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孤高の愛の傍らで…。  作者: 礼三


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プロローグ 悲恋の二人

 アルセア王国…。

 高く聳える尾根に囲まれた地形、厳しくも豊かな自然に護られ、他国に攻めいられることなく、歴代の賢王によって栄えてきた小国である。

 アルセア建国当初からホリホック王家へ忠誠を誓ってきたガザニア、グラジオラスの二代公爵家に支えられ繁栄してきた。

 この国には有名な悲恋話が存在する。


 ガザニアとグラジオラスは互いに牽制しあいつつも、共に衰えることはなくアルセア王国に古くから存在する公爵家だ。ガザニア家21代、グラジオラス家18代の当主が各々公爵家を治めていた頃、ガザニア家にはオレリアという娘、グラジオラス家にはシリルという息子がいた。

 歴代当主のなかで父親同士の親交が深く、政権争いもなかった。その子供たちは年齢も近く二人が幼馴染として仲良くなるのは自然の流れだった。

 オレリアは王国随一の美少女として、シリルは王国随一の美丈夫として名を馳せ、いつしか互いを異性として意識するようになっていく。

 二人は人目も憚らず愛を囁きあい将来を誓った。

 しかし、公爵家の結びつきによって貴族派の勢力が大きくなることを恐れたホリホックの国王は王太子への婚約者にオレリアを所望する。

 シリルは愛するオレリアへ身分を捨てて一緒に逃げようと願うも、オレリアはガザニア公爵家を見捨てることが出来ず、ホリホック王家へ忠誠を立てアルセア王国の礎になることを心に決めたのだった。

 シリルはそれでもオレリアのことを忘れられず想い続け、オレリアの騎士となって彼女を生涯護り抜くと誓うのだ。

 だが、シリルはグラジオラス公爵家のたった一人の子供だった。嫡男であるシリルには跡取りが必要で、苦渋の決断でブプレウム伯爵家の娘メラニーを妻に迎える。

 その女、メラニーは二人の純粋な愛に嫉妬し狂い、幾度となく二人の崇高な愛の邪魔をした。



 アルセア王国民の多くが知っている有名な話である。愛しあう二人を邪魔した世間で悪女と評判の女メラニーは私の母だ。

 これは王国の孤高の愛に翻弄された私の母の物語である。

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