第5話 一筋の稲妻
次の日。早朝。
今、私はスキル整理をしていた。
昨日、玉野さんに教えてもらった、「魔力を使ったスキル」を探すためだ。
スキルをノートに整理していき、候補を2つに絞った。
一つ目。
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【雷遁】
魔力を消費して使う。
武器に帯電させることができる。
即応性は高い。
また、神経を活性化させることで、
敏捷性や反射神経を大きく向上させることもできる。
その代償として、体力の消耗は著しい。
Lv.1では、
持続時間:2分
再使用可能時間:60分
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二つ目。
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【火遁】
魔力を消費して使う。
周囲に火の術を放つことができる。
発動には集中が必要。
即応性は低いが、威力は高い。
Lv.1では、
射程距離:5m
再使用可能時間:10分
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この二つで悩んでいた。
雷遁のメリットは、即応性が高い点だ。
自信のある速さを、より活かすことができる。
そのデメリットとして、
魔力以外に体力も消耗する。
クールタイムも長い。
遠距離技としても使えなさそうだ。
火遁のメリットは、
遠距離攻撃が可能になること。
雷遁より、継戦能力が高いのも良い。
デメリットとしては、
即応性の低さ。
集中が必要なため、戦いながらの使用は難しいだろう。
遠距離の攻撃手段は、まだ持っていないので欲しい。
しかし、「どうしても」というわけではない。
散々悩んだが、今は市街地戦も多い。
火遁では火事の危険性があることを考慮し、最終的には雷遁を選んだ。
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【スキル獲得:雷遁 Lv.1】
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「ふぅ」と一息つく。
時計を見ると、既に昼過ぎになっていた。
(……そういえば、昼食を食べていなかったな)
キッチンに向かい、お昼用にオムライスを作る。
食べた後は、少し休憩を入れてから、雷遁のスキル検証用にゲートに向かった。
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一度ゲート前で屈伸を入れ、準備運動などを行う。
その途中で、松田さんの言っていたことも思い出す。
『アイテムのドロップは、人の欲望に関係するらしいです』
『お金が欲しい人には金塊や魔石が。
力が欲しい人には武器や、回復薬などが主に報告されています』
……これも検証してみよう。
準備運動を終えて、ゲートに入った。
……。
中に入り、気配遮断を発動しながら歩く。
しばらく歩いていると、オークを見つけた。
まずは、欲望とアイテムドロップの検証をしよう。
鑑定を飛ばし、オークにはスキルが無いことを確認する。
(今欲しいものは、父親を回復することができる回復薬かな)
そう思いながら、オークを倒していく。
すぐにはドロップしなかったが、15体ほど倒した時に目の前に“瓶”が落ちた。
瓶を鑑定してみる。
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【物品鑑定:下級回復薬】
状態:正常 品質:特上
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……本当に、欲望が反映されるんだ。
これを父親に使えということだろうか。
今度、お見舞いに行く時に、父親に飲ませてみよう。
ポーチに保管しておく。
欲望とアイテムドロップの関連性を考え、ある仮説ができた。
何かに、心の中を覗かれている。
そうでないと、ドロップの説明がつかない。
……かなり、気持ち悪い。
麻薬などのドロップもある。
悪人、善人関係なく、ゲート内に入れば良いという意図が見える。
(ゲートって、一体何なのだろう)
そんな疑問が浮かぶ。
しかし、考えても答えは出ない。
とりあえず、雷遁を試そう。
奥に進み、またオークを発見する。
鑑定し、通常の個体なのを確認した。
雷遁を発動する。
身体から何か——おそらく魔力——が抜けていくのを感じた。
そして——手に青白い電流が走り、ナイフに伝う。
次の瞬間、ナイフが激しく紫電を放出した。
そのまま電撃を纏わせて、オークを斬る。
オークは稲妻に焼かれ、黒く焦げて倒れた。
焦げ臭い匂いが辺りに漂う。
あまりの威力に、思わず口元が緩む。
良いスキルを手に入れた。
ただ、身体から抜け落ちた魔力から考えると、雷遁は使えて1日4回くらいまでだろう。
クールタイムも現状、1時間と長いので使い所を考えないといけない。
次の検証に移るのは、まだできない。
一度ゲート外に出た。
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一度休憩を挟み、1時間が経つ。
次は、神経を活性化させてみよう。
念のため、「体力が消耗する」と書かれていたので出口付近で実験する。
オークを発見し、雷遁で自身に雷を纏わせた。
——世界から音が消えた。
色が消失し、世界がモノクロームの静止画に切り替わる。
その中で、自身の放つ紫電だけが鮮やかな紫を撒き散らしていた。
自分の心臓の音だけが、ゆっくりと鼓動を刻む。
オークに向かい跳躍した。
雷鳴が鳴り響く——そんな音すら置き去りにする。
目の前にオーク。
その瞳には、紫電を纏った私が映り込む。
オークの指一本すら動いていない。
完全に止まって見える。
——【雷遁】——
オークにナイフを滑らせる。
斬った感触はない。
抵抗を置き去りにするほどの速度。
私はナイフを軽く振り、残った紫電を払う。
一息つく。
少し遅れて、オークの体は爆ぜた。
スローモーションの中でオークが雷に焼かれていく。
そのまま、オークは全身を焼かれ消滅した。
……凄まじい強さだ。
全能感が宿り、思わずニヤリと笑う。
しかし——2分経った時だった。
体が急に、鉛のように重くなる。
眠気が一気に押し寄せてきた。
意識が朦朧とする。
これは……きつい。
諸刃の剣だと思った。
念のために、出口付近で検証して良かった。
これを何度も使うのは無理だ。
使い所を慎重にしないといけない。
(……確実に仕留められる時に、切り札として使おう)
そう決意し、ゲート外に出た。すでに外は真っ暗だ。
瞼が重い。
横になったら3秒で寝る自信がある。
ふらふらと歩きながら、なんとか家までたどり着く。
自身の部屋に入りベッドで横になる。
意識が落ちる寸前、回復薬が視界に入った。
明日のお見舞いで父親に渡そう。
父親との会話を思い出し、笑みを浮かべる。
……早く良くなるといいな。
そんなことを思いながら、私は眠った。




