11話
「悠人、ご飯出来たわよー」
家に響き渡る母さんの声から俺の朝が始まる。
寝ぼけながら時計を確認すると現在7時05分。登校する時間としては随分と余裕がある。
夢見心地で寝ていた俺は、下からの香ばしい匂いで脳が目覚める。
最近はテスト週間ということもあり、いつもより勉強している俺としては、まだ寝不足だ。
そんなだらけきった体を無理やり起こし、朝食を食べに俺はベットから飛び起きる。
階段を下りて、リビングに向かうとキッチンにいる母さんと目が合う。
「おはよ」
「おはよー」
そんな挨拶を交わしながら、俺はテレビをつけて椅子に座る。
たまたま朝占いが行われてたこともあり、悠人はそれを見ながら朝食のパンを噛る。
基本的に占いに興味のない悠人としては、その日の運勢が良かったら信じ、悪かったら信じないようにしている。
[今日一番運勢のいい人は、牡羊座のあなた!]
「あ、俺だ」
[今日、朝下駄箱に手紙が入ってるかも!]
いや、もう彼女いるから貰ってもな。困るだけだな。
それに、そんな都合良いことあるわけないだろ。
所詮は占いだからな、しょうがない。
外れることの方が多いだろう。
まぁ、あるわけない。
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あったな。
下駄箱に一通の手紙が入ってたな。
何度見返してもあるな。あれおかしくね。
そんなドンピシャに当たることある?
まぁ、ついに俺にもモテ期が来たってことか。
とりあえず、他のやつにバレないように鞄の中に入れるか。
「よお」
「っ!びっくりさせるなよ」
俺が鞄の中に手紙を入れると、良真が後ろから声をかけてきた。
「てか、そんな驚くことか?」
「いや、べ、別に驚いてねーし」
「さっき自分でびっくりさせるなよ!って言ってたやん」
「いいんだよ、気にするな」
こいつにバレたら、美琴にまで知れ渡る可能性があるからな。
バレないように隠密にこの手紙を読まなければ。
「悪いけど、ちょっとトイレ行くわ」
「あ、俺も行くわ」
「え?」
「え?」
「いや、俺大の方だから」
「なら、いいや」
よしこれで完璧だ。これで後はトイレの個室で手紙を読むだけだ。
「じゃあ、その鞄邪魔だろうから先教室に持ってくよ」
え?
良真がそう言うと、俺の鞄に手を差しのべて来た。
それは、まずい。どうにかしなければ。
「え?いや、大丈夫だよ」
「いや、今さら遠慮するなって」
「いや、俺最近鞄無かったらトイレ出来ない体質なんだよね」
「え、なにその体質、気色悪っ」
「じゃあ、先に教室行くぞ」
良真は、そう言うと俺に背を向けて教室へと向かっていった。
よし勝った。親友に対してなにか大事なものを失った気がするが邪魔者は消え失せた。
そんなこんなで、良真を先に教室に向かわせた俺はトイレの個室へと向かった。
個室に入った悠人は鞄から手紙を取り出した。
西川悠人さん、放課後体育館裏に来てください。
手紙にはその一言だけ書いてあり、誰から宛なのかは書いていなかった。
その手紙を呼んだ悠人は声には出さなかったが、内心嬉しすぎて個室でガッツポーズをしていた。
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