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狂歌

「ふふ~ん♪ふ~ん♪」


 とあるマンションに住んでいる太陽ひまわり。

 彼女は可愛らしい服を着ており、姿見鏡に映っている自分を笑いながら見つめる。


「えへへ。今日はデートの日、楽しみだな~」


 嬉しそうに微笑むひまわりは鞄を持って、部屋を出ようとした。

 その時、ある事を思い出す。


「あ!ウタの動画を見ないと」


 ひまわりはスマホでアプリを開き、親友の歌とダンスを見ようとした。

 これは彼女の日課だ。

 親友である音姫歌の動画を見て、元気をもらう。

 確かに歌の動画は人気がない。

 しかし彼女が頑張って歌を歌い、ダンスをする姿を見ると、ひまわりは不思議と元気になった。

 だから音姫歌の動画をひまわりは愛している。

 ファン第一号である。


「あ!新しい動画がアップされている。名前は……『狂気』?なんかすごそうだね」


 ひまわりは新しく投稿された音姫歌の動画を再生させた。

 動画を見ていたひまわりは少しずつ笑顔を失う。

 そして目を大きく見開き、顔から嫌な汗を流す。


「なに……これ?」


 ひまわりが見ていた動画は、一言で言えば……凄すぎた。

 歌もダンスも一流のアイドルに負けていない。

 曲も最高クラス。

 その証拠に再生回数一千万超え。フォロワー数は十万人以上。

 だが……ひまわりは恐怖を覚えていた。


「本当に……なんなの、これは?」


 私を見ろ。

 私だけの歌を聞け。

 そして全てを狂わせろ。

 そんな強く、凶器のような危ない力が音姫歌の動画には宿っていた。


「ハァ…ハァ…ハァ……」


 ひまわりの呼吸が自然と荒くなる。

 彼女は感じていた。自分の身体を無数の手が掴まれるような気持ち悪い感覚を。

 

「くっ!」


 咄嗟にひまわりはスマホの電源を切り、強引に動画を見るのを中断する。

 彼女は本能で感じていた。

 新しく投稿された音姫歌の動画は、ただの歌とダンスではない。

 今までのような元気を与えてくれるものでもない。

 これは凶器だ。

 見ている者を洗脳させようとする凶器。


「……デートが終わったら、ウタに会わないと」


 ひまわりはバカだが、勘は鋭い。

 特に危険なことには敏感だった。

 そんな彼女の危険感知が、警報を鳴らしている。

 そして教えてくれる。

 今すぐ親友をなんとかしないと、取り返しがつかなくなると。


「ウタ……本当にどうしたの?」


 心配そうな顔をひまわりは浮かべた。


<><><><>


 とある探偵事務所で狂狼はソファーに座りながら、音姫歌が投稿した新しい動画をスマホで見ていた。


「アハハ!やっぱり君は……僕と同じだ」


 凶悪な表情で笑みを浮かべる狂狼。

 彼は愛しそうに、動画に映る歌を見つめる。


「さぁ……もっと見せてくれ。人を狂わせる歌と踊りの魔女♡」

 読んでくれてありがとうございます。

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