プロローグ
狂人。
それは正気ではない人のことを言う。
普通ではない。イカレている。頭がおかしい。
言い方はそれぞれだ。
しかし……果たして人間とはまともな生き物なのか?
人間という生き物は同じ生き物である牛や豚を育て、増やし、殺し、食べている。
そして犬や猫などをペットにしている。
果たして人間とは狂っていない生き物と言えるのか?
他にも戦争や環境破壊、犯罪などの問題を起こしている。
本当に人間は狂っていないのか?
否、人間は狂った生き物だ。
じゃあ、そんな狂っている生き物である人間の中で、『狂人』と呼ばれる者がどんな存在なのか。
あなたは知っている?
<><><><>
東京の駅で私は路上ライブをしていた。
スピーカーから流れる曲に合わせて、可愛らしい歌とダンスをする私―――音姫歌。
フリフリの衣装を着て、長い黒髪を揺らしながら私は笑顔で歌う。
がんばって歌って、踊る。
だけど聞いてくれる人は友人一人だけ。
あとの人は素通り。
「みんな~!ありがとう~!」
私は大声で感謝の言葉を叫ぶ。
いや、みんなって誰だよ。
観客一人だけじゃん。
言ってて恥ずかしいんだけど。悲しいんですけど。
「今日も良かったよ、親友」
笑顔を浮かべて、パチパチと拍手する女の子の友人。
うん。慰めてくれてありがとう、親友。
だけど君の優しさは私の心に大ダメージを与えているからね?
「あははは、今日もダメだったよ」
自然と口からため息をが出る。
なんでうまくいかないんだろう~。頑張っているのに。
深く落ち込んでいると、茶色の髪をポニーテイルに結んだ可愛らしい女の子は私の肩を叩く。
「まぁまぁ……とりあえずカフェに行こう?」
公衆トイレで私服に着替えた私は親友である太陽ひまわりと共に、女の子の人気のカフェにやってきていた。
注文したアイスコーヒーを一口飲み、私はまたため息を吐く。
生クリームたっぷりのパンケーキを頬張っている親友は「大丈夫?」と心配して問い掛けてくれた。
「大丈夫……ではないかな。なかなかうまくいかなくて泣きそう。アイドルになるにはまだまだかな」
「でもすごいよ、ウタは。小さい頃からアイドルになるために歌とダンスを頑張って、しかも衣装や曲まで自分で作っているし」
「でも十二年やって、結果なし。もう十七歳だし、私。オーディションもたくさん受けたのに全部ダメだった」
「大丈夫。いつかウタならあいどるになれるよ」
そう言ってひまわりは切ったパンケーキを刺したフォークを、私の口に近付ける。
「いや、私……体型維持のためにあまり食べないようにしてるし」
「今日はいいでしょ?はい、あ~ん」
「……あ~ん」
私はパンケーキを一口食べた。
ふわふわの生地と生クリームと蜂蜜の甘さが、私の口の中を幸せにする。
うぅ……路上ライブで傷ついた私の心に染みわたる。
泣きそう。
「私……好きだよ?ウタの歌とダンスは。すっごい頑張っているのが伝わってきて、見ているこっちも頑張らないとと思う」
「ひまわり」
親友の言葉を聞いて、私は頬を緩めた。
ひまわりのおかげで心が温かくなる。
本当……太陽のような奴だよ。
「ねぇ……親友。私に足りないのってなにかな?」
「ふふふ。それならわかるよ」
「なに?」
「まずブバアー!でしょ。あとグガァー!でしょ。あとはプルルン~!でしょ。あとは―――」
「もういい。聞いた私がバカだった」
そうだったよ。私の親友、いい奴なんだけどどうしようもなくバカだった。
なんだよブバアー!グガアー!プルルン~!って。
ブバアー!グガア―!は気合と根性って意味なんだろうけど、プルルン~!ってなに?もしかしておっぱいを大きくしろという意味?
うるせぇよ!どうせ私のおっぱいはAAAカップですよ。
ひまわりみたいなEカップじゃないんだよ!
そんなデカパイじゃないんだよ!
というか前よりひまわりの胸、デカくなってない?
EからFに進化してない!?
ふっざけんなよ!親友じゃなかったら強引にもぎ取ってるのに!
「いいよね、ひまわりは。可愛くて、おっぱいでデカいし、友達多いし、恋人いるし」
確かに太陽ひまわりはバカだが、すごい良い奴だ。
小さい頃から一緒だったけど、彼女は常に誰かの中心にいる。
幼稚園、小学校、中学校、高校……どこでも人気者。
誰とでも仲良くできる天才。
私みたい 狂人。
それは正気ではない人のことを言う。
普通ではない。イカレている。頭がおかしい。
言い方はそれぞれだ。
しかし……果たして人間とはまともな生き物なのか?
人間という生き物は同じ生き物である牛や豚を育て、増やし、殺し、食べている。
そして犬や猫などをペットにしている。
果たして人間とは狂っていない生き物と言えるのか?
他にも戦争や環境破壊、犯罪などの問題を起こしている。
本当に人間は狂っていないのか?
否、人間は狂った生き物だ。
じゃあ、そんな狂っている生き物である人間の中で、『狂人』と呼ばれる者がどんな存在なのか。
あなたは知っている?
<><><><>
東京の駅で私は路上ライブをしていた。
スピーカーから流れる曲に合わせて、可愛らしい歌とダンスをする私―――音姫歌。
フリフリの衣装を着て、長い黒髪を揺らしながら私は笑顔で歌う。
がんばって歌って、踊る。
だけど聞いてくれる人は友人一人だけ。
あとの人は素通り。
「みんな~!ありがとう~!」
私は大声で感謝の言葉を叫ぶ。
いや、みんなって誰だよ。
観客一人だけじゃん。
言ってて恥ずかしいんだけど。悲しいんですけど。
「今日も良かったよ、親友」
笑顔を浮かべて、パチパチと拍手する女の子の友人。
うん。慰めてくれてありがとう、親友。
だけど君の優しさは私の心に大ダメージを与えているからね?
「あははは、今日もダメだったよ」
自然と口からため息をが出る。
なんでうまくいかないんだろう~。頑張っているのに。
深く落ち込んでいると、茶色の髪をポニーテイルに結んだ可愛らしい女の子は私の肩を叩く。
「まぁまぁ……とりあえずカフェに行こう?」
公衆トイレで私服に着替えた私は親友である太陽ひまわりと共に、女の子の人気のカフェにやってきていた。
注文したアイスコーヒーを一口飲み、私はまたため息を吐く。
生クリームたっぷりのパンケーキを頬張っている親友は「大丈夫?」と心配して問い掛けてくれた。
「大丈夫……ではないかな。なかなかうまくいかなくて泣きそう。アイドルになるにはまだまだかな」
「でもすごいよ、ウタは。小さい頃からアイドルになるために歌とダンスを頑張って、しかも衣装や曲まで自分で作っているし」
「でも十二年やって、結果なし。もう十七歳だし、私。オーディションもたくさん受けたのに全部ダメだった」
「大丈夫。いつかウタならあいどるになれるよ」
そう言ってひまわりは切ったパンケーキを刺したフォークを、私の口に近付ける。
「いや、私……体型維持のためにあまり食べないようにしてるし」
「今日はいいでしょ?はい、あ~ん」
「……あ~ん」
私はパンケーキを一口食べた。
ふわふわの生地と生クリームと蜂蜜の甘さが、私の口の中を幸せにする。
うぅ……路上ライブで傷ついた私の心に染みわたる。
泣きそう。
「私……好きだよ?ウタの歌とダンスは。すっごい頑張っているのが伝わってきて、見ているこっちも頑張らないとと思う」
「ひまわり」
親友の言葉を聞いて、私は頬を緩めた。
ひまわりのおかげで心が温かくなる。
本当……太陽のような奴だよ。
「ねぇ……親友。私に足りないのってなにかな?」
「ふふふ。それならわかるよ」
「なに?」
「まずブバアー!でしょ。あとグガァー!でしょ。あとはプルルン~!でしょ。あとは―――」
「もういい。聞いた私がバカだった」
そうだったよ。私の親友、いい奴なんだけどどうしようもなくバカだった。
なんだよブバアー!グガアー!プルルン~!って。
ブバアー!グガア―!は気合と根性って意味なんだろうけど、プルルン~!ってなに?もしかしておっぱいを大きくしろという意味?
うるせぇよ!どうせ私のおっぱいはAAAカップですよ。
ひまわりみたいなEカップじゃないんだよ!
そんなデカパイじゃないんだよ!
というか前よりひまわりの胸、デカくなってない?
EからFに進化してない!?
ふっざけんなよ!親友じゃなかったら強引にもぎ取ってるのに!
「いいよね、ひまわりは。可愛くて、おっぱいでデカいし、友達多いし、恋人いるし」
確かに太陽ひまわりはバカだが、すごい良い奴だ。
小さい頃から一緒だったけど、彼女は常に誰かの中心にいる。
幼稚園、小学校、中学校、高校……どこでも人気者。
誰とでも仲良くできる天才。
私みたいなコミュニケーションが苦手な奴とも仲良くしてくれる良い奴だ。
そしてそんな彼女は……好きな人と恋人になった。
少し寂しいけど、友人として素直に嬉しく思う。
「そういえば彼氏さんとどう?」
「えぇ~それを聞いちゃう~?」
恥ずかしそうに、だけど嬉しそうに頬に手を当てて首を左右に振るひまわり。
うっぜぇ~……幸せですよオーラが凄すぎて目が潰れる。
聞くんじゃなかったわ。
「ユウくん、すっごい優しくしてくれるんだ~。いつもカッコよくて~、カッコよくて~」
「へ、へぇ~……そう」
「この前もデザート食べ歩きデートしたんだ!楽しかったし、おいしかった!」
「そんなことしてたら太るよ?」
「大丈夫。食べた栄養は全ておっぱいに行くから」
どうしよう。すっごい殺してやりたいと思うんだけど。
親友なのに、めっちゃ殺意が湧くんだけど。
殺していいかな?おっぱい引き千切って、殺していいかな?
今ならおっぱいデカい人を百人ぐらい殺せるよ。
おっぱい狩り殺人鬼アイドルになれる自信がある。
「ウタにも恋人できるよ、いつか。まぁ……おっぱいはデカくならないだろうけど」
「やっかましいよ!アイドルは恋愛禁止なんだよ!あと小さい声でおっぱいデカくならないとか言いやがったな、コイツ!?」
<><><><>
ひまわりと別れ、家に帰った私は部屋で人気動画サイトーーーミーチューブをスマホで見ていた。
今、見ているのはミーチューブに出した私の歌とダンス。
動画の私は頑張って歌って、踊っている。
だけど……才能がまったくないのがわかる。
その証拠に登録者数は五十五人。いいねが四十。
一人でもいれば十分だろうと言う人はいるかもしれないけど、プロのアイドルになるには足りない。足りなさすぎる。
「なんでだよ……クソ」
私は悔しさのあまり、強く唇を噛んだ。
小さい頃からアイドルになるのが夢だった。
根暗で友達が上手くできない私には、アイドルは星の如く眩しい希望だったのだ。
だからそんな希望の光になるために死ぬ気で努力している。
歌やダンスを練習し、曲や衣装を作り、メイクを覚えた。
だけど……十二年間やってわかったのは自分がアイドルとしての才能がない凡人だということ。
運動や食事制限して体型維持して、メイクを本気でやっても少し可愛くなるだけで、めちゃくちゃ可愛くなれない。
歌やダンスを何時間も練習して多少うまくできても、すごく歌やダンスがうまくなれるわけじゃない。
どんなに努力しても報われるわけじゃないという現実に、私はぶつかっていた。
「分かってんのよ……そろそろ潮時だって」
そこそろ就職か大学行くかを決めないといけない。
わかっている。そろそろ自分の人生を見なくちゃいけないことは。
夢なんて諦めて、新しい人生を探さなくちゃいけないことは。
それが賢い選択だと理解している。
だけどさ……、
「そんな賢い頭をしていたら、アイドルなんて目指さない!」
諦められなかった。
諦めきれなかった。
だって……普通の人間である私が唯一がんばってきたものだから。
だから最後までアイドルになるのを諦めない。
絶対に。
「そうと決まればアイドルになるための本を探そう」
スマホで私はアイドルになるための本を探した。
そして良さそうなものを見つける。
しかし、
「高い」
普通に値段が高かった。
いや高いんだよ、いい本は。
なんでこんなにするの?
私は鞄から財布を取り出し、中身を見る。
そして……私は肩を落とす。
「ぜんぜん、足りない。そういえば衣装を作るのに結構使ったんだった」
どうする?
とりあえずそこそこ良さそうなバイトでも探すか?
私はスマホでバイトを探した。
コンビニバイトにスーパーマーケットのバイト、工事のバイト、他には……、
「ん?探偵事務所のバイト?」
偶然、見つけたバイト。それを見て私はスマホを操作する手を止める。
内容は掃除、洗濯、料理などの雑用。
休みもあるし、バイト代もいい。
しかも家とバイト先の距離が近い。
うん、いいかも。
「よし、ここしようかな」
この日、この時が私のターニングポイント。
この時の私は知らなかった。
ここから私の人生が狂い始めることを。
読んでくれてありがとうございます。
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