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66 江田船山古墳

 江田船山えたふなやま古墳は熊本県玉名郡和水町(旧菊水町)にある前方後円墳だ。葬られている三人は磐井となんらかの関係があると思える。このあたりには古墳が散在していて清原せいばる古墳群と呼ばれている。

 ほとんどが原型を留めないが、環堀あとの大きさから言えば江田船山古墳全長62㍍後円部直径40㍍虚空蔵塚古墳全長53㍍後円部直径33㍍塚坊主古墳全長44㍍後円部直径30㍍などである。

 江田船山古墳は、古墳の周りには短甲(上半身を覆うよろい)を着けた武人の石人(石で彫った人形)が囲んでいる。

 古墳の周りに石人、石馬を配置する形式は石人山古墳(筑後市・130㍍)に始まり、磐井の墓であるとされる岩戸山古墳(八女市132㍍)をもって終わる。したがってこの形式の古墳は、磐井の王家(倭国)と密接な関係を持った古墳と推測できる。

 江田船山古墳の1873年(明治6年)に発掘された遺物は、百済の武寧王稜と酷似した品物である事が判明する。また大刀に銀象嵌ぎんぞうがん(刻あとに銀をすりこんだ意匠)の文が、驚きの内容を持っていることが解明されるのである。 その大刀にはこう刻まれている。


 治(台?)天下獲(復?)□□□ 鹵大王世奉事(為?)典曹人名无利(?)弓八月中用大鐵釜井四尺廷(?)刀八十練九(?)十振三寸上好利(?)刀服此刀者長壽子孫洋(?)洋(?)得□恩也不失其所統作刀者名伊太和(?)書者張安也 (読解は東野治之氏による)

 

 訳 天下を治めるワカタケル大王(雄略大王)の世、典曹に奉じる人、名は天利弓、八月中、大鉄釜井を用い四尺の刀を作る。八十たび練り、九十振るう。鋭利な幅三寸の上刀である。この刀を着けるものは長寿であって、子孫まで栄えて治める事がうまくいく。大刀を作ったのは伊太和、文を書いた者は張安である。


この文が何故ワカタケルと読めるかについては埼玉県行田市の埼玉古墳群の前方後円墳、稲荷山古墳から1968年出土した鉄剣がきっかけとなった。1978年鉄剣をX線検査すると115文字の漢字が金の象嵌で表記されていることが判明した。


 辛亥年七月中記 乎獲居臣 上祖名意富比垝垝  其児多加利足尼 其児名弓巳加利(中略)【世々為杖刀人首 奉事来至今 獲加多支鹵大王寺在斯鬼宮時 吾左治天下 令作此百錬利刀 記吾奉事根原也】


 訳  辛亥年七月中記す。(先祖名が続く)私の祖先は代々、杖刀人の首を務めて今に至りました。獲加多支鹵わかたける大王が斯鬼宮しきのみやにおられる時に、私は天下を治めるのを補佐してまいりました。それで百練の切れる刀を作る事を命じました。ここに作刀の理由を書きます。



 この文があって船山古墳の鉄剣の獲□□□鹵が獲加多支鹵と判明したと言うことである。両古墳は五世紀に熊本県と埼玉県とに作られたものである、そこからそれぞれ発見された鉄剣にワカタケル大王(雄略大王)が関係する剣が登場する。このことは五世紀には雄略大王が、ほぼ全国の王の王となっていた事を示していることは推察できる事だ。


 しかしながら、この事によって、大和朝が全国制覇していたというのは間違いである。雄略王が大和朝の王であるとは限らないからである。日本書紀はその恐るべきフィクションで雄略王を大和の王としているが真実は闇の中である。実は雄略は倭国の王である可能性があるからである。又、獲加多支鹵をワカタケルとは詠まなかったという説でいえば、これは別の王であった可能性もある。

 この二つの金石文(金属や石に刻んだ文書)は王の王として(つまり大王として)何者かが全国を掌握していた。そういう状況を示しているだけである。



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