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出会い、別れ
お母さんからたくさんの血が溢れ、流れていった。
「次はお前だ。安心しな?すぐにママのところに送ってやる。」
「...」
頭の中は真っ白で、何も考えられなくなっていた。
「諦めたら、ダメだよ。」
知らない人の声だった。
「な、っ!何なんだ貴様!」
「悪いけど、僕は無抵抗な人が殺されるのは見たくないからね。」
白刃が空を切った。
肉の切れる音。
聞こえてくる呻き声。
血飛沫をあげ、兵士のような人は倒れてしまった。
「やれやれ...」
僕ははっとした。
「お母さん!!ねぇ、お母さん?!?」
「残念だけど、君のお母さんはもう...」
何でこの人はこんなことを言うんだろう。
お母さんはきっと生きてる。
生きてるはず。
さっきの若い人は僕の肩に手をおいた。
「お母さんは君を守ってくれたんだ。泣いちゃダメ。泣きたくなるくらい辛いかもしれないけれど、君を守るため、君に生きていてほしいから、庇ってくれたんだ。」
若い人の顔を見る。
そこには、額と右目を包帯で覆った男の人がいた。
それは、綺麗な水色の目のなかに、小さな悲しみの色を持った優しそうな人だった。