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狂化

「ふぁ~……よく寝た」


 ぐっすり眠った私は背伸びをし、大きく欠伸をした。

 寝すぎたあまり身体がバキバキ。


「あ。投稿したやつどうなったんだろう?」


 私はスマホで投稿した動画を確認する。

 そして私は……言葉を失う。


「え?」


 再生回数は一千万以上。フォロワー数十万人以上。

 しかもたくさんのコメントが来ている。

 今まででは考えられない結果を見て、私は思わず笑ってしまった。


「ハハハ……アハハハハ!」


 どうしようもない喜びが胸の奥から溢れ出す。

 自分が狂いそうなぐらい嬉しい。


「さいっこうだね!」


 私は笑った。

 笑い、笑い、笑い続けた。

 そんな時、スマホからピロン♪という音が響く。

 スマホに視線を向けた私は、目をパチパチと動かす。


「ひまわり?」


 親友であるひまわりからのラインだった。

 内容は『この後、いつものカフェで会える?』というもの。


<><><><>


 私は徒歩で十五分ぐらいのカフェにより、店内を見渡す。


「ウタ」


 ひまわりの姿を見つけた私は、彼女がいる席に向かう。


「どうしたの?呼び出して」


 椅子に座った私は定員にコーヒーを注文し、ひまわりに問い掛けた。

 ひまわりはいつもの明るい笑顔ではなく、真剣な表情を浮かべている。

 こんなひまわり……初めて見たかも。


「ウタ……今日、アップした動画なんだけど」

「ああ!見てくれた?すっごい人気でフォロワー数が十万人ぐらいになったんだよ。すごくない?」


 私は思わず親友に自慢してしまう。

 それぐらい嬉しかったから。


「そうじゃない。あの動画はなんなの!?」

「なにが?」

「あんなの……ウタらしくない。いつものウタの歌とダンスは見ている人に頑張るぞーって勇気をあげた。けど今日の動画に映っていたウタの歌とダンスは違う。馬鹿な私でもわかるよ」


 なにかに恐れた声で、ひまわりはハッキリと言う。


「あれは……人を狂わせる。聞いた人を、見た人をおかしくする」


 ああ、そう言うことね。

 ひまわりの言いたいことがよくわかった。

 

「そうだよ、私……人を狂わせるつもりであの動画を投稿したの」


 私の言葉を聞いて、ひまわりは目を大きく見開きながら額から一筋の汗を流す。


「どう……して」

「どうして……か。そうだね……狂わせたいって思ったからかな」

「狂わせたい?」

「うん。私の歌で多くの人を狂わせたい。私の踊りで多くの人を狂わせたい。そう思ったの」

「そんなの……そんなのウタらしくないよ!」


 ひまわりの悲痛な叫びがカフェの中で響き渡った。

 だけど彼女の言葉は、なぜか私の心に響かない。


「ひまわり、それは違うよ。これが本当の私だったんだよ」

「なにを……言って……」

「バイト先の探偵さんに言われたの。『君も心の中で人を狂わせたいと思っている。そうだろう?』って。私はそれを……否定することができなかったの。だから一度だけ正直にやってみたの。人を狂わせるつもりで歌ったの。そしたらね……多くの人が見てくれたの」

「ウ…タ……」


 ひまわりの顔が徐々に歪んでいく。

 まるで化物を見るような目で、私を見ていた。

 きっと私は……すごい顔をしているんだろうね。


「私に足りなかったのは、人を狂わせたいという気持ちだったんだよ」


 それが私の答え。


「正直に生きて、その上で歌い、踊らないといけなかったの」


 私は生まれながらの狂人。


「私は今まで普通の女の子として生きてきた。だけど私は()()()()()だけなんだよ」


 これが本当の私。


「私は……人を狂わせるとつもりで歌いたい、踊りたい」


 そのためなら。


「そのためなら……化物になっていい」

 読んでくれてありがとうございます。

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