魅了1
とあるバーで酒を飲む一人の男。
彼はお気に入りのカクテルを飲んだ後、フゥ―と息を吐く。
(まったく……ここ最近は仕事が忙しい)
彼の名は幸村セイタロウ。
警察のトップである警視総監を務めいる。
多くの実績を残し、巡査から成り上がった男。
警察の誰もが尊敬し、信頼している。
しかし……彼には裏の顔があった。
(書類仕事をしたうえ、銃や情報の横流しもして疲れた)
そう。
幸村は裏世界に生きる人間に、あらゆるものを横流ししていた。
彼がトップでいられるのも、そういった暗いことをしていたから。
もちろん幸村一人でやっているわけではない。
金や地位を求める警察の者達が手を貸している。
(バレないようにやっているし、仮にバレたとしても……消せばいい)
徹底的に暗いことは隠し、もし気付いた者がいればこの世から消す。
それが彼のやり方だった。
(これからも私は警察の王であり続ける)
幸村はグラスに入った酒を一口飲んだ。
その時、
「隣……いいかしら?」
派手な赤いドレスを着た美女が幸村に声を掛けた。
その美女は男を惑わすような甘い香水をつけており、美しい顔を化粧で更に美しくしている。
思わず幸村は見惚れてしまった。
「あ……ああ。もちろんだとも」
幸村がそう言うと、謎の美女は彼の隣に座る。
そしてお酒を注文し、一口飲む。
一つ一つの仕草がまるで芸術の如く美しい。
幸村の視線に気づいた美女はクスリと微笑む。
彼女の笑顔を見て、幸村はドキッと胸が高鳴るのを感じた。
「おじさん……ジロジロ見すぎよ?」
「す、すまない」
「ふふふ。まぁいいわ、許してあげる。その代わり……少しお話ししましょう?」
それから幸村は謎の美女と楽しく会話をした。
時間の流れがいつもより早いのを彼は感じる。
だがこの時を幸村は一生忘れることができなかった。
「もうこんな時間。そろそろ帰るわ」
美女はその場から離れようとした時、幸村は思わず問い掛けた。
「君の名は……なんだい?」
その問いに対し、謎の美女はクスリと微笑みながら答える。
「カオル。姫崎カオルよ」




