・・・?


いったい、どういうことなんだ?

ツバサは、この上なく厄介なことに巻き込まれそうな気がした。


次回、ものすごいことになります。

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