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後悔

 外灯に照らされた夜の道を、一人の女性—――田中光(たなかひかる)は歩いていた。

 彼女は先ほどまで夫以外の男と遊んでいたのだ。


(今日もタツヤくん……最高だったな~……)


 浮気男とデートしていた時のことを思い出し、光は頬を緩める。

 だがすぐに夫のことを思い出して光は顔を歪める。


(優助さんには悪いことをしているな)


 光が浮気をした理由は、夫が暴力を振るってきたとかではない。

 むしろ妻のために仕事を頑張っている。

 しかし仕事ばかり優先して、夫婦の時間を作れていないのだ。

 寂しさを紛らわすために出掛けた彼女は、偶然に学校の元クラスメイトであるタツヤと出会った。

 少しお話をするだけで終わるはずが、何故か盛り上がってしまい……最終的に肌を重ねる関係になってしまったのだ。


(いつかやめないと。この関係を)


 夫に黙って浮気をしている事には、光も罪悪感を抱いていた。

 だからこそ他の男と浮気するのはもうやめないと彼女は思っている。


(次、タツヤくんと会ったら……お別れしよう)


<><><><>


 家に帰った光は自然に「ただいま~」と言って、リビングに向かう。

 リビングでは夫である田中優助がお茶を飲みながら、テレビを見ていた。


「やぁ……おかえり」


 優しい笑顔を浮かべる優助を見て、光はズキリと胸が痛くなるのを感じた。


「友達と遊んでたの?」

「ええ、そうよ」

「そっか……なぁ、今度の休み……久しぶりに出かけないか?」

「え?」


 久しぶりのデートの誘いに、光は目を見開く。


「し、仕事は?」

「有休をとった。お前との時間も大切にしたいから。イヤ……だったか?」

「い、嫌じゃない」

「そうか……よかった」


 嬉しそうに微笑む夫を見て、光はまた胸が痛くなるのを感じた。


「そ、それで……どこでデートするの?」

「そうだな……あそこなんてどうだ?」

「あそこ?」

「競馬場さ」


<><><><>


 数日後、光は旦那と共に東京競馬場にやってきていた。

 多くの客が来ており、多くの人が馬券を強く握り締めている。


「ね……ねぇ?なんで競馬なのかな?」


 光は少し戸惑いながら、隣にいる夫に尋ねる。


「いや、一度も行ったことないから行ってみたいと思ってね」

「な……なるほど」

「それに賭け事もしてみたかったし。まぁ、お互い千円分だけどね」


 そう言って優助は一枚の馬券を光に見せる。

 夫に勧められ、光も馬券を買っていた。


「これが終わったら、どこかのカフェでお茶して買い物をしよう」

「そ……そうね」


 競馬なんてそう簡単に当たるわけがない。

 そう思いながら光はレースを見守った。

 馬たちは芝のレース場を走り、そしてゴールする。

 その結果、


「……当たった」


 光が持っていた馬券が当たったのだ。


「すごいじゃないか、光!」

「え、えぇ」


 生まれて初めてギャンブルをし、初めて勝った光は……今まで感じたことがない感覚を覚える。

 それが……麻薬と同じぐらいヤバイものだと、この時の光は知らなかった。


(これが……ギャンブル。なんか……楽しい)


 光は怪しい笑みを浮かべた。


 それから光はよく競馬に行くようになった。

 ほとんどは負けまくっていたが、勝った時の喜びが大きすぎるあまりやめることができない状態に。

 お金が無くなったら友人や浮気男にお金を借りていた。

 そして最終的には闇金に手を出してしまう。 

 そんなある日、


「光……別れよう」


 夫である優助が突然そう言った。

 弁護士を連れて。


「な……なんでそんなことを……というかなんで弁護士なんか」

「光……もう証拠はあるんだよ」


 優助は一枚の写真を光に見せる。

 その写真を見て、光は全身が凍るのを感じた。

 写真に写っていたのは、浮気男と光がラブホに入るところが写っている。


「光……俺は君を愛していたけど、君は俺を愛していなかったんだね」

「ち、違うの!これは!!」

「もういい。慰謝料を払って消えてくれ」


 その言葉を聞いて、光は絶望のあまりその場で泣いてしまった。

 それから光は数百万の慰謝料を優助に払い、離婚。

 離婚の原因を知った両親と友人は光と縁を切り、浮気男は離れてしまった。

 借金を背負い、天涯孤独となった彼女は風俗で身体を売る日々を過ごすことになってしまう。

 知らない男達の世話をしながら、光は後悔する。


 浮気なんてしなければよかったと。


 読んでくれてありがとうございます。

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