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94話

久しぶりの更新になります。

お待たせしました(_ _)

 その後、ラウルは自邸に帰って行った。


 俺は見送りながら、考えた。どうしたら約束したようにリアを守れるのだろうかと。いつかは、彼女を手放すとしてもだ。真冬の雪が降り積もる中でじっと立ち尽くしていた。


 あれから、1ヶ月が過ぎた。3月になり、とうとう俺も王立学園に通うことが決まる。その準備で俺は忙しくしていた。制服を自身で着たりはできるが。ノート類、筆記用具を揃えるためにリアと一緒に城下町に繰り出したりした。あれは楽しかったな。

 そんなことを思い出しながら、俺はウェルズ先生の課題に取り組んだ。


 また、久しぶりにウィリアムス師の剣術の鍛錬を受けていた。現在はオズワルドやジュリアスとの3人でしている。まあ、ジュリアスは第一隊中隊長にまで出世していた。なので、隊の訓練の延長で付き合ってくれている。


「殿下、今日はちょっと寒いですね」


「そうだな」


「オズも体調が悪くなったらすぐに言えよ」


「……わかったよ、兄さん」


「お前はあまり、そういうことを言わないからな」


 ジュリアスが苦笑いしながら言った。オズワルドは黒い髪に紫色の瞳が神秘的な美少年だが。真面目で寡黙ではあった。


「兄さんは過保護なんだよな」


「そんなことはないだろう、お前はまだ小さいんだし」


「小さいって、俺だってもう今年で9歳なんだぞ!」


「まだまだ子供だ、俺にしたらな」


「むう、すぐそういうことを言うんだから。チビ扱いはよしてくれ」


 オズワルドは本当にムクレてしまう。ジュリアスは困ったように笑いながら、彼の頭を撫でる。


「怒るなって、後で母上が作ったナッツクッキーをやるからさ」


「……わかった、約束だよ」


「ああ、約束だな」


 ジュリアスが笑うと、やっとオズワルドは機嫌を良くしたらしい。撫でていた手を振り切って俺に呼びかける。


「殿下、剣術の鍛錬が終わったら。一緒にクッキーを食べましょうよ!」


「ああ、食べような!」


「はい!」


 2人で頷き合う。木刀を取りに行き、素振りを始めた。ウィリアムス師はそれを見ながら静かに指摘をする。


「オズ、お前は昔から右腕に頼り過ぎるきらいがあるな。もう少し、左腕の腕力も鍛えなさい」


「はい、父上」


「殿下、あなたは素早さが売りではありますが。これからは重さで押すことを考えてください」


「わかりました」


 オズワルドや俺が頷くと、師は今度は打ち合わせをやるように言った。俺はジュリアスが渡してくれたタオルで汗を拭いてから、木刀を持ち直す。少し2人から離れた場所に行き、同じようにしたオズワルドと向き合った。木刀を構える。


「……始め!」


「……はあっ!!」


「わあっ!」


 先に踏み出したのはオズワルドだった。次に遅れて俺が木刀を突き出す。切っ先は上体を捻ることで避けた。が、俺の左頬を掠める。俺の切っ先も彼の右側のこめかみを掠った。すぐにオズワルドは体勢を整えて、木刀を左に薙ぎ払う。俺は後ろに飛び退って避ける。


「……くぅっ、ちょこまかと!」


「お前が素早すぎるんだよ!」


「うるさいですよ!」


 言い合いながらも俺は次の一手を考える。オズワルドの一瞬の隙を見逃さない。が、やはり簡単には見せてはくれなかった。あのウィリアムス師の息子ではあるな。けど、俺だって負けてはいられないぞ!

 やる気を出して跳躍してオズワルドに木刀を袈裟懸けに薙ぎ払った。すると、咄嗟に彼は木刀を横向きに構えることで躱した。カアンと高らかに音が辺りに響き渡る。くっ、こいつは強過ぎるだろ。俺は刃が立たないと思いながらも後ろに再び飛び退った。


(……どうしたらいいんだ、オズワルドには無闇矢鱈と突きを出したって勝ち目はない。なら、背後を狙うか)


 俺は走ってオズワルドに前から突きを繰り出すと見せかけて背後に回り込んだ。首の辺りに木刀を突きつける。


「……そこまで!!」


 ウィリアムス師が終わりの一言を大きな声で告げた。オズワルドが悔しげな顔で振り向く。


「あー、一本を取られましたね」


「ふう、お前もかなり強かったよ」


「殿下の戦略勝ちです」


 オズワルドはへニョリと眉を下げながら言った。けれど、次にはにっこりと笑った。


「まっ、いっか。殿下、中に入って休憩しましょうか」


「ああ、そうしようぜ」


「……ええ、オズワルド、殿下。もう、鍛錬はこれくらいにしましょう」


「はい、わかりました。父上」


「ええ、そうですね。師匠」


 ウィリアムス師が呼びかけてきたのでオズワルドに俺の順で答えた。ジュリアスが先に入っていく。どうやら、リアナを呼びに行ったらしい。俺はオズワルドと2人で中に入った。


 その後、温かいココアとナッツクッキーをリアナが用意してくれた。それを嗜みながら、オズワルドと2人で互いの家族や婚約者のことについて話す。


「へえ、殿下の婚約者はやはりシェリア様でしたか」


「ああ、フィーラ公爵家の令嬢だ」


「俺はあのエルーン伯爵家の令嬢でスザンナ嬢です」


 まずは、互いの婚約者の名前などを言った。次に年齢や好きな物に話は移っていく。取り留めもなく、2人で婚約者自慢をし合うのだった。

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