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59 人物画像鏡を東京国立博物館で見る。

 2011年1月22日(土)筆者は春を思わせるあたたかな日に東京国立博物館を訪ねた。暮れの頃から念願だった、隅田八幡神社の人物画像鏡が、この博物館に所蔵展示されているのを知り、その実物をこの眼で見たいという思いからだ。

 それは平成館にあった!ガラスケースの中に鏡はおかれていた。筆者の目から40㌢の下に画像鏡は

1500年の夢を見るように静まりかえっている。その小一時間のあいだ、私を邪魔する見学者は一人もいなかった。筆者も他の事にはそうなのであるが、この画像鏡の重大な歴史的価値を知らず、通り一遍、眼もくれずに通り過ぎた人は五十人はいた。それを良いことに筆者は画像鏡の人物画、円周の文字をしっかり堪能することができた。

 博物館の説明文には、中国製の銅鏡を模して作られた日本製の銅鏡だと書かれていることにオヤと思った。この鏡は鏡の文面が本当だとすると、百済の武寧王が、(倭国又は大和国の)日十大王年と男弟王のために【百済】で作らせたもののはずなのだが、専門家の判断ではそう言うことらしい。銅鏡は合金であり、中国製と日本製は成分がちがうようなのである。そこらに日本製と判断する根拠があるのかも知れない。


 人物の画像に関しては三カ所の古墳などで見つかった鏡が、コピー関係にあるらしいが、隅田鏡は画像はオリジナルであるかのようにすっきり角張った深い彫りになっている。他の鏡を見ていないからどちらがオリジナルかと言えば、どうもこちらが原型であるようにもみえる。銅鏡の鋳型は一度限りしか使えないからオリジナルとコピーの関係はオリジナル→コピー→コピーという関係になる。品質を保とうとすれば一点ごとにオリジナル→コピー オリジナル→コピー オリジナル→コピーをくり返さなければならない。

 円周を取り巻く文字は、あまり達筆とはいえない文字である。オリジナルから画像の鋳型を取った後

なにかとがったものがあれば円周にどのような文書も書けそうに思える。(鋳型は固形化する砂で作られる)

 このような点から考えれば偽作の可能性もなくはない。しかし、美しい人物画像は、隅田鏡に本物らしい風格を作り出していた。

 結論から言えば、隅田神宮人物画像鏡は百済の高度な技巧で作られたと断定できよう。


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