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【ゲート×ソロ成長】孤独な少女は、影を纏い最強へ 〜日常の底で、刃は静かに成長する〜  作者: ショーナ・レーベン
第1章 胎動する刃

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第14話 ゲート崩壊

 フードを深く被り、全力で駆ける。 


 【闇纏い】を発動し、認識させないようにする。


 通りは騒然としていた。 瓦礫が道を塞ぎ、乗り捨てられた車が炎上している。  


 だが、今はそれどころではない。 民家の屋根を飛び越え、最短距離で父の職場を目指す。


 人の悲鳴。

 割れるガラス。

 遠くで鳴り響くサイレン。


(……本当に、外に出てきてる)


 ダンジョンという異界にのみ存在したはずの怪物が、当たり前の街を壊している。


「助けてっ!」

「くそっ! 国は何をやってるんだ!!!」


 路地の奥で、数人が追い詰められているのが見えた。  

 

 数体のオークが、濁った瞳で獲物を品定めするように笑っている。



 横を通り過ぎる、その一瞬。 



 私は歩みを止めることなく、オークたちの間を縫うようにナイフを振るった。 抵抗らしい抵抗はなく、刃は滑るように肉を断つ。


「え……?」


 背後で驚愕の声が上がったが、足を止めている場合ではない。


 私はそのまま闇に紛れて駆け抜けた。



*******



 さらに進んだ先。


 横倒しになった車の陰で、数人が一人の老人を守るように囲んでいた。 高級そうなスーツを着た、年配の男性。


 だが、守りきれていない。  


 一体のオークが巨大な手を振り上げ、男性へと迫る——。



 閃光のような一閃。  



 オークの腕が飛ぶより早く、その巨体が上下に断たれた。


「君は……」


 呆然とした年配の男性が、掠れた声で私を見上げる。 答えるつもりはない。 


 私はその場で地面を強く踏み抜き、一気にビルの壁へと跳んだ。


(……っ!)


 全力の跳躍。 あまりに急激な加速と衝撃に、ポーチのジッパーが僅かに開いた。  

 


 中から滑り落ちる、小さな財布。 



 だが、今の私にそれを拾い上げる余裕も、気づく隙もなかった。


 背後で小さな音が響いたが、私はそのまま、夜の闇へと溶けるように屋上へと跳ね上がった。



*******



 父の職場のすぐ近くまで辿り着く。  


 そこには、周囲の個体よりも一回り大きく、禍々しい威圧感を放つオークが立ち塞がっていた。



【個体鑑定:オークキング】

レベル:11

スキル:【剛力】 / 【頑強】

状態:正常



 これを倒さない限り、父を探すどころではない。 


 即座に【気配遮断】を意識し、音もなく肉薄する。


——五メートル。 オークキングが鼻をひくつかせた。 


 焦燥のあまり、風下から近づくという鉄則を忘れていた。


 目が合う。 怪物がニヤリと下卑た笑みを浮かべ、丸太のような腕を振り回した。



——でも。私の方が、圧倒的に速くて強い。



 腕が鼻先に迫った瞬間、私は足元の『影』に沈み込んだ。


「……ッ!?」


 オークキングが困惑の表情を浮かべる。


 その背後から這い出し、勢いのままナイフで首を刈り取った。  



 意味が分からないと言いたげな表情のまま、王は粒子となって霧散していく。 


 (あるじ)を失った周囲のオークたちも、連鎖するように消えていった。



「ふぅ……」


 一息ついて、すぐに自分の頬を叩く。 

 立ち止まっている場合じゃない。



*******



 【闇纏い】を解除する。


 辿り着いた父の職場は、凄惨な光景だった。

 崩落した天井、瓦礫に埋まったデスク。  


 唖然とする視界の隅で、見慣れた父の鞄が落ちているのを見つけた。


 鞄から零れ落ちていたのは



——私が子供の頃にプレゼントした、古びたキーホルダー。



(……お父さん、ずっと、これを持って……?)



 関心なんてないと思っていた。

 むしろ嫌われているとさえ思っていた。  


 でも、それは私の勘違いだったのかもしれない。



(……間に合わなかった?)



 一瞬、膝が崩れそうになる。



(……いやだ)


 手が、震える。



 でも——


(まだ、生きてるかもしれない)



 必死に瓦礫を退かす。 

 手のひらが、擦り剥ける。


 痛みなんて、感じない。



(お父さん、お父さん!)



 そして——


「うっ……」


 瓦礫の下から、父がぼんやりと目を開けた。


「お父さん!!」


 確かめるように声をかける。



「……あまね、か……」


 父は、弱々しく微笑んだ。


「おおきく、なったな……」



 大きな、温かい手が、私の頭をそっと撫でた。

 まるで、幼い頃のように。



「情けない父親で……すまない、なぁ……」


 父はそのまま、静かに意識を失った。




……。




……死なせない。 


 絶対に、死なせるもんか。




 私は意識のない父を背負い、夜の街へと駆け出した。





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