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83 突然話したくなった事

 こうして、百済王の事などを書いているが、話題をそれて、書きたくなった事がある。しばしわがままを許していただきたい。しかしそれは、この作品の本題から外れるものではないので安心していただきたいと思う。

 それは、継体王の没年に関する事だ。日本書紀にはこう書かれている。


 (継体)二十五年の春二月、天皇、病(おも)し。丁未ひのとのひつじ(七日)に天皇、磐余玉穂宮いわれたまほのみやかむあがりましぬ。時に年八十二。

 冬十二月の丙申ひのえさる蒴庚子ついたちかのえねのひ(五日)藍野陵あいのみささぎに葬りまつる。【ある本に云わく、天皇二十八年歳次甲寅ほしきのえとらにやどるとしに崩りましぬという。しかるをここに二十五年歳次辛亥ほしかのとのいにやどるとしに崩りましぬと云えるは、百済本記を取りて文をつくれるなり。その文に云いへらく太歳辛亥かのとのいのとし三月に、いくさ進みて安羅あらに至りて乞乇城こっとくのさしつくる。この月に高麗こまその王安こきしあんを殺す。叉、聞く日本の天皇および太子・皇子、倶に崩薨かむさりりましぬといへり。此によりて言えば辛亥かのとのいの歳は(継体)二十五年にあたる。後に勘校かんがえへむ者、知らむ。】


 (訳) 継体天皇在位二十五年の二月、天皇は病が重くなった。七日に天皇は磐余玉穂宮いわれたまほのみやで亡くなられた。時に八十二才であった。十二月の五日、藍野陵あいのみささぎに葬られた。【ある本が書くところによれば、継体天皇在位二十八年に亡くなったという。しかるに、ここに継体在位二十五年に亡くなったとあえて言うのは、百済本記の書くところによっているのだ。百済本記が書くところによれば継体在位二十五年三月に百済の軍は侵攻し安羅に至って、乞乇城こっとくのさしを築いた。この年のこの月に高句麗はその王、安を殺した。また、日本においては、天皇と太子・皇子がともに亡くなったと言う。この記事から言えば、天皇が亡くなったと書かれているのだから、継体天皇が亡くなったのは、継体天皇在位二十八年のことでなく、在位二十五年の事だったと考えられる。これについての本当のことは後世、良く考える者が知ることになるであろう】


 大和王朝には、「ある本」、つまり日本書紀の原本になる本があって、それによれば継体天皇の在位は二十八年であったと記されていたのである。しかし百済本記(現存する百済本紀ではない!言うなれば百済古記)によれば、継体天皇が在位二十五年の時、【日本天皇・太子・皇子が倶に亡くなった】と書かれているから、書紀筆者は、それでは継体天皇がなくなったのは継体天皇が在位して二十五年目の事だったと改めたと言った後、これの真実は、良く考えれば解るであろうと謎めいた言葉を記しているのである。


 筆者はこのことについて、以下のように考える。


 日本書紀、制作当時、百済本記は、わが国においてかなり流布した史書であったと思われる。その史書によれば、継体在位25年に当たる年に、天皇と太子と皇子が、一度に亡くなった記してある。それでは日本の史書に書いてある継体28年に継体天皇が亡くなったと言う記事と合わなくなってしまう。それでは書紀のフィクションがばれてしまう。ここは年代を合わせねばならないと調整したのだ。しかし、一方で太子・皇子も亡くなったという記事の調整は、なされない。そこにはある意図が隠されているのだ。だから最後に「良く考えてご覧、きっと解るよ」と言う言葉を残しているのだ。


 それは、こうである。大和国の継体王は天皇ではないと言うことを、書記編者は言いたかったのだ。








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