魅了4
幸村セイタロウは姫崎カオルと出会う度に、彼女を抱いた。
妻と娘を裏切る行為だと分かっていながら、抱くことをやめることができない男。
警視総監という立場にいながら、魅了の魔女の前では性欲の獣でしかなかった。
もう幸村は彼女なしでは生きられない人間になってしまったのだ。
そんな彼に……最悪の言葉が姫崎カオルの口から零れた。
「もう……あなたとは会えない」
その言葉を聞いて、幸村は絶望した。
警視総監という立場を失うよりも。
家族が離れるよりも。
苦しく、悲しく、狂いそうなぐらい頭がおかしくなった。
「ど、どうしてだい!?私は君になにか悪いことでも―――」
「いいえ、あなたはなにも悪くないわ」
「だったらなぜ!」教えてくれ……」
必死な表情で幸村は尋ねた。
姫崎は少し悲しそうな顔で口を動かす。
「……ある男達にあなたと会うなと言われたのよ。もし会ったら許さないって脅されているわ」
彼女の言葉を聞いて、幸村は今まで感じたことがない怒りと殺意を覚える。
(許せない。私の女を……)
殺したい。
姫崎カオルを狙う男達を己の手で殺してやりたい。
そんなドス黒い殺意が幸村の頭の中を支配する。
「姫崎くん。君は私が救う。だから教えてくれ。君を狙う男達を」
幸村が問うと、姫崎カオルは瞳を怪しく輝かせながらうっすらと笑う。
「ありがとう。あなたのことを愛してるわ」
「ああ……私もだ」
姫崎カオルを抱き締める幸村は気付いていないだろう。
自分が怒り狂った殺人鬼のような顔をしていることに。




