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十三章 廃墟と浩二=元請け

 ここが『どこ』なのか、『いつ』なのかは判らない。

 見渡す限り廃墟の街、でも『まだ』建物は影を落としているようだ。


 人影も見当たらない瓦礫だらけの道路、建物の破壊状況はミサイルや原爆などで破壊された訳では無いようだが。


 その無惨な街並みの中に、かろうじて原型をとどめたビルがポツリポツリと見受けられる。


 その原型をとどめた一つの廃ビルに、周囲を警戒しつつ入って行く人影が、見たところ戦闘服に拳銃やサブマシンガンで武装した老若男女三十名程が集まっているようだが。


 ビルの一室に全員が集まっている。

 一人の男を全員が立ったまま、円を描いて取り囲んでいる。


 その場の雰囲気から察すると、明るい話しをしているようでは無いようだ。

 

 円の中央、四十代中頃の男性が口を開いた。


「・・・俺が、単身乗り込んでみる。」


「一人でどうするんですか?」


 中央の男の正面にいる、十代後半ぐらいの若者が、慎重

かつ低いトーンで問い返す。


「・・・あいつと二人で、話しをしたいんだよ。」


「いまさら・・・何の話をしようって言うんですか?」


 今度は男の背後に位置する二十歳そこそこの女性が、感情的な強い口調を背中に浴びせた。


「昔話しをしに行くだけだよ、心配するな。」


 気負いのない穏やかな表情、まるで子供を諭すような口調で男は続けた。


「本当に話しをするだけだ、ちゃんと返ってくるから安心しな。」


「信じていいんですね、マスター。」


 誰も男の意見には賛同していないようだが、男は自分の考えを押し通したようだ。


 ◇ ◇ ◇


 連日、ワイドショーでは『空飛ぶ謎の少年発見か?』『人型宇宙人、東京を偵察か?』『三日後、地球滅亡説か?』みたいなネタで盛り上がっていた。


「この宇宙人っぽいのってさ、翔威に似とるよね?」


 ・・・ハアァァ、もう、帰ろっかな・・・学校の休み時間に空飛ぶ少年が映っているスマホの画面を見せつけられ、俺は溜息まじりにダウナー状態に陥っていた。

 浩二は昔からオカルトなどの類が大好物だったよなあ。

(そういえば、こいつはムーを欠かさず毎月買っていたなあ・・・。)


 ワイドショーの宇宙人ネタに(犯人は俺だけど・・・)

 待ってましたとおもちゃを与えられた子供の様に目をキラキラさせているワケだ。

 まあ、楽しそうでなによりだが(俺はちっとも楽しくない!)。


「相変わらず、この手のネタは大好物だな、おまえは。」


 俺も当事者じゃなかったら、一緒に盛り上がってたんだろうけど。

 なんといっても、それって・・俺・・だもんな。

 こんなにいっぱい撮られてたなんて、緊急時とはいえ甘かったな。

(でもあの場合は、どうしようもなかった気がするが。)

 挙げ句に春香はシフエに誘拐されちまうし・・・。



 なぜか、春香が誘拐された事実はねじ曲げられていた。

 誘拐では無く『ただの』失踪、行方不明扱いになってるし。

 それはなぜかと言うと、バスに乗っていた乗客全員が『あの日』の出来事を綺麗さっぱり覚えていないのだ。

(シフエの仕業だと思われるが、詳細は不明。)


 そう、あの場の出来事を覚えているのは俺だけだった・・・。

 

 春香がシフエに誘拐されたのは事実なのに、それを誰に話す事もできずにいた。

(狂言扱いされるのは必至。)


「春香の事が心配なのは判るけどね、あいつの事だから、そのうちにひょっこり帰って来るって!」


「・・・ああ、そうだよな。」


 俺だって、そのうち帰ってくるって思いたいよ。

 でも現実は、俺が春香を助けられなかっただけなんだ。

 (情けないよな・・・。)


 試しにジニスにシフエの事を尋ねてみたけど、全く知らなみたいだし、まさに打つ手無しとはこの事だ。


 シフエは最後に『何度、過去に戻っても同じだからな』って言ってたけど、本当にそうなのか?


 例えば、シフエが現れるより早く、バスに乗る前とかに俺が春香を連れて逃げたらどうなるんだ?


 それでも、シフエは春香を誘拐できるのか?どうなんだ?

 今の時点で、このだれも知らないクエスチョンのアンサーを出せるのは、俺だけか・・・。


 ・・・いっちょ、やってみるか。


 バスに乗るより前の時刻、そうだな春香が家から出発するのを待ち伏せするかな。


 よし、そうと決まれば、すぐ動くか。


 時刻設定は連れ去られた三時間前なら、まだ家にいるだろうからオッケーだな、あとは。


「浩二、俺用事が出来たから帰るわ、じゃ!」


「は?なに?どういう事ね?・・っていっちまったか・」


 翔威が走り抜けていった教室のドアに向かって。


「・ぃ・ぃ・・・・・。」


 浩二は周囲のクラスメイトに聞こえない様な小声で、何事かを呟いたようだった。

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