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恩人、その名は
男の人は不思議そうな顔をして僕の顔を覗き込んだ。
「右と左で目が違う...オッドアイの子、か。」
「おっどあい?」
「いいや、気にしなくていいよ。」
目を泳がせながら男の人は言った。
「君の名前は?」
名前は教えちゃダメ、ってお母さんが言ってた。
何でかはわかんないけど。
「教えちゃダメってお母さんが言ってたから教えない。」
男の人は少し困ったような顔をしたけど、すぐに笑顔になった。
「そっか。じゃあ僕は名乗っておくね。僕の名前はラト。」
ラト、と名乗った人はお母さんの所に歩いていった。
「君、君のお母さんのお墓を作ろうとおもうんだけど...嫌だったらやらなくていいよ。」
お母さんの、お墓。
お母さんは死んじゃってるんだ。
何回考えても信じきれない。
でも、ここで泣いたらいけない気がして。
「僕もやる。お母さんのお墓つくりたい。」