魅了2
姫崎カオルという美女と別れた後、幸村セイタロウは家に帰った。
ドアを開けると彼の愛する妻が出迎える。
「おかえりなさい。あなた」
「ああ……ただいま」
優しく微笑む妻を見て、幸村は胸が温かくなるのを感じた。
その時、彼は姫崎カオルの顔を思い出す。
「どうしたの?ぼーとして?」
「あ……いや、なんでもない」
幸村はリビングに移動する。
リビングにはパジャマ姿の少女がソファーに座りながら、スマホをいじっていた。
「おかえり、お父さん」
「ああ、ただいま。学校は?」
「うん、楽しいよ」
「そうか」
ニッと歯を剥きだして笑う娘を見て、幸村は思わず微笑んでしまう。
そしてまた……姫崎カオルのことを思い出してしまう。
「―――」
「お父さん?」
「あ、いや……なんでもないよ」
「?疲れてるの?」
「そうかも……な」
「なら肩をもんであげる」
「ハハハ。ありがとう」
娘にマッサージをしてもらい、妻が作った夕食を食べた幸村は風呂に入った。
湯船につかる彼はまた姫崎カオルのことを思い出す。
思い出すたびに幸村の心が熱くなる。
鼓動が早くなっていく。
(こんなにドキドキしたのは生まれて初めてかもしれない)
それは愛する妻に告白した時よりも。
娘が生まれてくる時よりも。
幸村セイタロウの心臓は激しく動いていた。
(忘れられない。彼女のことが)
忘れようとしても幸村は姫崎カオルのことを忘れることができなかった。
むしろ忘れようとすればするほど、彼の胸に痛みが走る。
(また……あのバーに行こう)




