表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

96/118

92話

久しぶりの更新になります。

 仙人爺さんの魔法のレッスンは夕方に終わった。


 俺もリアもヘトヘトだ。爺さんは、ホクホク顔で魔導書や杖を受け取る。


「お疲れ様でしたな、もうここまでにしましょう」


「はい」


「殿下、またお時間があったら。いらしてくだされ」


 俺は頷いた。リアもだ。爺さんにまた、一礼をする。そうしてから2人で神殿を後にした。


 自室に戻ると、俺はウェルズ先生の授業を受けるための準備をする。リアは王妃教育の時間だと言って、部屋を去った。それを見送りながら教科書やノートなどを取り出す。


(よし、必要な物はこれくらいかな)


 一通り、チェックをして授業用の部屋に行く。もう、ウェルズ先生の教えを乞うようになってから6年が過ぎようとしている。俺も再来年の春頃には、王立学園に入学になるが。大丈夫かなと今から、心配だ。リアの事もあるし。ふうと息をついた。


 その後、ウェルズ先生がやってきた。俺は礼をして挨拶をする。


「こんにちは、先生」


「ええ、こんにちは。殿下」


 先生はにっこりと笑って、返事をしてくれた。


「午前中は神殿に行かれていたと聞きました。魔術の講義を受けておられたのですか?」


「はい、神官長に教わっていました」


「そうですか、神官長様ならそこの所は手抜かりはないでしょう」


 そう言いながら、先生は教科書をカバンから出す。授業の開始だ。俺は教科書などを机の上に置く。椅子を引いて座る。


「それでは、始めましょう」


「はい」


 ウェルズ先生は、教科書を開いた。俺も教科書やノートを開き、筆箱から羽ペンやらを取り出したのだった。


 ウェルズ先生は歴史的な話を授業が終了してから、してくれていた。


「……今日は、何の話をしましょうか。そうだな、フォルド国の先代の国王陛下についての話にしますね」


「はい」


「確か、ラウル様は先代の陛下のご子息である事は殿下もご存知ですよね」


「存じています」


「ラウル様の母君であるスズコ様は、2番目の王妃でした。1番目の王妃は病により、当代の陛下を残して儚くなられました。ラウル様をお生みになったスズコ様は当然ながら、他のお妃方や王子達に疎まれます。命まで狙われるようになるのは、時間の問題でした」


 ウェルズ先生はそう言って、メイドが淹れた紅茶を一口飲んだ。静寂が部屋に落ちる。


「そして、先代の陛下は決断をなさいます。スズコ様とラウル様を秘かに、イルミナ伯爵家に逃げさせたのです。つまりは王宮から出させたのですが。陛下が退位なさり、当代の

 アルフレッド陛下が即位なさいました。スズコ様やラウル様は、行方知れずという扱いのままでいらっしゃいましたね」


「だとしたら、スズコ様がラウル叔父上と王宮にいらしていたのは?」


「……陛下がイルミナ伯に内密に、打診をなさったからです。『スズコ様とラウル様の命は助ける、代わりに王籍を剥奪する』と。つまりはスズコ様を表向きは伯爵夫人として扱うように、そう命じたのですよ」


 ウェルズ先生はそう話すと、また紅茶を飲む。俺は意味を考えた。スズコ様が王籍を剥奪されていたとはな。


「あの、それは何年前の話か訊いても良いですか?」


「そうですね、今からだと。8年程前になるでしょうか」


 8年前と言ったら、まだ俺が1歳くらいか。前世の記憶を取り戻す2年前だな。まあ、赤ん坊といっても差し支えないが。俺はふうむと唸りながら紅茶を飲んだ。冷めてしまっているためか、あまり美味しくはなかったが。ぐいと飲み込んだ。ほうと息をついたのだった。


 ウェルズ先生は、歴史の話を終えると帰っていく。それを見送ってから、リアナに便箋や羽根ペンなどを用意してほしいと言った。ラウルに手紙を出すためだ。


「殿下、ラウル様に手紙を出すとは珍しいですね」


「たまにはいいだろうと思ってな」


「ラウル様も王立学園に入学なさってから、もう4年が経ちますね。殿下からお手紙が届いたら、驚きますよ」


 俺は驚いて、声が出ない。ラウルが学園に入学して4年だって?!道理で王宮で姿を見ないわけだ。俺としたことがうっかりしていたぜ。自分のことしか考えていなかったな。


「そうだったのか、道理でな。最近、姿を見かけないと思っていたんだ」


「それはそうでしょうね」


 リアナは笑いながらも、テキパキと便箋などを準備する。インク壺や羽根ペンも新しいのを出してきてくれた。正直、助かった。そう思いながらも窓から空を眺める。既に夕方から夜になろうという時刻だ。部屋には、照明用の魔導具が辺りを照らしている。


「殿下、できましたよ」


「あんがとよ」


「では、一旦失礼しますね」


 俺が頷くと、リアナは寝室を出ていく。俺は椅子に座ると便箋を開いて、羽根ペンを手に取る。インク壺は蓋が開けてあった。リアナは流石に気が利いている。

 にんまりとしながらも羽根ペンの先端をインク壺に浸す。ラウルへの手紙を認めた(したた)


<ラウル叔父上へ


 お元気でしょうか?


 俺は元気にしています。


 ちょっと、今日に叔父上のことをウェルズ先生に聞いてな。


 それで、気になったことがあります。


 詳しくも訊きたいので、一度王宮へ来て頂けないでしょうか?


 それでは、さようなら。


 エリック・フォルド>


 手短に認めると、インクを乾かす。そうしてから、折り畳んで封筒に入れた。封蝋を施す。親父から託された指輪に彫り込まれた印を蝋になつ印した。それらを済ませたら、リアナを呼んでラウルに届けてくれるように頼んだのだった。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ