30.男たちの密談
「…ということらしい」
ライハートがリーリエとパトリシアのふたりと話した後、ライハートの執務室に集まっている、アンドリューとフェルナンドとレオナルド。
二人の前世の話を話すライハートは微妙な顔をしている。
「それはまた、予想の斜め上を行く話だね。しかも、あの完璧な令嬢パトリシアちゃんもとはね。今度、異世界の話を聞いてみよう」
アンドリューは目を輝かせて面白がっている。
「他人の婚約者をパトリシアちゃんとか馴れ馴れしく呼ぶな」
「僕たちは幼馴染だろ。ケチケチするなよ。そんなに独占欲丸出しにしてると嫌われるぞ」
顔を顰めるライハートを揶揄うようにカラカラと笑う。
「パティの話を信じない訳ではないが、二人が異世界からの転生者でここが物語の世界と似ているという荒唐無稽な話をしているなんて噂を広める訳にはいかない。だから、この話は他言無用だ」
アンドリューの軽い態度にライハートは大きなため息を吐いた。
「監禁場所が特定できたのは、以前から危険を感じていてリーリエ嬢に居場所を特定できる魔道具を持たせていたということにしようと思う」
「そう、ですね。そういう話にしておくのが無難ですね。学院中探して見つからなかったから、仕方なく、居場所を特定する魔道具を使ったと言えば、まぁ、理解してもらえますよ。多分」
フェルナンドは、そんな魔道具、ドン引きされそうだけどと複雑そうな顔をしている。
「それなら、実際に魔道具を持っていた方がいいんじゃないですか?」
レオナルドの無表情は、前世とか、物語と似た世界だとかの話を聞いても崩れない。
「元凶である元王女は捕らえているし、もう心配はないとは思うが、一応、しばらくは持ってもらうか。その魔道具は…」
ライハートは視線を感じて一旦、言葉を切ると、レオナルドがじっとこちらを見ている。
「…レオナルドに任せる。適当なのを早急に用意して渡しておいてくれ。…護衛のレオナルドから渡す方が自然だよな。うん」
触らぬ神に祟りなしとばかりに、レオナルドに一任する。
「僕が用意しても…」
アンドリューが言いかけた言葉を途中で止めた。
急に下がった気温に腕を摩る。
「……任せるよ。…氷の騎士ってこう言う意味かよ」
最後の方はぶつぶつと他の人には聞こえないくらいの声で呟いた。
「それで、あれから元王女はどうしてるんだ?」
気温が戻って、ほっと息を吐いたアンドリューは話を変えた。
「クラウディオを出せって未だに騒いでる。あの執着振りは何なんだろうな。どれだけもう亡くなってるって言っても信じない」
ライハートは疲れたように目頭を押さえた。
「あれでも元王女だから、こっちで処罰するのはまずいんだ。キルバル国に送り返してあっちでどうにかしてもらうことになると思う」
「他国の民を誘拐したって言っても、平民だとそこまでの罪には問えないのか。嫁いでいるとはいえ、元王族だからな」
「あー、それな。元王女がクラウディオに執着してるのは分かってたから、リーリエ嬢を何かあった時に守る為にメルトロー侯爵はこっそり養子縁組してたらしい。大々的に公表すると、すぐに元王女に目をつけられるから、書類上だけだけど。だから、他国の侯爵令嬢を誘拐したということで罰することになるはずだ」
「へぇ、あのリーリエちゃんが侯爵令嬢か」
「リーリエ嬢はああ見えて、短い期間とはいえマルトレイ夫人の教え子らしいぞ。姉上なんて、三日ともたなかったんだがな」
「マルトレイ夫人!」
厳しいことで有名で、王族の教育にも関わったことがあるマルトレイ夫人の教え子という意外過ぎる経歴に、アンドリューとフェルナンドは目を丸くする。
「面白過ぎるな。リーリエちゃん」
アンドリューが誰にも聞こえない声で小さく呟いた。
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本作はいよいよ、明日の【朝7時10分】の投稿をもちまして、全32話で堂々完結となります!自分がざまぁされると思い込んでいた平民ピンク髪ヒロインが迎える、最高のほのぼのハッピーエンドを、ぜひ最後まで見届けていただけると嬉しいです。明日の朝、最終回でお会いしましょう!




