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米が高すぎるので弱者男性がどんぐりを食べた話

無限に広がる大宇宙。時は西暦2199年。地球は人口爆発により少ない資源と食糧を奪い合った争いが絶えなかった。争いに終結を打つために、国連は弱者男性たちのスペースコロニー強制移住計画を決行した!もちろん人生において女性と一度も手を繋いだことのない弱者男性たちが、宇宙空間で生きていけるはずなく、コロニー内で弱者男性間における過酷な食糧争いが勃発!


そんな食べることすらままならない弱者男性が、このスペースコロニー「どんぐり船13号」にもひとり…

挿絵(By みてみん)


さて、備蓄のネコじゃらしが底をつきそうなので、どんぐりを集めていきましょう!コロニー暮らしではどんぐりは米は貴重ですからね!弱者男性と、りすが冬になるとどんぐりを貯めこむ習性があることはみんな知っていますよね!どんぐりといえば弱者男性たちの間では冬の食材の代表例ですからね。


ん?今ここで、現役バリバリの弱者男性でない方は、「どんぐりって秋の食材でしょ?」と思ったかもしれません。ではどんぐりがなぜ冬の食材なのか22世紀の弱者男性型ロボットに、おじさん構文で解説してもらいましょう。


ドラ◯もん「ぼく、どら◯もん」

の◯太   「どら◯もん。どんぐりって栗の仲間だから秋の食材なんでしょ?」

ドラ◯もん 「の◯太くんは甘いなぁ。どんぐりと栗は大きく違うんだ!」

の◯太   「な、なんだってー!?」

ドラ◯もん 「どんぐりにはタンニンという防腐剤が大量に含まれていて、生で食べると、蚊より弱い弱者男性たちは死んでしまうんだ!だからあく抜きという工程をしなくてはいけないんだよぉ。そしてこのあく抜きには2ヶ月くらいかかるから、弱者男性たちがどんぐりを食べれるようになる頃には年があげてるんだ!だからどんぐりは冬⛄️の食材なんだね。」

の◯太  「じゃあ、栗のようにそのまま食べれる食材って偉大なんだね!」

ドラ◯もん「まあ22世紀では栗は貴重だから弱者男性は食べれないんだけどね!」


解説終了!ちなみに戦争が終わるとどんぐりが一瞬で食卓から消えた理由が、このあく抜きがめんどくさすぎるからです。あく抜きしなくても食べれる栗はとっても食材として優秀なんですよ!さっさと、どんぐりのある公園を見つけていきましょうね!


1時間経過…


どんぐりが見つかんねぇぇぇぇ!ピエえええお見苦しいところをお見せしました。ついつい見つからなすぎて発狂してしまいました。もっと郊外の方まで遠征してきましょう。


さらに1時間経過!み、見つけました!ここが弱者男性男性たちの約束の地!通称おじさんホイホイです。


そこらじゅうに大量の木が埋まってますね!期待大です!

挿絵(By みてみん)


こ、これは!どんぐりですね。めっちゃ嬉しいです。


キッズの頃はコマにして遊んでましたが、今思えばもったいなかったですね。食べれば良かった…

挿絵(By みてみん)


お、ここにもどんぐり…って割れてるじゃないですか!こういうどんぐり詐欺はやめて欲しいですね。

挿絵(By みてみん)


お、ここにもまんまるどんぐりが!太っていて美味しそうですね。うーん。まだ4個くらいしか集まってませんね。なんだかんだ割れてるやつばっかりで、食べれそうなのはなかなかありません。


今年は米が高いので、ほかの弱者男性が食費を浮かせるためにとって行ったんでしょう。遅すぎたか…


お、どんぐりがいっぱいある宝の山を発見しました。清掃員が集めていた落ち葉とゴミの塊の中に、大量にどんぐりが埋まってますよ!これは盲点ですね。早速いくつか貰っていきましょう。どんぐりも焼却炉に行くよりは弱者男性のお腹に行った方が幸せでしょう。


 とりあえず、割れているやつをポイポイしていきましょう。何個かよく見ると割れてますね。この過酷などんぐりレースにおいて、ファーストステージで早くも数名の脱落者が出てしまいました。割れているやつは中に先住民 の虫がいるので捨てます。

挿絵(By みてみん)


まず小さいやつを検品していきましょう。上から見ると独特のシマシマがありますね。採取した際の帽子の特徴的な形状から見てもおそらくシラカシで確定でしょう。ちなみにシラカシは灰汁が強くて、加工にめっちゃ手間がかかることで有名です…。クソッ!どんぐりガチャ大外れや!


長細いやつの方は鱗のような特徴的な帽子がくっついていたので、コナラの仲間であることは間違い無いですね。肉眼で見るとお尻の部分に若干の凹みが無いことと、前方から見ると若干白いこと、左右対称な形状をしているので、コナラであると思われます。大きさも2cm前後なので、間違いなさそう。ちなみに味はクソまずいらしい…え?


丸いやつの大きさは2cmから3cm。ちょい大きめ。近くに落ちていた帽子の形状から、クヌギ?っぽいようなそうで無いような…。ケツの形状から考えるとクヌギの可能性が有力ですね。ちなみにクヌギはクソまずいことで有名…


どんぐりガチャの結果が出揃いましたね。小さいやつがシラカシ。細長いやつがコナラ。大きいやつがクヌギ。ちなみに全部ハズレです。クソォぉぉぉぉ!


仕方ないので気を取り直して選別していきましょう。まず水に浸します。これで浮いてきたやつは中にムッシーくんがいるか、カビとかでスカスカになっているので、捨てます。

挿絵(By みてみん)


さてこっからアクを抜いていきましょう。まず殻を破ります。使うのはペンチと愛と勇気です。シラカシから割っていきましょう。


オラッツ!喰らえ!

どんぐり「ぎゃああああああ」


い、いけません!どんぐりがどっかへぶっ飛んで行きました!


みなさんもどんぐり割る時は布かなんかに包んでから割りましょう!飛んで行ったどんぐり探すのにめちゃくちゃ時間かかりました。


皮を割って薄皮を剥ぐ、殻を破って薄皮剥ぐ、これを永遠に繰り返すだけですね。ちなみにこの作業めちゃくちゃ時間がかかる(総作業時間3時間)ので、映画でもみながらやるのがおすすめです。


シラカシが剥き終わったので、コナラをむいていきましょう。オラッ!さっさと剥かれろ!や、やべぇ…。コナラは剥くのにめっちゃ時間かかりますね。薄皮がめちゃくちゃ剥がしにくい上に、タンニンがすごすぎて爪が黄色に変色しました。こんなもの本当に食べて大丈夫なんでしょうか…。


最後にクヌギをむいていきましょう。


さーてクヌギちゃん。おじさんにムキムキにされようね。


クヌギちゃん「うん、分かった!」


クヌギちゃんは分かってくれたみたいですぐにむけました。コナラとか一個剥くだけで10分かかったので、クヌギは剥きやすくて助かりますね。

挿絵(By みてみん)


さてこれが完成品です。ちょっとテイスティングをしてみましょう。まずはシラカシから。


ペロッ!あ、けっこう美味し…ギャアアアアアアア!


クソまずいですね!一瞬いけるかと思いましたが、後から石鹸と唐辛子を足して2で割ったような味がしましたよ!やっぱりあく抜きしないとダメそうですね。


ちなみにクヌギとコナラも全く同じ味がしました!予想を裏切らないですね!さてこいつらをちょっと洗ってから水に浸していきます。

挿絵(By みてみん)


こうしてアクを抜いていくんですね。 


3日後 

クソッ!まだまだタンニンがいっぱい出てきますよ。もう仕方ないので重曹を使いましょう。柔らかくなるらしいのであんまり使いたくなかったんですが、キリがないので。


よし、いい具合にアクを吐き出してるな!まだまだアクが出てきます。コーヒーのように見えるものは全てタンニンです。


さらに1週間後…


いったいいつまでやれば…。


クソガぁぁぁぁ!やってられるかこんなもん!


いつまでかかるんじゃ!あの技を使うしかないようですね。実はどんぐりには「高速あく抜き戦法」という裏技があって、これをやるだけで10日でアクが丸々抜けてしまうという優れた技があるんですね。こらそこ!10日のどこが高速なんやとか言わない!


まあ1週間以上あく抜きはしてるので、もうある程度は抜けているでしょうからあと1週間ぐらいやるだけで十分でしょう。それにしてもどんぐりえぐいレベルで変色していますね…。


まずやり方は単純でどんぐりを粉々にします。

挿絵(By みてみん)


どんぐりの分際で大人を舐めやがって!弱者男性とリスはお前らどんぐりが主食なんだからな!覚悟しておけ!


どんぐりメンチをきったところで粉々にしていきます。どんぐりにメンチを切るとどんぐりがひよってアクが柔らかくなるのは有名ですよね。


すり鉢を持ってきましょう。あれ洗うの大変なんだよな…意外ですが一番小さいシラカシが最も硬いですね!成人男性が体重かけてギリギリ潰せる感じなので、多分子供では無理かと…


30分後!


なんとか終わりました。腕がもうバンバンです。そしてこいつに重曹をぶち込む!あとは徹底的に煮込むだけ!ちなみに今回普通にステンレスの鍋を使っていますが、タンニンで変色する可能性大なので、やるなら腐食に強いホーローなどにしましょう。

挿絵(By みてみん)


しばらくほっときましたが、えぐい量のアクが出てきます。生で見るとまるでコーヒー見ているような色してますね…このあと何回か水を変えながら6日ほど経ちました。


ネコじゃらしの方が加工がはるかに楽ですね…。ネコじゃらしもっと溜め込んでおけば良かった…後悔してもしょうがないですね。


水の色が変わらなくなったので、どうやらアクが抜けたようです。こいつを天日干し…と言いたいところですが、あいにく天気が良くないのでこたつにぶち込んでおきます。おいどんが強制収容所から戻る頃には我々おじの冬のお肌のようにガビガビに乾燥していることでしょう!


強制労働後…


どんぐりは乾燥済みです。


それではどんぐりクッキーを作っていきましょう!

挿絵(By みてみん)

どんぐり粉1と小麦粉を2の割合で用意。ごま油をどんぐり粉の3分の1の量用意します。あと砂糖と水です。本当はここにレーズンを入れるらしいんですが、そんなものはないので備蓄のネコじゃらしで代用します。

挿絵(By みてみん)

まずはネコじゃらしを脱穀していきます。今回は焙煎しないので、かなり念入りにふさふさをとっていきます。それにしてもネコじゃらしを脱穀する時にするこの独特の異臭は何回やっても慣れないですね。

挿絵(By みてみん)

そしてこれらを混ぜ合わせます。そのあと20分ほど加熱していきます。

挿絵(By みてみん)


これで完成です。小さいお好み焼きくらいの大きさはありますね。

それでは弱者男性の夕食を始めていきましょう。お金がなくて、水しか飲めない弱者男性もいる中、どんぐりやネコじゃらしが食べれるだけ幸せですね。

いただきまーす!


こ、これは!


プラスチック食ってるみたいな味がしますね!


か、硬ぇ…いったい自分は何を食べているんでしょうか?少なくともクッキーという感じは全くしません。鬼のように硬いカントリーマアムと食べているという感じでしょうか?少なくとも、せんべいの比ではないすさまじい硬さがありますね。


カントリーマアム味のプラスチックを食べているとしか表現しようのない何かがありますね…。というかカントリーマアムの中にプラスチック(どんぐり)が混ざっていると言った方が正解かもしれません。これは果たして人の食べ物なんでしょうか…。やっぱりどんぐりと栗はたいぶ別物ですね…。


ネコじゃらしの草っぽい風味がしますが、焙煎した方がゴマっぽくなるので、焙煎してから混ぜた方が美味しかったかも。


なんとか完食しました。顎がかなり痛いですね。スペースコロニーに住んでる弱者男性たちはこうして頑張ってどんぐりを集めて食べているんですよ!皆さんも弱者男性に同情してくださいね!


総加工時間320時間 出来たもの クッキー1枚…





作中に出てくる料理は全て原作担当の人が実際に制作して食べれることを検証済みですので、安心して再現してお召し上がりください。

SF考証の参考文献 松本零士「宇宙戦艦ヤマト」「おいどんの地球」三島由紀夫「美しい星」アーサー・C・クラーク「幼年期の終わり」森昭彦「食べられる草ハンドブック」岡田恭子「食べる野草図鑑」


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