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【ゲート×ソロ成長】孤独な少女は、影を纏い最強へ 〜日常の底で、刃は静かに成長する〜  作者: ショーナ・レーベン
第1章 胎動する刃

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第7話 揺らぐ

 夜、自室の机で、ノートにペンを走らせる。


 書き出したのは、今日の違和感の正体だ。


 どのゴブリンを倒しても、統率が崩れなかった。 鑑定では、どれもスキルなし。 状態は、異常(?)



 思考を整理する。


(考えられる可能性は……三つ)


 1. 最後に倒した個体が、実は中心だった可能性。

   鑑定レベルが低く、見抜けなかった。


 2. 索敵が甘く、近くに、別の個体が隠れていた。


 3. 鑑定を無効化するスキル持ちがいた。



 どれにしても。


 今の鑑定では、情報が足りない。

 そう結論づけ、視線をスマホや机、部屋の小物へと向ける。意識的に鑑定を使い続けた。


 今の私が見ている世界は、まだ解像度が低すぎる。  



*******



 その日から、目に見えたものは、なんでも鑑定していく。


 通学路にある公園。 

 通路を歩く猫。 

 食品雑貨店の食べ物。


 ただ鑑定をするのではなく、意識を向け、どのようなものか分析する。

 

 そのような生活を続けていると、それは不意に訪れた。




【スキルレベルが上昇しました】


スキル:【鑑定 Lv.1】 → 【鑑定 Lv.2】




 ホッと一息吐き、スキル説明を読む。 

 

 今まで見えていたものに加え、レベルや、より細かな状態が見えるようになる、と書かれている。


 試しに、以前起きてたのに「異常?」と出ていたクラスメイトを見てみる。



【人物鑑定:井上 花実】 

レベル:なし スキル:なし 状態:異常(痔)




(……井上さん……お疲れ様です)



 知らなくていい真実というのも、世の中にはあるらしい。人にするのは、ほどほどにしておこう。



 私はそっと意識を切り替えた。

 

 以前は「異常?」だったものが、分かるようになっている。これなら、以前のような事態を理解できるかもしれない。


 これで、少しは見えるはず。


 放課後は、装備を整え、ゲートに行くことを決めた。



*******



 ゲートに入り、洞穴の冷気を肌に受ける。

 少し寒い。


 入る前に、身体の調整はしたので動きは問題ない。 レベルが上がった分、身体はさらに軽く、景色がわずかに遅く流れる。


 洞穴に足を踏み入れると、すぐにゴブリンが一体見えた。


 足を止め、鑑定する。



【個体鑑定:ゴブリン】 

レベル:1 スキル:なし 状態:正常



 レベルが分かることを確認し、距離を詰め、静かに倒す。 


 力などは分からないが、強さの指標にはできるかもしれない。

 




 さらに奥へ進むと、動きが統率された集団を見つけた。

 数は四体。その中央に、他より一回り体格のいい個体が立っている。


 念の為、周囲の警戒をしつつ、すぐに鑑定を使う。



【個体鑑定:ゴブリン】 

レベル:5 スキル:なし 状態:正常


【個体鑑定:ゴブリン】 

レベル:4 スキル:なし 状態:異常(精神系)



 一匹だけ、他の三匹のゴブリンよりもレベルが高い。

 レベルの高い方のゴブリンをよく観察すると、わずかだが、他より大きい。 


 レベルが4のゴブリンは、全てが異常(精神系)となっている。 


 そして、周囲の個体の視線が、畏れているように、レベルが高い個体に向いていることに気づく。


(……あれが、リーダーか)



 石碑の言葉が脳裏をよぎる。  


 ——『行いを見よ』


 個々のスキルに差はなくても、役割は行動に表れる。

 石碑はおそらく、そのことを伝えていたのだろう。



 私は気配を殺し、一気にレベルが高い個体に向かって、間合いを詰めた。 


 喉元をナイフで切り裂く。


 数秒の静寂の後、残されたゴブリンたちの動きが目に見えて乱れた。 


 連携が解け、ただの魔物に戻った個体を、順番に処理していく。


 やっぱり。


 確信に近い手応え。スキルがなくても、中心を潰せば群れは崩壊する。 


 

 人間社会と同じ『仕組み』だ。



 身体に力が湧いてくる。




【レベルが上昇しました:6 → 7】


体力:+2 / 魔力:+2 / 攻撃:+3 / 防御:+1 /

敏捷:+3 / 器用:+3 / 感知:+2 / 運:+2


【ステータス】


名前:相沢 天音    レベル:7  

ジョブ:【暗殺者】  種族:人間


体力:20 / 魔力:22 / 攻撃:29 / 防御:11 /

敏捷:34 / 器用:29 / 感知:24 / 運:17


スキル:【気配遮断 Lv.2】 / 【鑑定 Lv.2】 

ユニークスキル:なし 

称号:なし


所持スキルポイント:0


経験値:36 / 700(次のレベルまで 664)




 ステータス画面を閉じ、軽く地を蹴る。 

 ナイフを何度か手の中で回転させ、レベルアップによる感覚のズレを移動の合間に馴染ませていく。



 ——油断しなければ、いける。



 仕組みを理解し、力も手に入れた。


 その全能感に、わずかだけ口角が上がった。




 だが——


 その確信はすぐに揺らぐことになる。




 さらに進んだ先。再び、統率の取れた、四体のゴブリンの群れが現れる。



(大きさを観察しても……同じ?) 



 体格差がない。 

 特別な動きをしている個体もいない。    


 即座に鑑定を飛ばす。




【個体鑑定:ゴブリン】

レベル:4 スキル:なし 状態:異常(精神系)


【個体鑑定:ゴブリン】

レベル:4 スキル:なし 状態:異常(精神系)


【個体鑑定:ゴブリン】

レベル:4 スキル:なし 状態:異常(精神系)


【個体鑑定:ゴブリン】

レベル:4 スキル:なし 状態:異常(精神系)




 ……まるで型に流し込まれたみたいに、全て同じで不気味だ。



 どういうこと? 


 私には、まだ気づいていない。 


 近くに隠れている個体はいないか、辺りを見回す。しかし、どこにも隠れている気配はない。 


 どのゴブリンを観察しても、どれかに畏れている気配がない。



(……仮説は間違っていた?)



 幸い、どの個体もレベルが低く、どれか一匹でも倒せば、そのままいけると判断する。


 実際は、どれかリーダーかもしれないし……。

 

 どの個体にも気づかれないように、影に潜む感覚をより強く意識する。


 そして駆け出す。 

 私はまず、最も近くにいた個体を仕留めた。  


 気づかれた。だが、崩れない。


 一匹の背後を二匹が即座に埋め、盾と矛の役割を瞬時に切り替える。 


 生物としての本能を感じない。

 精密機械のようなカバー。



(……気持ち悪い)



 前にいる個体を、風が通り過ぎるような速さで突き刺す。それでも、残された二匹は、仲間が死んだことなど意に介さず、冷徹に私の喉元を狙い続けた。


 背筋に、冷たいものが走る。



 ……なんで? 



 中心はいない。リーダーもいない。 

 なのに、この集団は『一つ』として動いている。



(……理解したつもりでいただけ?)



 リーダーを倒せばいい。 

 そう思ったのは、私の思い込みだったのか。  


 鑑定のレベルを上げても。 

 状態がより分かるようになっても。 


 この世界の底知れなさは、何一つ変わっていなかった。 


 これが仕組みだとするのなら、まだ一端も分かっていない。



 暗闇の中から、無数の何かに見つめられているような。  


 そんな錯覚に襲われ、私はナイフを握り直した。



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